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ズッ友 第一話

【 あらすじ 】

  海水浴場から女学生の水死体が発見された。その女学生の葬儀中に彼女の幽霊を目撃してしまった眼福寺の跡取り息子、鹿島竜晴。ただならぬものを感じた竜晴は、眼福寺に勤めている僧侶の真島と真相に迫っていく。

※この小説は、創作大賞2023「ミステリー小説部門」応募作品です。

第一話

 またかよ。また、見たくないモノが見えてしまった。一度、目を瞑る。肺に空気を取り込み、嗅ぎ慣れた焼香に安堵する。そして、膨らんだ肺からゆっくりと静かに空気を吐き出す。今度は、親父が唱えるお経に耳を傾けた。大丈夫だ。もう、いない筈だと自分に言い聞かせる。俺は、ゆっくりと瞼を開けた。
 正座した参列者達の啜り泣く声。順番に焼香をあげている。何らいつもと変わらない葬儀だ。見間違いだったと思うと、張り詰めていた緊張感から解放されて、どっと疲れが押し寄せてきた。

 ガタッ

 はっとして、俺は棺桶に目をやった。そこには、棺桶から今まさに這い出ようとする女の姿があった。這い出た女は参列者の顔を覗き込むようにして、一人一人順番に見ている。俺は気分が悪くなり、席を外そうと、そっと立ち上がる。最後に、気になってもう一度女の方を振り返ったが、どうやらこれが良くなかったらしい。振り返ったと同時に女も不意に顔を上げ、此方に目を向けた。
 視線が合った。口元が何やら動いている。何かを呟いているようだったが、ここからでは聞き取れない程の小さな声だ。そして、だらんと垂れ下がった手からは、異様な程の血が滴り落ちている。固まる身体を無理やり動かして、急いで室内から出た。廊下を曲がったら玄関だった筈。一刻も早く外に出て、身体に纏わり付く嫌な念みたいなものを払いたかった。その事だけを考えていたからか、人の気配に気付けなかったようだ。   
 ドンッと少女が尻餅をつく。少女もどうやら前を見ていなかったらしい。ハンカチで涙を拭っている。
「悪い。大丈夫か?」
 その少女は、島波高校の制服を着ていた。俺がどんなに勉強しても入れないであろう高偏差値の高校だ。
「ご、ごめんなさい。大丈夫です……」
そう言うと、彼女はスッと立ち上がって、慌てて式場へと戻っていった。その時、何かが落ちてコロコロと転がり、俺の足元で止まった。
 ぬいぐるみキーホルダー?自分の目の位置まで持ち上げてまじまじと見る。葬式が終わってから渡せばいいか。
「それにしても…ブサイクなキャラだな」
 キーホルダーを袖にしまい、俺は急いで外に出た。


第二話以降

第二話

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第三話

https://note.com/preview/n92d49204d0d2?prev_access_key=a944bcb6689202eee87c094b1f062e00

第四話

https://note.com/preview/n5e98d1ebc947?prev_access_key=72fbdbc510d73ccd8311c1e0e53ccec0

第五話

https://note.com/preview/nd245cdc0276d?prev_access_key=45333d5f5454f1a07fa1c97bd3dc0d1b

第六話

https://note.com/preview/naac8002f5af1?prev_access_key=380d5bfdba03467934ea8efaed3a5f47

第七話

https://note.com/preview/n95ca01a4132d?prev_access_key=2952cbbd266b3aa846a35d391a622e11

第八話

https://note.com/preview/n22ca3229379c?prev_access_key=4677c3731ff0faa56b64c081375f78dc

第九話

https://note.com/preview/n8b87f2209633?prev_access_key=af56417c96af839976d2cd1dd71c18e9

第十話

https://note.com/preview/nb88d4c2e0719?prev_access_key=d94e3e5736c903acc4815a0f14116dae

第十一話

https://note.com/preview/n4c6a49b87ba6?prev_access_key=bcfb5f41a9f7a5eb1aee0ebb20ddcbc4


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