#読書記録「死刑にいたる病」

自分のこの考え方は誰の影響を受けているのか。


あらすじ

  • 連続殺人犯から手紙が届いた大学生・雅也。

  • 立件されている殺人事件のうち、最後のひとつは冤罪であるため、事件を再調査してほしいと依頼される。

  • 雅也は中学生時代に自分のことを理解してくれた榛村のために、事件の再調査に乗り出す。


感想

現在、実写映画化している原作小説です。
映画を観に行こうとしていましたが、予告が怖すぎたため原作小説を読んでから考えることにしました。
結論:観には行けなさそう。
怖かった。あれを実写化されたら夢に出てくるわ。
逆にどんなふうに実写化しているのか気になる。

基本的にはするする読むことができる、読みやすいミステリーです。
読みやすいのはあくまで文章を指しており、内容はなかなかハードでした。
文章が読みやすい分、内容を想像しながらついつい読み進めてしまいます。

物語にサイコパスな猟奇的連続殺人犯の犯人像が描かれているため、犯罪心理学や世界的なサイコキラーについての描写も豊かです。勉強になります。
サイコパスには遺伝型と環境型が影響していて~、というところには特に納得しました。
上手いこと社会に迎合されるタイプのサイコパス(遺伝型のみが影響している)であれば、仕事が出来るタイプの人間として、成功と富が得られるよな、と思います。
ここに劣悪な環境が加わるとこの小説のようになるということ……。

また、主人公・雅也に手紙を送る連続殺人犯・榛村大和の前科についての表現が、思わずしかめてしまうような描写で、怖かったです。
自分がその被害を受けていなくても、知り合いが、もし家族がそんな被害を受けてたら立ち直れないよ!となるような描写がすらすら書かれていました。
と思ったら、作者はホラー作品でデビューしていたんですね。
そりゃ怖いわ。

最近、KANA-BOONの「シルエット」を聞きなおした。
大人になって、改めて好きな歌詞がある。
「覚えてないこともたくさんあっただろう 誰も彼もシルエット」のとこ。
青春時代って自覚している以上に多大な影響を受けるんだろうな。
この歌詞は昔を懐かしむような良いイメージで受け取っている。
確かにあった出来事を名前だけしか覚えていないけど、そこには自分とかかわってくれた誰かが居たんだよな、名前も顔も表情も覚えていないけど、もう居た事しか思い出せないけど、というようなイメージ。
この小説を読むと、出来事の名前すら、そもそも出来事すら覚えていないけど、青春時代に心の奥深くに潜り込んで、大人になっていく過程で芽吹く悪魔の種を仕込まれることもあるんだろうな、と思う。
本人は覚えていないけど、本人を構成するための部品をひとつ不良品にしておく。
そんな連続殺人犯が登場する小説でした。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?