読書記録「先祖探偵」

「元彼の遺言状」や「競争の番人」等で有名な新川帆立さんの著書「先祖探偵」を読了。
今までの著者の作品も読んでいますが、エンタメミステリ小説の枠から一歩飛び出て、ハードボイルドな感じの一冊でした。

依頼者の先祖を調べることを専門とする探偵・邑楽風子の物語。
ものすごく狭いジャンルの探偵である。

それぞれの依頼を解決しながら、孤児だった主人公・邑楽風子のルーツを探っていく。

依頼のジャンルは狭いけど行動範囲は広い。
先祖を追うのでかなりあちこちへ出張することとなる。

ひとくちに先祖探しといっても目的は様々で、
自分のルーツ探しをしたい人や先祖の呪いが出たため原因を探りたい人などなど。
先祖探しの結果もとい先祖探し本当の目的など物語がバラエティに富んでいて、新章が始まるたび、次はこう展開するのか~とわくわくした。

また、綿密な取材や参考文献から成り立っているのだろう物語中の知識量が豊か。
折った半紙を咥えて湿らせて占う方法があるなんて。

現地へ行って取材したのか、食事の描写がとても細やかだったことが印象に残った。
食事ひとつとっても、生産した人・料理した人・販売した人……いろんな人の手が入っていて人はひとりじゃないんだよという伏線なのかもしれない。
どの食事もとてもおいしそうに書かれていて、とても魅力的だった。

一人で生きている・生きていくつもりでも、ひとは一人で生きていけない。
本当に、一人だったら生まれてきていない。
先祖がいるから、自分まで命がつながっている。
それが伝わり、じんわりと暖かくなる小説だった。

新川帆立さんのことを知ったのは雑誌のインタビュー記事。何年か前の装苑かメイビーだったかな?
無人島に一つだけモノを持っていくとしたら?という質問に「夫」と答えていたのが印象的でした。

小説を読むより先に、著者に興味をひかれていました。
プロ雀士や弁護士などいろんな顔を持っており、その上で小説家という道を選んだ新川帆立さんのインタビュー記事はとても読み応えがあり、ネット等でお名前を見かけるとついつい読んじゃっている。
本人のインタビュー記事も、挑戦的な小説も、読むと私も頑張ろうと自然とやる気になる。

そして、最新作がSF法律小説だそう。
また新たなジャンルに挑戦している。
そちらも読むのが今から楽しみです。

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