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小説

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あたしは幽霊[後編]創作大賞2023応募作品

○記憶 真面目だったので月に遊べる金額を決めていた。 はずだったのに、毎月の伝票の桁が増えていくことに気づかないふりをしていた。 ハルトのところに通い始めて一年が経とうとしていた。毎週金曜のちょっとした楽しみのつもりだったのに生活が締め付けられ始めていた。 ボーナスは自分のために使わずに彼のオリジナルシャンパン代となっていた。もっと彼と話すためにはお金が必要で、バーのバイトも始めていた。副業を始めたことで最初より余裕ができ、会うたびに少しずつ伝票の金額が上がっていった。 キ

あたしは幽霊[前編]創作大賞2023応募作品

『今朝未明、身元不明の遺体が見つかりました。身元が分かっておらず特定を急いでいます。着用していた衣服を公開し、情報提供を呼びかけています』 ○現在 目を覚ます。カーテンの隙間から細い光が差し込んでいた。 身体を起こそうとしても起き上がることが出来なかった。全身が筋肉痛のようだ。ついでに頭が響くように痛い。無理に身体を動かそうとすると視界が歪んだ。 窓を見遣る。外は暗いようだった。 なぜ、あたしは、ここにいるのか。 差し込む僅かな月光を頼りに、観察する。目の前には低いテーブ