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ケース面接Boot Camp DAY7 エアライン売上向上施策


国内エアラインの売上向上施策を検討せよ

前提条件を確認する

クライアントは国内大手航空会社。
主要路線である羽田-伊丹間の稼働率が停滞している状況の中で、新幹線との競争激化やリニアの開業を控えており、当該路線の長期的な展望は見通しが悪い。国内人口減少という中長期的なトレンドの中で、競争優位を確立し、当該路線における売上向上を図るべく、コンサルティングファームに依頼を実施した。

1日の当該路線の売上推定

羽田-伊丹間に限定して、ある1日の旅客運賃による売上を推定します。

売上の構造化

1日の旅客運賃収入を構造化すると図のようになります。

+1日の乗客数

++1日あたり輸送能力

+++1日あたり運行本数

++++運航時間
⇒運航時間は羽田-伊丹間の路線が稼働している時間として、6時~22時の16時間としています。

++++離発着本数/1h
⇒羽田空港/伊丹空港どちらかに視点を置いて、離発着の本数を数えることとします。利用者数の多い時間帯は4×2=8本/hであり、それ以外の閑散時間帯は2×2=4本/hとします。それぞれ比率は簡易的に50%としたとき、加重平均により、6本/h(1日平均)と推定します。

+++1便あたりの乗客定員
⇒国内線の中小型のジェット機を想定しており、定員は200人程度とします。300人程度の旅客機もあれば、150人程度の機体もあるかと思い、200人程度になります。

++1日あたりの席稼働率
⇒休日と平日でまず利用の総数が異なるだろうと想定できます。また、朝/夜は通常混雑しており予約サイト上でも早めに埋まってしまう人気時間帯だと思われる一方、昼間や夕方の移動はフライト先の1日のスケジュールを考えても稼働率はそこまで高くならないだろうと考えます。
特に平日の昼帯の稼働率について一番課題があるのではないかと思われ、50%程度と想定しています。
朝/夕帯:昼帯=50:50、休日:平日=2:8で加重平均します。

+乗客あたり運賃単価
⇒プレミア価格帯とスタンダード価格帯で大きく2つに分けています。詳細のオプションだったり、もっと細かいシートの種類があるかもしれませんが、全て一律での価格設定とは想定していないことを示すだけで十分かと思われます。5万円と2万円で設定しています。

計算については、数字を丸めてざっくりとスピード重視で行います。


フェルミ推定

結果として、1.8億円(約2億円)と計算しました。

リアリティを確認する

1日の売上を2億円とすると、年間300日で600億円の売上となります。
この航空会社の売上比率を国際線:国内線=7:3として、国内線のうち羽田-伊丹路線の収益金額の割合を30%とすると、国内線の売上全体は2000億円、国際線の売上は5000億円弱、全体の売上は約7000億円となります。
エアラインの規模としては昨今の需要回復を考慮すると若干少ないくらいかと思いますが、そこまで大きな乖離はなさそう、と判断します。

売上向上のバリュードライバーを特定する


+1日あたりの輸送能力
運行本数を増やす場合には、空港との調整も必要ですし、使用料も比例して増加してしまうため、不可能ではないですが、収益性の判断については綿密なシミュレーションが要求されると考えられます。

1便あたりの乗客定員を増やす場合は、より大型な機体をリースしてくる必要があり、非常に高コストであると思います。
ドル箱路線で飛ばせば飛ばすだけ収入になるなら話は別ですが、競争が激しい環境下で莫大な投資を実行することは現実的ではなさそうです。

+1日あたりの席稼働率
座席の稼働率は平日の昼帯の稼働率に大きく課題がありそうです。
ここの稼働率を80%まで30%向上させることができれば、全体で7.5%の稼働率向上が期待できるので、売上へのインパクトも年間ベースで考えれば大きいと思います。
また追加的な投資がそこまで必要なさそうということも想定できます。

+乗客あたりの運賃単価
運賃単価については、付加価値の向上とセットで検討するべきであり、単純な値上げ施策は競争激化の渦中にある中ではNGです。
特に東京-大阪は新幹線のぞみという強力なライバルが14000円程度からサービス提供しているため、値上げには慎重であるべきです。
一方で、稼働していないのであれば、値下げしてでも稼働させるべき、というロジックはありです。(箱モノは稼働率が一番重要であるため)

バリュードライバーの課題を検討する

1日あたりの席稼働率が向上しない原因は、平日の昼帯の稼働率が低いことがまず挙げられます。ではなぜ稼働率は低いのか、ということを主なユーザー目線から考えていきます。

平日の昼間(具体的にイメージすると火曜日の13時羽田発伊丹行き等)に大都市間を移動するメインの客層はやはりビジネスマンであると思われます。
この「出張機会のある忙しいビジネスマン」というサイコグラフィックな特性をベースにして、なぜ飛行機を使わないのかを検討していきます。また、なぜ飛行機を使わないのか、以外にもなぜ自社を使わないのかという視点も重要になりますが、エアライン各社のサービスは均質化していて、マイルや時間都合によって左右されるため、差別化によって直接競合に勝つという方向性はいったん劣後させます。

検討の方向性


なぜビジネスマンは飛行機を使わない(新幹線を使う)のか?

飛行機を使わない理由


加えて、飛行機の強みは何か?についても考えておきます。

飛行機の強み


売上向上施策を検討する

前提として、いくらビジネス需要を取り込むといっても、朝夜⇒昼にシフトさせていくという方向性は現実的に難しいため、少ない昼間需要の中から如何にして新幹線から需要を奪っていくか、という視点で検討します。

①プライシング戦略によるスポット価格の提供
ダイナミックプライシングを導入し、平日昼帯の需要が少ないタイミングで新幹線よりも競争力の高い価格を設定して一定の需要を取り込む。

②高還元率マイル付与を特定時間帯で実施する
稼働率の低いタイミングもしくは一定の固定時間枠において、マイルポイント還元を通常より多く設定することで、ユーザー目線での割安感からの需要を取り込む。

③ユーザーエクスペリエンスの向上
搭乗の自動化や搭乗プロセスの業務効率化を実施することで、エアライン特有の工数削減を行いつつ、ビジネスラウンジの充実や待合室の執務スペースの増設を行う。

※飛行機は新幹線よりも本数が圧倒的に少なく、自由席の概念もないため、チケットのキャンセルや変更についての非柔軟性は引き続きネックになりそうです。


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