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【美術・アート系のブックリスト】 増村 岳史 著『東京藝大美術学部 究極の思考』クロスメディア・パブリッシング

 東京芸術大学で行われている教育に一般では学べない思考方法を学ぼうという意図で書かれた本。学生、卒業生、元教授らの証言をもとに、論理とは別の考え方や観察の仕方に切り込むという内容。
 第1章は入試。毎年全く違う内容と形式のため傾向がなく対策することのできない入試問題。それに受験生がどう立ち向かい合格したかの証言を集める。
 第2章は在学中に学ぶこと。入試とは一転して受験で学んだ事を捨てる事が求められるとか、佐藤一郎さんが教える立場で何を伝えようとしたかが説明される。
 第3章は卒業後、ビジネスの世界で活躍する人たちに、藝大で学んだ事がどう仕事で役立つかを聞いている。
「東京藝大」の内情を描きながら、それが社会のイノベーションにも重要な意味をもつ、といいたいのだろう。

 ここからは感想。
 入試の実態や教育の実態を垣間見るという目的ならば読んでみていいと思う。
 ただ著者の言いたいことは間違いではないかもしれないけども、正直いうと議論が雑。例えば、全国の国立大学の中で偏差値が40台から70台ともっとも幅が広いことを理由に多様性が豊富といっているが、画力で測られるのだから学力がバラけるのは当然だし、アート志向という尺度で測れば圴一となる。逆に一般の大学を美術という尺度ではかると幅広くなるだろう。
 一般大学には同じ価値観の学生が集まるというのも疑問だ。私の大学の同級生は38人だが、出身地も考え方も経済力も大きく異なっていた。東京藝大は多浪生や社会人を経験してから入学する人がいるが、それならば定時制高校でも同様の多様生がある。
 いろいろと疑問の残った読後感だった。

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