【美術・アート系のブックリスト】 宮下規久朗著『カラー版 1時間でわかるカラヴァッジョ』(宝島社新書)
ありそうでなかった作品編年体の伝記。
一人の画家に焦点を当てる本は世の中にたくさんありますが、概ねそれは伝記の形で画家の生涯をたどりつつ、ところどころに作品図版を差し込んでいくことが多いです。図版だけ本の冒頭や巻末にまとめるパターンもあります。本書は、時間を追って時代時代の代表作の図版を掲載しながら生涯をたどります。ありそうでなかった伝記形式です。
これは波乱万丈の生涯を送ったカラヴァッジョだからこそできたともいえます。普通の画家では、これほどドラマティックに生涯を描けないからです。なんといっても、殺人まで犯して逃亡生活を送った画家はいまのところほかにいないですから。
生きたのは1600年を挟む38年間ですから、ほぼ徳川家康と同時期の人です。そんな画家を一通り理解するにはいいと思います。「1時間でわかる」というのは大げさですが、作品解説をシンプルにして諸説を挙げるのではなく断言的に説明していて切れ味はよいと思いました。その解説が正しいかどうかは別ですが。
2021年4月15日
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?