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第15講 教える 〜信奉者を増やす

 第一講に書いたように、私の画家の定義では、学校などで美術を教えながら制作活動をする人もアーティストである。絵画を教えることの意義はなんだろう。

1 学校

 美大を卒業して画家を目指すとき、美術を続けられる安定した仕事として大学などの学校の先生を目指す人が多い。大学の先生になるにはまず大学院を修了し、助手や副手を数年間勤め、さらに非常勤講師の経験を重ねて常勤講師となり、運がよければ助教授、教授へと進んで行く。しかしこれは狭き門であると同時に上の世代が退官するなどタイミングの問題もあってなかなか容易な道ではない。

 二番目に人気なのが専門学校や予備校の講師だ。一年ごとの契約だが、収入は安定する。三番目が新聞社やテレビ局、百貨店が経営するカルチャーセンターで、経営がしっかりしているので講師になれば安定する。

 画家の仲間うちでのヒエラルキーもこれに重なる。大学で教える人の方が他で教えるより出世コースに乗っている気がするものだ。

 いずれの場合も学校側から評価を受ける。大学ならば受験者の増減、予備校は合格実績、カルチャーセンターならば応募者の増減で講師の能力がはかられる。

 ちなみに著名アーティストの村上隆、小沢剛、中村政人、中山ダイスケは芸大美大受験の立川美術学院で講師経験がある。奈良美智も愛知の河合塾で講師をしていたがあまり知られていない。

2 絵画教室

 絵画教室を主宰する人もいる。カルチャーセンターで講師経験を積んで自前の教室を開くパターンが多い。

 カリスマ講師になると、生徒が常に定員いっぱいで空きがでるとすぐに埋まる。技法書を出せば確実に生徒が買い、講師の展覧会は常に賑やかでライブペインティングは人だかりでよく見えないということもある。

 私が知る中国出身の画家さんたちはほとんど自分で教室を開いて成功している。日本人に対して油絵や水彩、水墨画を教える場合が多い。

 絵画教室の場合は、先生の人気は生徒数と直結している。評価が高ければ口コミなどで生徒が増え、そうでなければ減る。人気講師だと教室、カルチャーセンター、大学を曜日ごとに移動して教える人もいる。

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