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第1講 プロの画家の第一歩 〜味方を増やしてポジションを築く

月刊美術主催のコンクール「美術新人賞デビュー」の説明会では、コンクールの説明とともに「美大で教えない ​ アーティストになるために磨く武器」と題する講義を行っています。

これまで愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学、名古屋造形大学、東北芸術工科大学、文星芸術大学、日本大学芸術学部、女子美術大学、富山大学芸術文化学科、広島市立大学芸術学部、沖縄県立芸術大学、創形美術学校、武蔵野学芸専門学校で開催しました。ここでは過去に話した内容を抄録しておきます。

1 プロの画家の3タイプ

・画家、美術家
  収入源は画料
・学校などで教えながら制作(大学、専門学校、絵画教室の先生を兼務)
  収入源は給与、講義料、月謝
・イラストレーター、肖像画家など注文に応じて制作
  収入源は報酬、謝礼、画料

つまり継続的に作品を制作、発表し、生活の糧にしている人のこと。複数を兼ねる人もいる。

2 美術界の特徴

・学歴に左右されない
近年は一般大学出身者、独学でもデビューする例が多い。逆に有名美大を卒業しただけでは仕事として美術を続ける人はほとんどいない。

[ケーススタディ 佐藤明日香]
法政大学出身。落書きからスタートし、飛行機の中でCAに褒められたことをきっかけに画家を目指す。

・登場人物が極めて少ない
画家、画商、購入者のほぼ3人しか登場しない。したがって1人の比重が高く、個人の影響力が大きい。例えば、一人の画家の登場でアートシーンが一変してしまったり、一人の画商がプロデュースすることで画家の人気に火がついたり、一人のコレクターによって流行が生まれたりする。

[ケーススタディ 村上隆]
村上隆の登場によって、アニメやマンガがアートの領域で市民権を得た。さらにフィギュアが新しいアイテムとなり、それまでほとんど売れなかった彫刻作品もフィギュア人気とともに販売されるようになった。その影響は計り知れない。

[ケーススタディ ホキ美術館]
ホギ・メディカル社長の保木将夫さんが趣味で集めた写実絵画が点数が増えたため、千葉に作ったのがホキ美術館。以来、写実絵画の殿堂として内外に知れ渡り、写実ブームが美術界を席巻した。いまでは年間35万人が訪れる。また若手画家の発掘のためのコンクールの開催、スペインリアリズムとの交流展など、美術に果たした業績は大きく、日本のアートシーンを変えたといっていい。

[ケーススタディ 半蔵門・戸嶋靖昌記念館と執行草舟]
バイオテック株式会社の創業者で社長の執行草舟さんが、月刊美術の特集で一枚の人物像に目を留めた。燃えるような筆致で男の顔を描く戸嶋靖昌が描いた肖像だった。執行さんは編集部に電話し、自分の肖像画を頼みたいと申し出た。画家は依頼に応じたが、病気が発覚して、およそ一年で亡くなった。執行さんは画家の住まいと残された作品すべてを買い上げ、記念館を開設。のちに社屋内に戸嶋靖昌記念館を移して美術館として運営している。

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