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本多孝好 「MISSING」

~瑠璃~

"あんたのそういうポジティブなとこが、私、好きよ"


思春期の万能感は、今から振り返ると、とても恐ろしい状態だ。
自分の人生は、自分でコントロールできる。自分の人生は自分で切り開く。
正直言って、ただ無知であることが原因の思い込み。
私も思い当たるところが多く、恥ずかしい。

その魔法は解けるのが、世の常だ。
時期はさまざまで、社会人になることがきっかけになることが多いだろう。
"大人になる"と表現する人もいる。

またその時、自分で自分をコントロール出来ないと感じる人がいる。
普通は、それも "大人" は甘んじて受け入れられる。
受け入れられなければ、とても辛い思いをするだろう。


そんな女性がヒロインの瑠子だ。

主人公は、初恋の相手であるルコを 振り返る。
追悼の意をもって。夏と"瑠璃色の海"と共に。

年上のいとこのルコ と 主人公の会話は
「ノルウェイの森」の緑 と 主人公の会話を彷彿とさせる。

作者の本多孝好も村上春樹からの影響を公言しているので、とても納得できる。

「MISSING」に掲載されているその他の短編も良いものが多い。
初期の作品だが、ミステリー風のものがほとんどで、現在の作風とも繋がるところも多い。
最近、ドラマ・映画の原作となることが多く、「dele」は記憶に新しい。


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