マガジンのカバー画像

掌編小説・ショートショート・短編小説

27
ジャンルは特に決めていませんが、気ままに投稿していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

うらがえし|ショートショート

数日前からTwitterの裏垢が勝手に想いをつぶやくようになった。 まるで私の代わりに涙を流すか…

諸星颯太
1年前
15

醒めない夢|掌編小説

―たまに夢だとは思えない夢を見ることがある。  夢がついさっき起こったことだと錯覚し、  …

諸星颯太
1年前
46

イン・ア・センチメンタル・ムード|ショートショート

「おじいちゃんが心臓発作で倒れた。救急車で藤山総合病院に運ばれた」  僕は朝一から大学で…

諸星颯太
1年前
6

始まってもいなければ終わってもいない|ショートショート

「ただいま」とは言わず、静かに彼の部屋へと戻った。まだ彼は仕事から帰ってきていないようだ…

諸星颯太
2年前
5

めぐみ先生|短編小説

 黄土色をした斜面には顔を出したモグラがそのまま死んでいた。放射状に広がった触覚はむりや…

諸星颯太
2年前
10

His Secret|ショートショート英訳

I had a partner, we've been together for three years. We had lived together in a high…

諸星颯太
2年前
6

チャイナドレスの女|短編小説

 後悔する気持ちをさえぎるように、定時を知らせるありふれた音階のチャイムが鳴った。仕方なく、デスクの上をゆっくりと片付け、席を立った。周りの同僚はまだ忙しなく動いていたが、私がいる空間は時間が止まっていた。  同じ部署の中でオフィスから出てきたのは私一人だけだった。すぐ近くの駐車場にやって来る人間はおらず、静まり返っていた。ドアノブに手をかけると、車のキー音がやけにうるさく響いた。    仕事からの帰り道。外はまだ明るかった。フロントガラスを通して見る遠くの山々は、薄いピン

ダカールの朝|ショートショート

 外はまだ薄暗かったが、辺りには無数の音が響き渡っていた。どこからか風のように流れてきて…

諸星颯太
2年前
12

君の部屋で|ショートショート

 僕たちは口裏を合わせ、体調不良だと嘘をついた。  午前中の授業を終えると、二人とも頼れ…

諸星颯太
2年前
14

最後に何が見えた?|ショートショート

 私は友人の車を急いで降りて、道端で横たわっていた猫のもとに駆け寄った。暗闇の中で、猫は…

諸星颯太
2年前
13

新生活|ショートショート

 フリマアプリでダブルベッドのフレームを掲載したところ、買い手が見つかった。  どうやら…

諸星颯太
2年前
8

栄光をもとめて|ショートショート

 朝の5時、10㎞のランニングが彼の日課だった。静かにアパートの玄関を出ると、黒々とした彼…

諸星颯太
2年前
27

幼馴染み|短編小説 後編

 車をUターンさせ、前日に宿泊したホテルに向かって再び出発した。今夜は泊まるわけではなか…

諸星颯太
2年前
4

幼馴染み|短編小説 前編

 膝に迫るほど雪が積もっていたのはゲレンデだけでなく、駐車場も同じだった。午前中に車を停めたときはまだ黒いアスファルトの地面がはっきりと見えていたが、今はもう真っ白で何も見えなかった。赤いコンパクトカーにも雪が降り積もり、かまくらのようになって車体を覆っていた。出発しようにもできそうになかった。  おれはゲレンデの麓にあるベースキャンプで着替えを済ませ駐車場に出てきたのだが、スコップを探すため、すぐに中へと戻った。スノボの用具を返却したレンタルショップでまだスタッフが作業を