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THINK06/スナック雨忘&DESIGNEAST

日時:2011年8月27日(土)21:00〜
場所:サポーズデザインオフィス広島

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度掲載していきます.ぜひサブスクリプションをよろしくお願いします.皆さんの日常をTHINK するきっかけになれば幸いです.
(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)
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DESIGN EAST のメンバーの話からスナックへなだれ込む不思議な回

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当時の谷尻誠さんの告知資料から抜粋:

THINK06のお知らせです。
今回のTHINKは東京から、各方面で活躍する女性たちが、
スナックのママとして広島に来てくれます。
なにもない部屋を、ママとお客様のコミュニケーションによって、
スナックにしてしまうという実験的な試みです。
人との関わりが希薄になりがちな今だからこそ、
愛情をもって叱ってくれる人が、大切な存在なのではないでしょうか。

また、スナック開店前の19:00ー21:00はDESIGNEASTのディレクター達を迎えて、デザインイベントについてのトークショーを開催します。
出来事をデザインするということ、またその未来に向けての想いを語っていただきます。

スナックというお酒の場だからこそ、語り合えることがあります。
優しく叱られたい方もそうでない方も、お酒をのみながら普段話せないようなことを語りに来てくださいませ。
そんな時間をみなさんと一緒に過ごしたいと思いますので、ぜひゆるりと足を運んでいただければ、嬉しく思います。

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大阪を中心にクリエイティブな活動をしている,水野大二郎さん(風邪のため欠席),柳原照弘さん,原田祐馬さん,多田智美さん,家成俊勝さん,が中心となって,関西からデザインを発信するという意気込みで始めたイベント,DESIGNEAST(デザインイースト)の紹介ということで,第6回目のTHINK”スナック雨忘(レインボー)”の前振り的なトークがおもむろに始まった.そこに,成り行きで司会をすることとなったというPen編集部(当時)の山田泰臣さん,に谷尻さんが加わって,オープン前のスナックに突如として真面目なデザイントークが繰り広げられることに.お客さんはスナック目当てに来ているものだから,いささか予期せぬデザイントークに戸惑いも見せつつ,和やかにスタート.

DESIGNEAST DIRECTER PROFILE(いずれも当時)

柳原照弘
[ISOLATION UNIT/]
プロダクト/空間デザイナー
1976年 香川県高松市生まれ。
1999年 大阪芸術大学 デザイン学科を卒業後、2002年"ISOLATION UNIT/TERUHIRO YANAGIHARA"設立。
2009年スウェーデンの家具ブランドOFFECCTからソファシステム[GROW]を発表。以後、国内外の家具ブランドをクライアントに持つ。
2009年に発表された国内ブランドKARIMOKU NEW STANDARDではアートディレクションおよび家具デザインを行う。
http://teruhiroyanagihara.jp/

原田祐馬 [UMA/design farm]
デザイナー
1979年大阪生まれ。
修成建設専門学校卒業後、2000年京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻に編入学。
2002年同大学卒業後、インターメディウム研究所(IMI)7期生として入学。
2005年まで在籍。建築・デザイン・美術・ワークショップを中心にプロジェクトを立ち上げ、活動を展開。2005年より京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科 非常勤講師。
2007年、「UMA/ design farm」を設立。アートディレクター/デザイナーとして、ブックデザイン・グラフィックデザイン・エキシビジョンデザイン・ インテリア デザインなど手がける。2008年より「ULTRA FACTORY/CRITICAL DESIGN LAB.」のディレクター、2009年より「DESIGNEAST」のディレクターを務める傍ら「prototypebook」「books hop」「@YOUMOREBOOK」など本のこれからを考えるプロジェクトを立ち上げ、領域を横断した活動を展開している。
http://umamu.jp

家成俊勝 [dot architects]
建築家
1974年兵庫県生まれ。関西大学法学部法律学科卒。大阪工業技術専門学校夜間部卒。
専門学校在学中より設計活動を開始。
ドットアーキテクツを赤代武志、と共同で設立。
http://www.tcct.zaq.ne.jp/dot/

水野大二郎
ファッションリサーチャー
1979年東京生まれ。英国のロイヤルカレッジオブアートにて、修士号と博士号をファッションデザインで取得。
現在、京都造形芸術大学にてファッションデザインコースで教鞭をとる傍ら、同学「ULTRA FACTORY / CRITICAL DESIGN LAB.」にてディレクターとして運営に携わっている。
近年では文化社会学的な視座に基づくデザインリサーチを中心に、多岐に渡る活動を展開。
http://www.daijirom.com/

多田智美 [MUESUM]
編集者
1980年生まれ。龍谷大学文学部哲学科教育学専攻卒業後、彩都IMI大学院スクール入学。
修了後2年間京都造形芸術大学芸術編集研究センターに勤務。
2008-2009年、Licht/altエディトリアル・ディレクター。アート、デザインを中心に書籍の編集に携わる。2010年よりエディトリアル・デスク「MUESUM」代表。
"出来事の生まれる現場から、ドキュメンテーションまで"をテーマに、アーティストマネジメント、制作コーディネイト/展覧会およびイベントの企画運営/ドキュメントブック制作を手がける。
2008年より京都造形芸術大学ウルトラファクトリーにて「ULTRA FACRTORY PRESS」のディレクターを務める。
京都造形芸術大学非常勤講師。
http://www.muesum.org/

DESIGNEAST01の役割

進行役の山田さんの絶妙な振りを受けて,柳原さん,原田さん,多田さん,家成さんがそれぞれ,DESIGNEASTの意義や狙いなどを冗談を交えて楽しいトークが進んでいく.

そもそも,DESIGNEASTとは,世界の都市のデザインイベントに匹敵するような国際的なクオリティのデザインイベントを関西から,という思いで立ち上げたイベント.

最初が2009年,2010年は造船所跡地で.そして,2011年を企画中.その計画についてメンバーが説明をする.ゲストも多彩.2010年には,イタリアからエンツォ・マーリ(2020年10月没)を招いてレクチャーを実施した.

そこでは,デザインとその在り方についての問題提起を孕んだエキシビションやワークショップが企画されてきた.デザイン業界全体の構造や,東京と大阪など地方,に関するヒエラルキーに対するオルタナティブとして,2011年は「周縁と中心」というテーマが設定された.

柳原さん:
そういう意味で,ヒエラルキーのない見方とか,脱東京中心的な考え方って,谷尻さんにも共通するかなと思っているんですが,どうですか?

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谷尻さん:
デザインってほんとうは普通の生活に潜んでいて,例えば服をどこにどう仕舞うかとか,本をどう片付けるかとか.その選択そのものがデザインに参加しているっていう事なんですよね,普通の人には見えていないだけで.

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2020年から振り返ると,いまでこそデザインという言葉の定義が広がり,セレクトや選択といった「生活」上の「編集」作業も,立派なクリエイティブかつ自己表現のひとつ(つまり,それがコミュニケートの最初の一歩でもある)だという認識が広がっているが,その端緒がこのあたり10年ほど前の日本の先駆的なクリエイターが試みてきたことの実りなんだろうなと思わずにはいられない.

谷尻さん:
僕がTHINKを始めたのも,僕ら設計する側って,何か頼まれたら,それっぽいものを作ってしまいがちなんですよね.美容院を頼まれたら美容院ぽくつくりがち.でも,そこを疑うことが大事だと思っていて,いかにつくらないでつくるか,ってことを意識するためなんですよね.何があれば,その「場」になるのか.そういうアプローチで仕事に取り組んでいるんです.デザインしないことも大事だなと.

今日も,スナックやりますっていう事なんですけど,ただの遊びに見えるかもしれないけど,実は,昨日もスナックにみんなでリサーチしに行って,ママの話を聞いて.これがまたすごく腹抱えて笑ったんですけど.面白くて.やっぱり,話が.すごいなって.

それで,話をデザインイベントに戻すと,今ではそれっぽく見えるイベントも増えてきて,ある種,ちゃんと「何がデザインか」っていうことを伝えられるかどうかっていう責任を伴うなっていつも考えます.

原田さん:
谷尻さんの「デザインイベント」の責任が重大っていう話はとても共感出来て.なので,僕らも,イベント,と呼ばずに「プロジェクト」として捉えていたいという思いがあって.それがやっぱり大事なんだなとあらためて思いました.

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多田さん:
そうなんですよね,イベントで終わり,じゃなくて,そこでデザイナーや参加者が気軽に話せて,そういう距離感で出会うことが次につながって,ということに期待をしていたりします.

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家成さん:
THINKもきっとそうだと思うんですけど,この場に参加した人同士であたらしいつながりが出来て,別の場所でまた何かが起きる.DESIGNEASTも,そういう関西ならではのノリと距離感でできることがあるだろうと思います.

ちなみに,今日は,スナックだから,きっとカラオケがあるんだろうなって冗談言ってたら,本当にあるもんね(笑)

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谷尻さん:
そうなんですよ,スナックをデザインするってなった時,僕らはつい,空間をどうするかっていう事から考えてしまう.だけど,昨日,ママと話したら,コースターとか,招き猫いるよねとか,ダルマもいるとか,看板どうする,ドレスどうする...もう全然アプローチが違う(笑)

山田さん:
人の距離感とかね.谷尻さんってスナック好きなんですか?

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谷尻さん:
場末のスナックは昔から好きで.出身が三次という田舎なんですけど,そこにあるくたびれたスナックとかによく友達と行ってましたね.おしゃれな場所より好きですね.結局,おしゃれなものよりも,そういう場末感というか,おしゃれじゃないものに惹かれるということも分かってないとね.ダサいものも作れないとマズいと思うんですよね.

スナック「雨忘(レインボー)」っていう名前を決めたとき,無茶苦茶盛り上がりましたからね.雨が上がったころに虹が出てっていうのを漢字の意味と読みにかけてるんですけど.みんなで「いいねー」って.

そして,スナック雨忘 rainbow

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それから程なくして,きらびやかなドレスに着飾ったサポーズスタッフや,プレスの女性たちが,サポーズデザインオフィス3Fにある解体して構造体や下地が剥き出しになった「名前のない部屋」に即席でつくられたカウンターの中に陣取り,来場者とワイワイ喋り謳い飲み...不思議な夜は更けていったのである.

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今回の読むTHINK,いかがでしたでしょうか.次回もまた,直近のTHINKや,過去のアーカイブからその時の空気感を思い出しながら記事にしていきますのでお楽しみに.

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2020年1月で109回を迎えたTHINK。 これまでのアーカイブを読むTHINKとして届けていきます。 活躍する方の思考の共通項と差異を客観的視点から考察します。

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