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240gram VOL.6 漂う/Are we all drifters...


Originally released in MAY.2018

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Blur
ブレた被写体が魅力的だったりする。ブレ、というのはエラーに違いないが、エラーが人を惹きつけるということはよくある。技術的に未熟あるいは不完全であったことが、却って予定調和からは見出せない結果をもたらす。真面目によく準備されたものは多くの場合、結果も予想できる範囲の良さに収束する。エラーはその良さとは飛躍した結果をもたらす。それが分かっているから、つねにその飛躍のための隙を意図的に試みるが、不思議と意識するとエラーにならない。わざとらしいエラーは嫌味になりがちで、それは永遠のジレンマでもある。

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Parallel world
3 次元で空間をイメージするための模型に、2 次元のイラストの人物を置いてみる。つまりこれは明らかに矛盾した表現だが、そのどちらでもないバランスが、一種のパラレルワールドに置き換わる。模型はリアルを想像してもらうはずのものだが、ここでは自分が模型の世界の住人になれたような錯覚が生まれる。ひょっとして、自分たちの毎日は、だれかの地球儀の上で起きていることなんじゃないかと思うことがある。


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Seaside off-season
11 月の由比ヶ浜は、季節外れの好天がいっそう夏の賑やかさを想起させた。どこかの修学旅行の高校生のグループがはしゃいでいた。ただ鎌倉の海がどんなものかちょっと見るだけのつもりだったが、ついつい砂浜沿いをしばらく歩いてしまった。波の音と潮の香りはついつい人を引き寄せる。


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Nostalgia
黒い服ばかり着るようになって随分時間が経った。もともと中学の頃から洋服は好きで比較的派手な着こなしをしていたが、20 代後半、設計事務所に出入りしてシンプルでミニマムなデザインに魅了されたのと、歳をとってからは黒と決めおけば迷うことがないという合理性とが重なって、今のような黒っぽい服が自分のスタイルとなった。最近、カラフルな色柄のソックスを履くようになったのは、重ねる歳に対する密かな抵抗か、または昔の自分が顔を覗かせているのか。


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Cut tree
フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトは、美しい曲線を持つプロダクトのデザイナーとして知られている。自然が彼にもたらした造形感覚は、今なお多くの人を魅了する。その曲線モチーフは、フィンランドの湖の輪郭とも、樹木の断面ともいわれている。ある時、緑地帯に植えられていた大きな樹がバッサリ切られていた。街中の交差点横にあったもので、視界を遮るなど交通に支障をきたしていたのだろうか。人間の勝手な都合にバツが悪くなると同時に、その美しさにハッとする。


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Winkles
皺。折り目ひとつない綺麗な状態の紙の美しさがあるなら、皺だらけのくしゃくしゃの状態の紙の美しさもある。全体がさらに小さな皺で覆われたとしたら、それは結局、ある種綺麗な状態の紙と同じ状態になるだろう。ものにはスケールと密度があり、一見相反する状態のものも、離れてみれば一緒だったりする。多くの物事は同じような構造を持っている。人体から宇宙まで。多様性とは、そういうことではないかと考えている。

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