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THINK85/稲垣えみ子さん

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度掲載していきます.ぜひサブスクリプションをよろしくお願いします.皆さんの日常をTHINK するきっかけになれば幸いです.
(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)
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(当時のリリース資料)
THINK_85
日時:1月12日(金)
   開場 19:00〜 開演19:30〜21:30 
会場:広島市中区舟入本町15-1 サポーズデザインオフィス3階

2018年最初のTHINKは、アフロヘアーがトレードマーク、元朝日新聞社勤務のフリーランス、稲垣えみ子さんにお越し頂きます。
一目みたら忘れられないアフロヘアーの稲垣さん。そのライフスタイルも一度聞いたら忘れられません。生活スタイルのお手本は「時代劇」。冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器、洗濯機、そして掃除機すら置かず、「これまでの人生で最小の家」というワンルームマンションで「なにもない」ミニマルな生活をされています。
そんな生活のきっかけは東日本大震災の時の節電だったそうですが、今ではそんな生活を楽しまれているそう。お風呂は銭湯で、洗濯も手洗い。食生活は「メシ、汁、漬物」と、日本人にとってのソウルフードが基本。それでも、ベランダで干した野菜や、自家製の梅干し、ぬか漬けなどを駆使して作られる食事はどれもとても美味しそうなものばかり。なにもない状態を解決するための"工夫”を楽しみながら生活されています。
今のくらしが理想形だと言い切る稲垣さんですが、この生活を始める前は、物があっても満たされない生活に、「お金があるほど幸せ」という価値観をを持ち続けることに危機感を感じていたそうです。そんな中で、ライフスタイルを変え、「なくても生きていける」ということ気づいたとき、「自由」を手にしたような感覚を得たといいます。
欲をコントロールすることが出来たとき、自然に満たされ、生きることが怖くなくなったと、いう稲垣さん。そんな稲垣さんとTHINKして、欲とは何か、自分にとっての自由や幸せとは何か、について一緒に考えてみませんか? 

Guest_稲垣えみ子 / Emiko Inagaki
1965年愛知県生まれ。大学を卒業後朝日新聞社に入社し、大阪社会部などを経て編集委員に。アフロヘアの外見と、原発事故後に始めた超節電生活を綴ったコラムが注目を集める。2016年、肩書きを持たずに「楽しく閉じていく」人生を目指して50歳で退社。現在、都内の築47年、33平米のマンションで、電気代200円以下、ガス契約なしの製品生活を満喫中。著書に「魂の退社」「寂しい生活」「もうレシピ本はいらない」など。

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会場ではスタッフのセレクションによるものなのか,いつも開始前にはいい音楽がBGMとして流れているのだが,面白いことに,今日はニーナ・シモンがかかっている.なんだか,今日のゲストにピッタリではないか.

そんなことを考えていたら,谷尻誠さんとともに,アフロヘア―がトレードマークの稲垣えみ子さんが照明を抑えた暗めの会場にも関わらずクールなティアドロップのサングラス姿で登場.アウトフィットもハリウッド感ばりばりのクールさである.この姿と思想のギャップ(ギャップとは違う気もするが...)も人が彼女に関心を集める要素のひとつではあると思わずにはいられない.何を喋ってくれるのか否応にも期待が高まる.
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ジェームス・ブラウン登場

稲垣さん:
すいません,ネタでサングラスを(笑)(注:席に着くとすぐに外す笑)

谷尻さん:
ネタなんですか(笑)

稲垣さん:
はい,この間このサングラスで電車に乗っていたら,外国のお兄さんから「オー,ジェームス・ブラウン!」って言われまして.ああ,私,ジェームス・ブラウンって言われたって,ちょっと驚いてしまって,それでそれ以降ネタとして使ってるんですけど(笑)

みなさんすいません,今日は,面白いのはここがピークなので(会場爆笑)

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そんな砕けた感じでいつものようにトークがスタートした.

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本当の意味で豪邸

谷尻さん:
雑誌モダンリビングの対談でお会いして,あまりにも驚くべき生活をされていたので,ぜひTHINKに来ていただこうと思って,今日やっと実現しました.

稲垣さん:
モダンリビングっていう権威のある雑誌にですね,私の洗濯物が干してあるような部屋が...それも,その号は豪邸特集だったんですよね(会場爆笑)

谷尻さん:
そうでしたね.

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その対談で,異例ではあるものの,谷尻さんがどうしても稲垣さんのご自宅でお話を伺いたいということで訪問し,その生活ぶりを見聞きし,その価値観に驚きつつも共感するものがあったようだ.
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稲垣さん:
まあ,たしかに,豪邸の中の豪邸というか・・・あるいみ豪邸かもしれませんね.

谷尻さん:
時代とともに豪邸の定義も変わってきますからね.豪邸というか,むしろ普通の家より小さいんですけど,稲垣さんの生活の方が,はるかに豊かですよね.

稲垣さん:
その特集号の他の家とか見るとさすがにすごいんですよ.家じゃなくて美術館?みたいな家ばかりで.洗濯物が干してあるような私の家でいいのかなって.驚いたんですけど,他のどの家にも洗濯物が写っていない(笑)

なんか,(雑誌の中の住宅は)掃除で20時間くらいはかかりそうな家ばっかりで...いま,自分史上一番小さな家に住んでいるんですよ.掃除もあっという間に済むから,その分,自分の時間に余裕ができるんですよね.雑誌眺めながら,あんな広い家なら,お手伝いさん雇うよねとかね...想像してましたよ.その時に思ったのが,ああ,豪邸ってある意味で事業...社会奉仕なんだなって.

谷尻さん:
そうですね(笑)
今日は,その家の写真を持ってきてもらってるんですよね

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スクリーンに,稲垣さんの家の写真が映し出される.
稲垣さんは,50歳で退社,フリーになり,家賃圧縮のために小さい家に済むことに.その背景には,2011年の震災がある.それまで当たり前のように贅沢をして暮らしていた社会の在り方にどこか違和感を持ったのだという.
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稲垣さん:
この家,築50年以上なんですよね.なので,つくりがものすごく古くて,現代ではあり得ないような間取りなんですよ.

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