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THINK04(5th Aug. 2011)/ゲスト:為末大さん

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベント"THINK"を読み物として再構成してまとめています. 多彩なゲストとの間で繰り広げられる本音のトークはここでしか聞けないヒントがたくさん詰まっています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度,定期購読マガジンとして掲載していくので,よろしければ定期購読していただいて,皆さんの日常をTHINK するきっかけになれば幸いです.(谷尻誠,西尾通哲:共同編集)

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当時(2011年8月)の告知資料より

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過去3回のTHINKでは、物作りに携わるゲストをお招きしてきましたが、
今回のTHINK_04では、現役陸上選手の為末大さんをお招きします。
走ることのプロフェッショナルである為末選手に「走り」と「思考」の関係性をお話しいただきます。
物作りとは異なるクリエイティブな思考回路に触れるTHINK_04 、ご来場お待ちしております。
トークショー:2011年 8月5日(金) 19:00〜21:00
会場:suppose design office 3階

Profile (注:2011年当時)
為末大(ためすえ だい)
1978年広島生まれ。
世界大会においてトラック種目で日本人初となる2つのメダルを獲得し、3大会連続でオリンピックに出場した日本を代表する陸上選手。
現在は4大会目となる2012年のロンドンオリンピック出場に向けて日々鍛錬を積み重ねている。侍ハードラー”の異名を持ち、“陸上宣伝部長”として競技のPR、普及にも貢献。

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2011年の8月に行われたトークを,10年後の2021年の2月に再び録音を聴きながら原稿を書き起こしました.為末さんは,この時まだ現役のアスリートとして,2012年のオリンピックに向けてトレーニングをされていた時.そして,このトークの翌年の2012年,日本選手権でのレースを最後に引退を発表されました.トークの途中で,自分の競技人生を砂場遊びに例えて語るくだりがあります.今振り返れば,当時の為末さんにはどこかで幕引きが近いことを自分の中で理解していたのかと思うと,なにかグッとくるものがあるのでした.
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走ることと作ることの共通点

谷尻:今日は,みなさんもよくご存知の陸上選手,為末大さんをお呼びしました.僕が為末さんとお会いしたのはどこかの食事でご一緒したのが最初で,そのあと,お話を伺ううちに,為末さんが普段考えられていることが,僕ら建築家やデザイナーや,一般の人でも普段向き合っていることにすごい学べる点が多いのに驚いて,ぜひTHINKに来てください,ってお願いしたんです.

為末さん:いつもはアスリート向けに講演をする機会は多いんですが,今日はちょっといつもと違うフィールドなので,興味深いですね.だいたいいつも肉食系の感じの人がワっと集まってくるんですけど,今日は草食系というか,優しそうな人が多い感じですねやはり(笑)

谷尻:分からないですよ(笑)意外とみんな隠れ肉食系かもしれません.

為末さん:そうなんですね(笑)いつもは,アスリート向けにレース戦略や,または一般向けには社会の中でのアスリートの価値とかについて話すことが多いんですが,今日は,より専門的なレース戦略についてお話しさせていただいて,そのあと,皆さんの質問を受けたりしながら,デザインや一般的なこととの共通点を炙り出せたら良いなと思います.

それでは,最初にレースの映像をみてもらいましょうか.

これが,僕がメダルをとった世界陸上ヘルシンキ大会でのレースなんですけど,外から2つ目の7レーンが僕です.50メートルあたり6秒から7秒で走ります.

(会場拍手)

ありがとうございます,この映像で何度も拍手をいただけるのですごい嬉しいんですけど.さて,本題ですが,じつはあのトラックをぐるっと一周する間に,僕らが何を考えて走っているのかということについて説明してみたいと思います.

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