見出し画像

いま、生きているということ❸〜宣告〜

2月12日(水) 18:00

新宿駅の山手線外回りホーム進行方向端っこで仕事終わりの奥さんと待ち合わせ、一緒に帰宅しながら"ガンかもしれない"ということをざっと話しました。

奥さんが冷静で助かりました。まだ、結論が出た訳ではないですし、とにかく今の段階で調べることや準備など出来ることをやるだけだよね、と。14日の午後改めてガンの診察も出来る永寿総合病院へ行くのでその後アクションを考えようということになりました。
プチ家族会議終了。
そのまま二人でお家に帰って、高校生の娘と普通に晩ご飯食べてテレビ見てお茶飲んで、順番にお風呂入ってアイス食べて寝ました。

2月13日(木)

この数日ろくに仕事が手につかず若干溜まり気味であった事もあり、この日はクライアントとのミーティングや企画書作り、仕事仲間の進捗確認や軌道修正など朝からお仕事。

そんな時間を過ごしていると、この数日の変化がまるで現実では無い事の様に思えてきます。何人かから「アキラさんちょっと痩せました?」などと言われたりして。
※夜測ったらこの一週間で5kgぐらい落ちてた

帰りがけ僕の氏神様である、三社様(浅草神社)に立ち寄り参拝。
いつも毎朝通勤途中にお参りをして見守ってもらうお願いをしているのですが、今日は初めて神頼みを。
「どうか、勘違いや嘘であってください」

お家についてからは直腸ガンについての勉強。
生存率とは結局ガンが転移しているかどうかで大きく変わること、転移していなければ摘出で完治もあり得ること、一方下部のガンの場合は肛門摘出の可能性が高く人口肛門(ストーマ)となること、内田春菊さんがストーマでも元気でおられること、直腸ガンの症例などでは有明ガンセンター、巣鴨病院、東大病院あたりが良さそうなこと、セカンドオピニオンの考え方、などなど。

恐怖は確かにあります。でも、知るほど分かるほどどうすれば良いかが何となく想像出来るようになり、漠然とした恐ろしさが闘う意欲に変化していく感覚が出て来ました。
いつでも、前を向くって大切だなぁ。

奥さんが「明日休み取ったよ」とのこと。でもまだまだ、そんなにヤバい局面では無いと言って、一人で行く事にしました。ごめんね。
ホントは有り難かったのですが、何かそんなに場が整うとドラマのワンシーンみたいで、イヤな展開になる予感がしたのと、もしも、僕が取り乱すような事があったら見られたく無いなぁと。

2月14日(金)

午前中は新しいプロジェクトの全体ミーティングに参加したあと、ビジネスパートナーと昼食を摂って紹介をされた永寿総合病院へ。

時間の30分くらい前に総合受付に着き、紹介状などを手渡し受付番号1469を貰って待合室の順番が映し出されるモニターの前に座りました。
受付をした番号がだーっと映し出されており、1469がだんだん繰り上がる仕組みのモニターだったのですが、何かの宣告を受ける順番を待っている様な気分になり、ちょっと嫌でした。
やたらと喉が渇き、何度もトイレに行き、順番が来て欲しいのか来て欲しく無いのかわからない気分の中で深呼吸をして、時間をやり過ごす。
指や足の先から力が抜けるような気分になったり、急に客観的に感じて自分が俯瞰して見れたり、とにかくぼーっとゆっくりゴールに向けて移動をする1469を眺めていました。

そして、ピンポンというチャイムが鳴り1469が1番左側に移動をして、数字がひと回り大きく表示されました。

もう一度深呼吸をして、診察室の鉄の横スライドの扉を開けて挨拶をしながら部屋に入り、鞄とコートをベッドの脇にある籠に入れて丸椅子に腰掛けました。
紹介状に書いてあって何度も何度も繰り返し見ていたイカツイ名前の先生は、意外なほど若くマスクの向こう側で柔らかな笑顔をしているのがわかります。
二言三言雑談をした後、では、とPCにCTの画像を映し出し説明が始まりました。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?