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恋 AtoZ

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 #短歌

    • ええんとちゃう

      私の中にいるイマジナリー関西人は、ことあるごとにええんとちゃうと呟く。ええんとちゃう。イエスと大きく頷くでもなく、ノーをみっちりと突きつけるでもなし、逃げ道だらけで責任知らずな言葉がしっくりくる私の人生。ええんとちゃう。知らんけど。イマジナリー関西人はさらに責任を放棄する。 最近、といってもここ数年にわたって悩まされていることだけれど、レコメンドだらけの世界にうんざりしている。もうこれ以上何もおすすめされたくない。誰かのおすすめ、それがなんなん。これを買ったあなたにはこれも

      • つるりつるりとうわべをすべり

        よく覚えていないと白を切ったはいいものの、うすうす思い出してきたと迷走し始め、軽率にサインしてしまったかも、と大人らしからぬ発言を厭わずに漏らす。かと思えば、うすうす思い出されていた記憶はどこへやら、記憶にございませんと三谷幸喜の映画ばりに10連発をかまし、結局は覚えていないと開き直る。そして今では、揺さぶりをかけられているのだと被害者面だ。そもそも、少しでもまともな政治家であれば、揺さぶりをかけられるような弱みを握られない。記憶が戻ったり消えたりと動揺せざるを得ないのは、揺

        • 某日、陽の当たる某所にて

          海の見える街に越してきてからもう二年経つ。朝から昼にかけては山並みに船の汽笛がこだまし、日によっては目覚まし時計のお役も御免だ。名残惜しさを抱えながらも布団から我が身を剥がし、身支度をしている間に洗濯機を回す。船の汽笛には遠く及ばず、それでも確固たる意思を持つ音がピーピーと鳴る頃には、大方の朝の準備が終わっているのが常である。 ベランダで洗濯物を干すその時間。より正確に言うならば、ベランダに続く窓を開けたその瞬間。その時私の目に入るもののすべてが、私がここにいる理由に思えるほ