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一眼レフのレンズにバリアがあってもいいじゃないか (MINOLTA AF35-80mm F4-5.6)

 カバー画像にあるこの2本のレンズ。
 ミノルタAF35-80mm F4-5.6と、AF80-200mm F4.5-5.6の2本。
 ジャンク品をあわせて1100円税込みで買ってきました。32年前のレンズですけど、特にレンズの曇りなどもなし。

 スペック的には凡庸極まりない、廉価ボディにダブルズームキットで売られてたであろう最下級クラスのレンズなんですが、見ての通り、レンズバリア内蔵という、ちょっと他社製品では見たことがない仕様なんですよ。
 「キャップなくさないから便利やん」とは思うんですけど、キャップなら失くしても撮影できるけど、バリアは壊れて開かなくなったら撮影不能。
 フードもつかないし、フィルタの使用にも支障が出そう。外周より小さいΦ46mmのフィルタになるから、PLとかだと回しづらいはず。
 普通はやらない代物なのは確かでしょう。

α-3700iというカメラ

 このバリアつきレンズは、しばしばα-3700iというボディとくっついた状態でジャンク箱から発掘されます。発売時期も同じ頃で、まあ、合わせて売られたことが多いと見られます。
 1985年にα-7000から始まったミノルタαシリーズは、1988年に発売されたα-7700iから、第二世代になります。
 その第二世代のローエンドを担ったのが、α-3700i。

 一眼レフカメラといったら普通、絞りやシャッタースピードを自分で決めて、絵作りしたりできるもんじゃないですか。
 α-3700iって、ほんとにプログラムオート専用なんですよ。マニュアル露出すらできない。撮影機能がコンパクトカメラ並み。
 世界初の実用AFで、誰でもボタン一つで簡単に写真を撮れる一眼レフを完成させたミノルタが、ボタン一つで写真を撮ることしかできない、という、逆に凄まじいものを作ったのがα-3700iなんです。

 まあその、多機能な製品って、初心者から見るとわけのわからない機能が満載で使いにくく感じるものです。
 余計な機能を落として初心者にやさしく、ってのも、ひとつの考え方ではあります。切り落としすぎやろ、というのも、所詮はマニアの考え方。
 絞りとか速度なんか表示もしない。露出補正もない。あらゆる物を削ぎ落としまくった結果、α-3700iは、当時世界最小最軽量のAF一眼レフとして完成されました。

バリアつきレンズたち

 世界最小最軽量プログラムオート専用超初心者向け一眼レフ・α-3700iと組み合わされるレンズが、キャップじゃなくてレンズバリアという、他にほとんど類例がない仕様になった、と。
 これも、α-3700iの「徹底的に初心者に合わせる」という思想から、キャップをなくさないというメリットのためにやったことだと思われます。

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 このレンズバリア、意外に安っぽい造りじゃない。
 32年前の製品だけど、未だにスムーズに開閉します。けっこう触って気持ち良いしっかりした造り。
 ちゃんとバネが入ってるから、開ききるとカチっと止まって、閉めるときはシュパっと閉まる。半開きになってケラれたりしない。
 どう見たって、キャップよりはるかにコストかけてる。コストにシビアな廉価商品でそうするからには、「これが初心者には良い」という信念を持ってやってるはずです。

AF35-80mm F4-5.6 実写レポート

 さて、標準ズームのAF35-80mm F4-5.6から、実際に撮ってみましょう。ボディはデジタルで、α3000にLA-EA4を噛ませて使ってます。

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 広角端35mm・F6.3。APS-Cセンサーのカメラなので、換算52mmほど。
 ま、32年前の廉価品で、しかも「世界最小最軽量」のボディと組み合わせる前提があるから軽量化の要求もあったと見られるレンズなので、写りがよいレンズとは言い難い。
 これは開放から1.3段絞ってることもあって、まあ解像という意味ではそれなりに写ってはいます。しかしなんだか立体感がない。なんでこんなに奥行きを感じない写りになるんだろう。

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 80mm F8で、トキワサンザシ(ピラカンサ)の花序をアップで。
 これでほぼ目一杯寄ってます。最短50cm、撮影倍率は最大0.18倍。

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 80mm F8。絞ると解像はするけど、やっぱり立体感は不思議と出ない。

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 80mm F8。

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 80mm F5.6(開放)。
 開放だとソフトレンズみたいな収差が出て、ふわっとしてる感じ。noteにアップできる縮小サイズでも、甘くなってるの見えちゃう。

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 80mm F5.6(開放)。ソフトレンズっぽいのは、近距離撮影でも出ますね。ポートレートなら面白い効果になったりするかな?

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 35mm F4(開放)。
 広角端でもやっぱり、開放だとなんだか頼りない。
 ただ、テレ端がソフトレンズ的になるのに比べて、ワイド端は全体的にちょっと解像感が足りない写りになってますね。(ただし手前の看板の文字は、単に奥ピンでアウトフォーカスになってるだけと思います)

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 35mm F5。開放から2/3段絞ってますが、まだ解像力が上がるってほどでもないか。
 樽型の歪曲収差も、こういう被写体だと目立っちゃうな。

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 80mm F5.6(開放)。ボケはこんな感じで、まあ、これは、かなりうるさいボケだなあ。

 ちなみに今回撮れてないですが、ズーム中間だとわりと写り良くなるそうです。

レンズの性能の違いが、写真の良し悪しの決定的差ではないということを……教えてやる!

 ということで、まあ、私の目から見ても、写りが良いレンズだとは思えない。32年前の廉価ズームレンズなんだから当たり前ですが。
 海外のレビューサイトなんか見ても、まー、「ミノルタの中でも最悪」「使ったことがある中で最も写りの甘いレンズ」「ソフトレンズみたい」「甘い、コントラスト低い、うるさい、寄れない」「いいところが何も思いつかない」とか、ボロクソですね。
 しかし私が撮った感じ、ソフトレンズみたいになるのはテレ端で開放絞りのときです。解像した写真が必要なら絞ればいいし、効果としてソフトにしたければ開放にすれば使い分けられる。

 このレンズが作られた1988年当時って、まだAF対応レンズというもの自体が生まれたばかり。設計ノウハウも変わってたでしょう。
 その上、「ボディが世界最小最軽量なんだからレンズも小さく軽く」という要求があったはずで、実際220gと小型軽量になってます。レンズバリアなんて凝った機構があってもなおその軽さ。
 それで値段は安くなきゃいけないんだから、まあ制約の強い開発になったはずですね。その苦労を思えば、「画質が悪いからクソレンズ」と切って捨てるのは忍びないものがあります。

 レンズバリアの触り心地を愛でつつ、ソフトレンズにもなる標準ズームとして使いこなすのが愛というものでしょう。

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