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古標準ズームでならまち歩き(PENTAX-F 28-80mmF3.5-4.5)

 ボディが32万円になっても、ジャンクで1000円のレンズを試す趣味をやめない夢望庵さんです。
 いや、先日出たカスタムイメージ・Goldが、明らかにオールドレンズを美味しくする代物でしょ。ぴしっと写し切るような現代的なレンズより、昔の少し粗があるようなのが似合う。

 そういうわけで、本日のネタはPENTAX-F 28-80mmF3.5-4.5。


PENTAX-F 28-80mmについて

 レンズ名がFAではなくF、かつこの少しゴツいデザインということで、こいつはPENTAX SFX世代のボディに併せて出たレンズでした。80年代後半のです。
 ただ、非常に紛らわしいんですが、smc PENTAX-F 28-80mmF3.5-4.5と、PENTAX-F 28-80mmF3.5-4.5とは別物です。
 smc-Fのほうは87年に、SFXと同年に出てました。
 無印Fは、89年発売だそうです。

 かつてのPENTAXは、多分海外向けとかと思うんですが、smcを省略して普通のモノコートにした廉価版を出すことがありました。
 じゃあこれもそうかと思いきや、、28-80mmF3.5-4.5はsmc-Fと無印Fでレンズ構成から別です。
 smc-Fは9群12枚で全長75mm・390g、無印Fは8群8枚で全長93mm・410gとなってます。
 外見も長さが違う以外はそっくりらしいんですが、鏡筒の28-80mmの表示がオレンジなのがsmc-F(通称赤文字)で、白文字なのが無印Fです。

 元々赤文字smc-F 28-80mmと70-210mmがあって、2年後の89年というよくわからないタイミングで無印F 28-80mmと70-200mmを、わざわざ新設計で追加したらしいんですが、なんでそんなことしたのかは謎でした。
 SFXの廉価版だったSF7が出たのは88年。いかにも廉価機向けなズームレンズがSF7と同時発売ならわかりやすいんですが、なぜ翌89年に発売なんだろう。キットレンズとしてはSF7に付属させてたけど、単体販売始めたのが翌年だったのかな。
 市場で見かける数にしても、赤文字の方がレアっぽいんですよね。だからボディと一緒に沢山出たのは白文字じゃないかと思うんですが。

スペックなど

 スペックはまあ普通の28-80mmで、F3.5-4.5と微妙に明るい。これは多分、当時のAFセンサーがF5.6じゃキツいせいでしょう。
 ただ、80年代の28-80mmは、あまり寄れないのが常。PENTAXの28-80mmも例に漏れずで、最短1m。使いづらい……。
 そのかわり、テレ端でマクロモードがあり、これだと25cmまで寄れるようになります。倍率は多分1/4~1/5倍くらいじゃないかなあ。

 マクロモードは、ズームリングを80mmよりさらに回せば移行します。
 80mmで一旦止まるようになっていて、さらに軽く力を入れればマクロまで回る。間違って行き過ぎることはない一方、別のスイッチを操作するとか別の動作は必要ない。このへんはメカ設計の良さを感じますね。
 マクロ域でもAFは効きます。ただし、寄れるようになる代わりに、無限遠までピントがでなくなる造り。

 名前通り、smcじゃないのも目視確認できます。例の薄い緑と水色が入ってる反射光じゃなく、紫色の反射があります。

 1000円のジャンク品だからレンズキャップついてなかったんですが、Φ58mmという、PENTAXだと珍しいってほどじゃないけど多くはないサイズ。つまりPENTAXIANの私の手元には転がってない……と思ったけどなんかあるな。あれ?
 フードも、この頃のものだと専用バヨネットフードはありません。何かつけるとしたらねじ込みになりますが、前玉が前面58mm鏡筒にいっぱいの大きさなので、下手なものつけると確実にケラレますね。うーむ。

実写

 今回ほとんど全部、カスタムイメージはGoldです。
 私がたいへん気に入っているのと、先述のとおりオールドレンズを美味しくするものだと思ってるので、「古い廉価版標準ズーム」なんて粗がある写りしそうなレンズにこそ使いたい。

28mm F4 1/90s ISO100

 Goldいいよねほんと。一発でエモくなる。
 ただ、一見レトロ調の写りだけど、画面中の明暗差が大きいシーンでこそ映えるので、曇りの日は意外に似合わなかったな。晴れてる日に建物の多いところとか、窓があるところの室内とかがいい。

28mm F4.5 1/90s ISO100

 広角側だと周辺にいくほど解像度は落ちちゃう感じかな。まあ古いので仕方ない。

63mm F6.7 1/180s ISO100

 ズーム中域だと歪曲収差が消えて見栄えがいい。

28mm F4 1/90s ISO100

 広角端はかなり樽型に歪曲。ただ時代的に非球面レンズとかもないので、曲がり方はごく素直な樽型。よって手動補正しました。

28mm F6.7 1/125s ISO100

 奈良町からくりおもちゃ館にて。明治時代の建物を改装。壁とかは新しくしてるけど梁や柱は当時物。いい……。

 中の展示も面白い。
 漆塗りの刀の鞘を所定の位置に置くと、反射でこのひん曲がった画がきれいに映り込んで見える、というトリックアートなんだけど、鞘だから円柱じゃなくて楕円柱でしょ。コンピュータもない時代にどうやって描いたんだ。
 他にも子供向けのおもちゃが多数あって、江戸時代の文献から奈良大学の教授が復元したらしいんだけど、モーターもない時代によく思いつくなあ、というシンプルかつ見事なメカニズムのものがあって面白い。

80mm F4.5 1/125s ISO100

 テレ端開放。このレンズはかなり後ボケが荒っぽい感じ。
 がまぐち雑貨工房janjiさんの店先の猫像。ただしお店にいたのは犬だった。でも猫柄のがまぐちは売ってた。
 おまめさんという小さながま口が、K-1系のバッテリーが実にぴったり収まったので喜んで購入。端子むき出しで運びたくないしね。

28mm F6.7 1/180s ISO100

 元興寺の小塔院跡、お堂がボロボロ。うーむ。

28mm F3.5 1/30s ISO100

 上にあがると、もう少し人の手が入った感じ。
 今でも真言律宗の寺院らしい。このお堂も、どうも1707年に建てられたものらしいんだけど、障子戸も破れている。
 広大な敷地に墓地を確保して檀家を集め、幼稚園やら駐車場やら経営してうまく稼ぐお寺もあるけれど、ここはそんな小器用なところではなかったのかな。

80mm F4.5 1/60s ISO200

 それでもささやかに参拝者を迎える。

80mm F4.5 1/180s ISO100

 聖光寺というお寺の門前を守っていたわんこ。

80mm F4.5 1/60s ISO100
80mmマクロ F4.5 1/125s ISO100

 突然足元から何かでっかいのが飛び上がったと思えば、ツマグロヒョウモンが交尾中だった。邪魔したな。

28mm F4.5 1/90s ISO100

 奈良町にぎわいの家。これもしれっと有形文化財だけど、このあたりは歩いてたら商店や、下手すりゃ民家が文化財。
 この入り口が櫓門というか、左右が小部屋で二階が繋がってる。母屋からも独立した造り(向かって右側は母屋と繋がってるんだけど、間が玄関になってて動線が切れてる)。
 櫓門?部分は「みせのま」とあって、店舗だったわけかな。それにしちゃ狭いようにも見えるが。

28mm F3.5 1/20s ISO400

 で、二階建てなんだけど、土間の上はこんなに高い吹き抜けで、その先には天窓。梁がいっぱい。
 かなり変わった作りしてるなあ。

80mm F4.5 1/60s ISO100

 ちょっと寄り道して鹿。

まとめ

 画質的な弱点は、広角側での樽型歪曲と周辺が少し甘いとこ、それから後ボケの荒っぽさ(汚いとかいうより荒いとかガサツとかそんな感じする。私用語なので意味わからんと思いますが)くらいか。
 寄れないという運用上の難点も巨大ですけれど。
 コーティングが弱いからには逆光に弱いとかもありそうですが、真っ昼間すぎる時間帯に使ったから気になるシーンがなかったな。

 寄れないとはいえ、画質的には近接が弱いとか遠景が弱いとかも感じない。それなりに写る。
 解像力はまあ今どきのデジカメにはちょっと柔らかいくらいになるけど、ファインシャープネスかけたらしゃきっとする程度。
 周辺光量落ちは全然ない。ズーム全域で開放から十分ある感じ。前玉がでかいだけはあるな。(ただ、Gold映えするのは周辺光量落ちるやつだと思うので、今回は落ちてくれる方がよかったな)
 あと、PENTAXは現行レンズでも出るのが多い、明暗差がきついところのパープルフリンジも、このレンズは結構抑えられてますね。

 ということで、K-1で使っても使い物になる程度に写るレンズでした。
 1989年発売の廉価標準ズームが。

 ただまあ、Goldに似合いそうなレンズがほしい、というテーマがありきだった。
 F 28-80mmは、現時点での私の感覚では、あんまりGold向きってわけじゃなさそう。周辺光量がしっかりありすぎるかな。広角端だけでも落ちてくれていれば……。

COSINA 20mmF3.8 - F4 1/1500s ISO100

 COSINAレンズは19-35mmもいいんですけど、20mmF3.8もいい。

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