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期待の過剰(FinePix F80EXR)

 先日リサイクルショップで見つけたFinePix F30は、時代を超越したような高感度性能を見せてくれるデジカメで、こいつはすげえと思わせてくれる一台でした。

 そうすると、これより世代が後のFinePixも、思ってた以上の性能を秘めているのでは……? と気になってきて、手に入る機会を探してました。
 で、東大阪は荒本のあたりを歩いてたら偶然出くわしたリサイクルショップで、FinePix F80EXRを発見してきたんですよ。

スペックなど

 F30は2006年モデルで、センサーは1/1.7型600万画素スーパーCCDハニカムVI HRでした。レンズはライカ判換算36-108mmF2.8-5.0。
 F80EXRは2010年モデルで、センサーは1/2型1200万画素スーパーCCDハニカムEXR。レンズは27-270mmF3.3-5.6と大幅にレンジが広がりました。
 4年の月日、かなり進歩らしい進歩を見せてますね。
 特に画像処理系が大きく進化していて、F30の半年後に出るF31fdで初搭載される顔認識機能は、F80EXRでは個人認識もするし、犬や猫までOK。
 そしてxD Picture Cardはついに諦められ、SDカードになってます。

 でもって、第9世代にあたるスーパーCCDハニカムEXRは、カラーフィルターの配置を変更しつつ、同色の画素で感度を変えてダイナミックレンジを広げるような凝った処理を組み合わせるなどして、高解像度・広いダイナミックレンジ・高感度低ノイズの3モードを切り替えて撮影できると。
 F30の第六世代ハニカムセンサーはなかなか驚かせてくれる代物でしたが、このEXRセンサーはどうなるか。

夜の実写

27mm F3.3 1/26秒 ISO1600 -2EV

 さっそく夜に持ち出してみました。
 このカメラは夜撮りの性能を最大限引き出すなら、モードダイヤルをEXRに合わせて、EXRモードを「高感度低ノイズ優先」を選ぶことになるので、そのようにしてます。

 で、上のカット、なかなかよくまとまった写りはしてます。偽色で変な色にころんだりもせず、鮮やかにしっかり出てますしね。

 しかし等倍に拡大すると「ん?」という。こんなもん……?

FinePix F30 / F3.3 1/15s ISO1600

 これはFinePix F30で撮ったカット。

 そのピクセル等倍切り出し。
 うーん、まあ、F80EXRのほうが少し露出が明るいとはいえ、輝度ムラがだいぶ見えて写りは落ちてしまうな……。
 EXR高感度低ノイズモードだと600万画素になるので、F30のセンサー画素数600万画素と同じです。画素数多いからって言い訳もできない。

 うーん、まあ、CCDでありながら夜でもISO1600でまとまった画が出てくる、という意味ではF80EXRも十分頑張ってるんですが、比べるとF30が良すぎるな。
 F30の第六世代ハニカムセンサーが特にできが良かったのかな……?

昼は?

Pモード 換算76mm F5.2 1/150s ISO100

 もちろん昼でも無難に写ります。
 これはEXRモードではなく通常撮影のPモードです。EXRセンサーの動作モードは高解像度優先になるようです。それ以外だと600万画素になっちゃうしな。

 しかし、ISO100で撮れる光量でさえ、なんだかノイズっぽさを感じる。
 エッジもずいぶんざわついてる感じで、ハニカムセンサーは原理的に仕方ないとは思うんですが、EXRでカラーフィルタ配列を変えたせいで悪化してるかもしれない。

Pモード 換算270mm F5.6 1/480s ISO400

 テレ端。

 昼でも換算270mmもある超望遠だと感度が上がっちゃうんですが、ISO400だと結構頼りない感じのする写りに。う、うーん。これノイズリダクションとエッジ強調と色収差と暑さゆえの大気のゆらぎとがカオスを起こしてる上にハニカム特有のエッジのザラつきが乗っかってる感じ……。

EXRオート(ダイナミックレンジ優先)  204mm F5.5 1/189s ISO200

 EXRオートのダイナミックレンジ優先も見てみましょ。これも600万画素になります。
 こんなシーンで勝手に判断してDR優先にしてくれるのはインテリジェントではあります。ただEXRオートモードだと露出補正無効・フィルムシミュレーションもPROVIAかモノクロしか選べなくなる。なんで……?

 ダイナミックレンジ拡張は……まあ効いてるのかなあ。どうかな。一部白飛びは残ってます。

EXRオート(ダイナミックレンジ優先) 換算27mm F3.3 1/170s ISO200

 このシーンでDR優先。これはなかなか画面がまとまった感じ。

EXRオート(高解像度優先)  38mm F4.3 1/50s ISO400

 そろそろレンズの歪曲収差も補正してる時代かと思いきや、意外と広角端の樽型歪曲は残ってますね。しかしこのサイズの10倍ズームレンズを補正なしとも考えづらいし、完全には補正してないのかな。(完全にまっすぐになると逆に違和感を覚える、とかあったのかな?)

EXRオート(高感度低ノイズ優先) 129mm F5.5 1/110s ISO1600

 トラックの下に居た猫。うーん。やはりISO1600だとかなりモヤっとした画質になっちゃうな。こんなクソ暑い日にねこも日向には出たくないでしょうし。

まとめ

 FinePix F30は、2006年のカメラとしてはかなり高画質で、同世代を振り返っても、やっぱり頭一つ抜けてる印象でした。
 じゃあFinePixのスーパーCCDハニカムはそんなに良かったのか、と2010年のF80EXRに触れてみると、同世代機と比べて飛び抜けてるような印象はないかな。あんまり撮ってても、結果を見ても心が躍らないというか。
 2010年ってリコーCX3とか出てる時期で、CMOSセンサー機も初っ端の実験機みたいな時期は過ぎて、よく出来た機種が出てます。

 それと、F30は高級ラインでしたが、F80EXRは中級ラインで、上にF200EXRがいます。
 そういう格の差もあってか、F30は触ってる感じがしっかりしてますが、F80EXRはズームレバーとかの感触がちょい落ちる。
 レンズも10倍ズームになったとはいえ、虹彩絞りじゃなくNDフィルターだから、テレ端でボケを調節したりもできない。

 写りを見る感じ、2010年時点では、もう富士フイルム自慢のハニカムセンサーでも、CCDベースでは裏面照射型CMOSセンサーに敵わなくなっていた、というのも、ちょっと否定できないかなと。
 それほど製品に長期採用されていたわけでもなく、2009~10年の間だけ。

 EXRの技術ってカラーフィルターと画像処理によるものっぽいので、多分CCDでなくてもCMOSでもできちゃうことだったんでしょう。
 2011年にはEXR CMOSセンサーが登場し、さらに新たに仕掛けたXシリーズのヒットなどもあって、デジカメWatchのランキングでも上位に富士フイルム機が多数並ぶ盛り返しを見せてます。
  X100は普通のCMOSですけど、X10・X-S1・FinePix F600EXRなどEXR CMOSの機種が続々上位につけてるので、うまくいったんでしょう。

EXR CMOS採用機なら?

 EXR CMOSもいずれ機会があれば使ってみたくはありますが、この世代だと別にハニカムでなくても十二分によく写るんですよね。
 また、EXR CMOSで2/3型の大きめのセンサーは、X10・X-S1・XF1にしか採用されてない。X10やX-S1は、今でも実用性があるから状態が良ければ値段がつく機種でしょう。
 XF1は大センサーの極小ボディでカメラとしては魅力的ですが、めちゃくちゃ故障しやすい機種で。とても中古で買えない。

 FinePixシリーズとして出たEXR CMOS機は、全部1/2型です。
 以前は高級ラインだったF3桁系(F550EXR以降)は、1/2型センサーの高倍率ズーム機。つまりF80EXRみたいなポジションの中級機になってます。
 屈曲光学系で薄型コンパクトモデルのZシリーズ(Z900EXR以降)も同じセンサーになってるので、こっちのほうが魅力的かな。28-140mmと控えめのズーム比とはいえ、テレ端で20cmまで寄れるなかなかのテレマクロ能力があったりして。

 ということで、次に探すのはZ900EXRか後継機、としておきましょう。

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