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遊んで学ぶウイルスの怖さ

 「アウトブレイク(Outbreak)」という言葉を、映画やテレビなどで一度は耳にした事があるかと思う。
これは、「特定の区域や特定の集団において、通常予測される以上に感染症の症例数が増加した」が事を意味する言葉だ。
次に、「エピデミック(Epidemic)」という言葉がある。
こちらはあまり耳にしない言葉かもしれないが、これは「感染症が最初に急増したコミュニティよりも広い地域に拡大すること」を表す。
そして、不幸にもここ最近よく耳にしている「パンデミック(Pandemic)」という言葉がある。
これは、「エピデミックが国境を越えて広がり、複数の国や大陸に拡散・同時流行した状態」を表した言葉となる。
つまり、どこかで「アウトブレイク」が発生し、そこで食い止められなければ、「アウトブレイク」から「エピデミック」へ進み、さらに感染拡大を食い止める事が出来なくなった場合、「パンデミック」となって国境を超えて感染病が爆発的に広がってしまう。という流れとなる。

 今回の「新型コロナウイルス(COVID-19)」は言うまでもなく、中国湖北省の武漢が発祥の地だ。
その御本山の中国を除いて、最初に「アウトブレイク」が起こったのはイタリアだ。
イタリアのどこかで、ひっそりと「アウトブレイク」が起こり、その数が増え続けて「エピデミック」となり、その勢いは増し国境を超えてヨーロッパ各地で「パンデミック」が起こった。
最近は、インドを中心に「エピデミック」が起こり、「南西アジア」各地で「パンデミック」となり、瞬く間に感染拡大が今も広がり続けている。
しかし、理屈上だけで言えば、「アウトブレイク」の数を抑えれば「エピデミック」はもちろん、「パンデミック」にまで広がらない。
しかし、どこの国も様々な事情があり、医療体制は全ての国が万全とは言えないのは言うまでもない。
「マラリア」や「AIDS」に十分対処出来ていない国はまだ数多くある。
それどころか、飢えや貧困に苦しみ明日の光を浴びることさえもままならない子どもたちの国も多い。
実に残念な話だが、それが現実だ。
全ての国の医療体制は万全ではない。

 2020年1月23日、この時点で発祥の地とされる中国湖北省の武漢で「COVID-19」が「アウトブレイク」し「エピデミック」が発生し、街が封鎖された。
2020年1月29日には、イタリア国内で「COVID-19」の症例が初めて見つかり、その原因は2人の中国人観光客の感染が判明するや否や、即座に感染者の隔離を行った。
ところがイタリアは、3月11日には中国の次に多い感染者数となった。
2人の中国人観光客の感染が判明し即座に隔離を行った翌、1月30日に中国からのフライトの乗り入れ中止し、半年間の緊急事態宣言を発令したにも関わらずだ。
イタリア国内初の感染者が発見されたわずか20日後に、イタリアは約1万2千人の感染者を確認し、約800名の犠牲者、ICUの患者数は約1,000名にまで急激に加速し「エピデミック」を超えて「パンデミック」となり、ヨーロッパ各国へ感染が拡大した。
最近の研究の発表では、イタリアは既に1月初頭にはアウトブレイク(集団感染)が始まっていたとされている。
原因は、「無症状患者」という存在があることがまだ判らなかった為だ。
まだ、「COVID-19」について初期段階であったことから、「飛沫感染」「無症状患者の存在」「マスクの有用性」等の「COVID-19」の特徴が明らかになっていなかった。
元々、イタリアの政策で医療縮小を行っていたタイミングで、「COVID-19」の登場というのは、いたし方ないというか不運としか言い表しようがない。

 全世界が「パンデミック」となり、「COVID-19」の研究が世界中で始まり、ようやく全体像が掴め、有用な予防対策が判明し、各製薬会社が初期型とはいえワクチンを完成させたが、主なもので「モデルナ社(米国)」「アストロゼネカ社(英国)」「ファイザー社(米国)」「ノババックス社(米国)」「ジョンソン&ジョンソン社(米国)」「サノフィ社(仏国)」の6種類もある。
各社によって保管条件も異なり、接種条件も異なる。
もちろん、副作用についても異なり、有効性についても異なる。
ワクチン接種後、副作用で人が亡くなっても、ワクチンを接種したにも関わらず感染しても、「どのワクチンが結局ベストなのか?」と世界中のありとあらゆるジャーナリストが聞いても、各社は全て口を揃えて「自社のワクチンだ」と言う。
つまり、この事で私達人類が「新型コロナウイルス」に、打ち勝つ為の最低条件の1つとなる「情報の共有」が十分に行われていない事が証明された。
利害を捨て、こんなに多くの人命と、世界経済のダメージを最小限に抑える為にも、個々の利害を捨て「情報の共有」が必須である事がまだ理解されていないようだ。
一切の囲い込みをせず、普及に努めたVHSは見事に世界中へ広がったというのにも関わらず・・・。
とはいえ、ワクチンの開発に成功したという少し明るい兆しが見えたこのタイミングで、イギリス型(B.1.1.7)、南アフリカ型(B.1.351)、ブラジル型(P1)、フィリピン型(P3)、インド型(B.1.617)と5種類の変異株が次々と現れた。
まるで、ウイルスはこんな状況下でも「個々の利害」を最優先させている愚かな我々人間をあざ笑うかのごとく、絶妙なタイミングで世界各地で変異を遂げた。

 私の住む大阪も、バブル期の負の遺産で1,000億を超える赤字財政を抱え、府の借金は約6兆円、市の借金は約5兆円だった。
2008年頃の大阪市は、「このままでは平成27年に財政破綻する」と発表される程の財政赤字の為から、大幅にコストカットを行いその中で当時、過剰だった医療費用の削減・縮小を行った。
しかし、そのタイミングで先述のイタリアと同様に「新型コロナウイルス」の感染拡大が世界自由で広がり始めた。
大阪維新の会の改革で、劇的に財政状態は回復したがこちらも実にタイミングが悪いとしか言いようが無い。
2021年5月11日現在の大阪府では、救急車のサイレンが鳴り響いても、受け入れる病院を探すために1時間程停車している光景は珍しいことではなくなった。
空きベッドはあるが看護師の数が足りず現在のペースでは受け入れが難しく「ICU」を閉鎖しなければならない、所謂「医療崩壊」の状態になっている。
大阪は、「アウトブレイク」から「エピデミック」へ移行状態となっているのは第三者目線から見てもよく判る。
もはや、対岸の火事ではなくなってきている。
そして、この「医療崩壊」によって私達は、コロナに限らず「病気や怪我が絶対に出来ない状態」と言っていいだろう。
実際に、てんかん発作を起こした子供の受け入れ拒否され数時間も受け入れ先を待った話を耳にすると、今まで感じたことのない恐怖感が体を走った。

 インドの絶望的な「エピデミック」状態と、脳天気な日本の「オリンピック開催にむけて」のニュースを見ていている時、息子や娘から、「どうしてこんなに広まったのか?」「ワクチンが出来たから、大丈夫じゃないの?」と色々と聞かれる機会があった。
しかしながら、様々な本や雑誌の記事を読んでいても、医療関係者の直の声を数多く聞く機会に恵まれていても、大人の私でもうまく子どもたちの質問に説明することが出来ず、残念ながら悪い方向に変化し続ける感染状況の中において、子供達の純粋な質問の返答に困る事が多い。

ゴールデンウイークには、新しいゴジラの映画を観に行ったり、テーマパークに行ったりと少し淡い期待を持っていたが、予想通り、2021年4月25日から3回目の「緊急事態宣言」が発令され、ゴールデンウイークは昨年と同様に、家の中で過ごさなくてはならなくなった。
家族でテレビゲームをするのも良いが、今回は家族であえてアナログな「ボードゲーム」で楽しく過ごす光景を想像してみた。
その昔、「人生ゲーム」で友人たちと盛り上がった事を思い出し、インターネットで「ボードゲーム オススメ」で検索をしてみた際に、一つの衝撃的でとても興味深い「ある種の教材」になる「ボードゲーム」を見つけ、早速購入して家族全員で実践してみることにした。

それは、「パンデミック: 新たなる試練」というボードゲームだ。

 ​これは、2009年に発売されたものでありながら、まさに現在のコロナ禍をなぞり描くような内容だった。
ゲーム内容は、世界に4種類のウイルスの感染が進行している所から始まる。
プレイヤーは、2名~4名となり6種類の職業を担当し、自身の職業の特性を活かし4種類のウイルスの感染拡大防ぎつつ、それぞれの計4種類のワクチンを作って世界を守るというルール。
このゲームの変わっている点は、「プレイヤー全員が勝つ」か「プレイヤー全員が負ける」かの2つしかないことだ。
即ち、「人類が勝つ」か「ウイルスが勝つ」かの、どちらかしかない。
プレイヤー全員が一致団結し、自身の手札とボード上の世界地図に広まっている「ウイルスの感染状況」を見て、全員で考えてあたかも本当に世界を救う重要な会議の如く知恵を振り絞り、そして運に身を任せつつ、刻々と感染状況が変化する状況を試行錯誤の中で意見を出し合って、「人類がウイルスに打ち勝つ」というゲームだ。
「ワクチンを開発し、最も利益を得たものが勝者」というゲームではない。
プレイヤー全員が一致団結してウイルスに戦いを挑むのが、このゲームの優れている点の一つだ。

 一番楽しいプレイ人数は最大数の4人だが、2人からでもプレイは可能となっている。
2人だけよりも、3人。
3人よりも4人の方が様々な意見が出て面白い。
このゲームを通して、ウイルス研究者や、科学者、自衛隊(軍隊)等、様々な「医療従事者」の大切さと、何よりも「ウイルスが瞬く間に感染していく怖さ」が遊びながら学べるのも優れた点の一つだ。
そして何よりも、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「緊急提言 パンデミック: 寄稿とインタビュー」に記載されていた、「この危機を乗り越える最も重要な事」をゲーム上で実体験出来る。
それは「グローバルな団結」と「情報の共有」だ。
 我が家では、小学校2年生の娘と6年生の息子と妻と私の4人で、このゴールデンウイークに「一番簡単な入門レベル」で10回程挑戦したが、「1回」しかウイルスに勝利することが出来なかった。
世界を吸うくべく、個人の利害など考えず、情報を共有しそれぞれの医療従事者としての職務を加味しても、たった1回しか勝つことが出来なかった。
では、現実はもっと複雑で、約78億人と言われている世界人口で、それぞれの地位と利害を考えず、私達人類は本当に一致団結し変異株の登場も含めて「新型コロナウイルス」に「打ち勝つことは出来るのだろうか?」

 このゲームをプレイした、私の子供達はテレビの向こうで世界中で感染拡大を続ける「新型コロナウイルス」の感染する理由とその怖さ(対処の難しさ)を学んだと言っていた。
同時に「オリンピックの話なんて本当にどうでも良い」とも言うようになったし、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘の映像を見て、「そんな事をしている場合じゃないのに」とこぼすようになった。
当然、私達夫婦も本や記事、医療関係者の直接の声だけでは学べない事を数多く学ぶことが出来た。

 もちろん「ゲーム」とし十分に面白いが、「新型コロナウイルス」の驚異を知る「一つの教材」としての側面に目を向けて何度もプレイし、「現実」との差異についてコーヒーでも飲みながら語り合ってみられるのも、有益な「お家時間」の過ごし方の一つだと考える。
遊び飽きたら、拡張セットを購入すればさらに複雑に奥深く楽しめるそうだ。
想像よりも、どんな本よりも、「感染拡大」の怖さを身を持って学べ、カップルでも、お子様のいるご家庭でも、人を選ばず強くお勧め出来る。
もし興味があれば、「パンデミック: 新たなる試練」をプレイして頂きたい。

率直に申し上げます。 もし、お金に余力がございましたら、遠慮なくこちらまで・・・。 ありがたく、キチンと無駄なく活動費に使わせて頂きます。 一つよしなに。