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コロナウイルスで都市の高密化は止まるのか

ここ数週間、コロナウイルスの世界的な拡大により、世界中の多くの都市が"ロックダウン"なるなどの事態に発展しています。
私が住んでいるメルボルンもその一つの都市。買い物等、生活な必要不可欠な外出以外は禁止され、州を離れる外出は禁止されています。

そして、外出が禁止されていない国々でも、人の密度の高い場所に行くことを避けるべきなどの勧告が出ています。

都市とは、人が集まり、発展する場所。

都市計画の分野では、それが当たり前だと考えられてきました。
しかし、今回のコロナウイルスの世界的な感染拡大により、その考え方にも変化が生まれるかもしれません。今回は、コロナウイルスの拡大について、都市計画という観点から少し考えてみたいと思います。

都市と密集性の密接な関係

都市とは人が密集する場所であり、その密集性により人の文化は発展してきました。
人が集まることにより、経済的な活動がより効率的になってきました。
説明の必要もないと思いますが、
人里離れた山奥の小さな村で生活するよりも、スーパーもコンビニも会社も何もかも近くにある都市の方が生活の利便性が高い。
その利便性は、人が集まっているからこそ成り立っている。
人が密集していなければコンビニをたくさん建てても潰れてしまう。

そして、ジェイン・ジェイコブズは人が集まり活動をすることこそが都市を形作っていると述べました。
つまりは、人が集まり、様々なやり取りをする事こそが、都市の文化を作り上げているということです。

渋谷を思い浮かべてください。
最初に思い浮かぶものはなんでしょうか。

スクランブル交差点を歩く大量の若者、ハチ公の銅像で人を待っている大量の人、109に入っていく女子高生
そんなところじゃないでしょうか。
街・文化・経済は人が集まることによって形作られています。

渋谷スクランブル交差点

密集性と疫病と都市計画

一方、都市の密集性は公害や疫病等の問題を昔から引き起こしてきました。
そして、その問題に対して都市計画は都市の密集性を何度も考え直してきました。

14~15世紀のヨーロッパでは人が都市に密集したことから衛生環境が悪くなり、ペストが大流行しました。パリではこれを受け、下水道を作られました。
19世紀にコレラが流行した際には、ロンドンでも下水道が作られています。
その後も、エベネザ・ハワードによるガーデン・シティの提案、グリーンベルトの提案など、人口の都市への過度な集中による問題が出てくると、都市への人口の集中を緩和するための都市計画が再考されてきました。

シャレド・ダイアモンド氏の「銃・病原菌・鉄」は
文明がどのように発展し、どのように衰退するのかを追う本であり、
その結論は以下のものだったように記憶しております

資源がある場所に人が集まり文明を作り、
人が集まりすぎて資源が足りなくなると、
集団は小集団になりまた資源のキャパシティに合うサイズになる。
文明は衰退しているように見えるが、小集団が文明を継承し続けている。

現代の文明も、この文明の隆興と衰退の大きな流れに逆らうことはできず、都市は今後縮小していくのではないかと思います。

既にこれまで幾度となく環境問題に関する議論、それに伴う都市の縮小について議論がなされてきましたが、
2020年はもう一度真剣に、都市の縮小を再考する局面に来ています。
日本では、高齢化による人口減少が目の前に来ており、都市縮小が現実のものになってきましたし、そしてリモートワークが可能になったように、都市縮小に向けての変革が可能な技術力を現代の人は持ち始めました。
これはちょうど疫病発生から下水道ができるまでの流れに非常に似ているように思います。

このウイルスの感染が落ち着いた後には、
またいつもみたいに満員電車に乗って会社に行き、帰りにスーパーに寄って帰る、という生活ではなくなると思います。

人が顔を合わせてやるべきこととリモートでもできることのバランスが大きく変わり、人の都市の使い方も変化するでしょう。
今後、都市計画がこれまで進めて来ようとした都市縮小の流れが現実に進めやすくなるはずです。

都市に人は集まるのか

とはいえ、人は集まることで発展をしてきました。
おそらくコロナウイルスが終息しても人は集まることをやめないでしょう。

人はディズニーランドに行って
ただアトラクションを楽しんでいるわけではなく、たくさんの人がはしゃいでいるお祭りのような雰囲気の中に入ることも含めて楽しんでいるわけですし、

私がお酒を飲みにいくのは
ただただお酒が好きだというよりは、他の人との会話や少し賑やかなお店の雰囲気を楽しんでいるように思います。

今後も人は都市に集まり続けると思います。
ただ、人が集まる場所はコロナの危機以前に比べて取捨選択され、少なくなるでしょう。

飲食店やアミューズメント施設は残る一方で、
オフィスやスーパー、図書館は減っていくのではないかな、と思います。

そして、住居の近くには、シェアオフィスやスタディスペースが増えていくのではないでしょうか。
これは私の一つの仮定ですので、実際にどうなるかは分かりませんが、
今後どんな風に社会が変わるのか、よく観察していきたいと思います。
きっと日本と、世界とで違いが出てきますね。
まだまだ人口が増加しているオーストラリアの都市がどうなっていくのかについても今後、気づきがあれば書いていきたいと思います。

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