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「慣れ」に伴う「飽き」で、私達はほら、歩いてく。

 "fast pace"-seventeen-

  

 君のことを、親友、と紹介してもいいでしょうか。もう、そんな紹介ではダメでしょうか。訊きたいことは沢山あるけれど、訊けるときはもう、ないのかもしれません。

 

 変わってほしくなかった人ほど変わっていって、変わりたくなかった関係ほど取り戻せない。それが事実なのか、それとも変わってしまったからこそそう思うのか、どちらなのかは実際よく分からないけれど。

 取り返しのつかなくなった約束が、いくつもある。そのときは、永遠だと信じて疑ってもいなかったのに、変わってしまったものがいくつもある。

 変わってほしくなんかなかった。だから。理由は知らないということにしておきたい。

 理由は分からないけれど、私達変わってしまったんだ、と。

 

 変わってしまったことを知ってもなお、変わったね、と言わずにはいれない。手なんか、離せないんだよ。もう、体温も届いていないのに、私は未だに離れることができないでいる。戻って来てくれることはないって、そんなことは知っているのに。変わらないでいれるとばかり思っていたから。

 一瞬だけ君が振り返った気がして、私はまた目で追いかけてしまう。なにも気にしなくていいとしたならば、やっぱり振り返ってほしいから。戻れるならば、また君と、って。そんなことできないと知っているということと、手を離せるということは違うから。

 引き留められるなんて思いあがってはいない。そんなこと欠片も思っていないよ。だけど、引き留めることが出来ればいいのにとは、やっぱり思っているんだよ。

 変わってほしくないと思っていた。当たり前のように。変わるはずなんかないと思っていたんだ。なんの疑いもなく。それは「慣れ」だったんだろうか。私達は、それに「飽き」てしまったんだろうか。

 後戻りなんて、できないみたいだね。手を離せないのは形だけで、本当はもう、「私達」はどこにもいないのかもしれない。

 君が歩くのが早すぎるんだよ。そう言っていた私がいた。考えてみれば。どこからとか、いつからとか。そんな明確なものはなかったのかもしれない。今更君に似せて「早歩き」をしても、もうどうにもならないんだろう。どうやら、離れていく、それだけが確かなことみたいだから。

 

 まだ形だけは繋がっていると、そう思ってもいいだろうか。ぬくもりなんてあるわけはないのだけれど。もう、離すべきなのかもしれない、そう笑う私がいるのだけれど。君は何と言うのだろうか。

 君と話していても、楽しくないんだ。認めたくなんかない、認めることなんてできないと思っていたのに。いつからそうだったんだろう。「ずっと」、をなんの疑いもなく信じていたはずなのに。

 君と重ねた時間は、あれはいったい何だったんだろう。信頼は、時間に比例しているはずだったのに。君とならなにも持っていなくても共に居られたはずなのに。そんなことばかり考えて、手を離すことをもったいないと思ってしまうのは、それは余りにも他人事に聞こえるだろうか。

 私達は進んでいく。時間に逆らえず、淡々と。進むほかない、と言った方が正しいのかもしれない。君の後ろ姿だけが見えるんだ。きっと君にも同じように。もう、どうしようもないんだろう、ってそんなことにだけ詳しくなってしまったよ。

 

 いったいどうしたらよかったんだろう。

 君と私。

 行ってしまうみたいだね。

 このまま私達。

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