2020年の十大縄文ニュース!
1.コロナで各地の企画展が中止・延期・変更を余儀なくされる。
影響がないわけがない。3月から5月までの企画展は軒並み中止、延期されたものも内容を大きく変更することとなる。縄文ファンとしても大変落胆したわけだけど、ずいぶん前から企画展の準備をされていた学芸員さんや館の職員のみなさんのやるせなさは相当だっただろう。
中でも個人的にショックだったのは、会期中にトークイベントで登壇する予定だった秋田県立博物館の企画展「江戸と縄文」の中止はがっくりときた。常々、縄文文化と江戸文化は日本の歴史の中でも庶民文化が花開いた時期だと主張してきたわけだから、まさに我意を得たりの企画展だったのだ。
そしてまだコロナは終わっていない。
2.前田遺跡速報展
2020年の縄文展の皮切りとして福島県、前田遺跡の速報展がMVP級のインパクトを残す。山間の決して大きくない遺跡範囲の遺跡から大量の縄文時代の漆器が出土したのだ。発掘は続きいまだに資料は整理されていない状態での展示は、2018年のトーハクでの縄文展に匹敵するほどの混雑となる(1月です)。実は僕は行けていない。今でも後悔している。
11月にも第二弾の展示と現地説明会が開催されこちらも大盛況となった。新たに多くの人骨と、木柱根(柱の根っこ部分)が出土、かわいいハート型土偶も出土している。
3.釈迦堂遺跡博物館リニューアル開館
リニューアル開館が続く。まずはしばらく改装のためにお休みしていた 6・21に山梨県の釈迦堂遺跡博物館がリニューアルオープン。新たな展示室は3倍土偶と土器が見やすくなって5倍キラキラしています(体感値)。釈迦堂はとにかくたくさんの土偶が出土したことで有名な遺跡だけど、釈迦堂から出土の1116体の土偶(破片が多いけど)は全て展示され見ることができる。あらためて一つ一つの顔を眺めていると、おんなじだと思っていた中部高地の顔付きも結構個性があるなと思ったり。
4.十日町市博物館リニューアル開館
国宝の火焔型土器たちを擁する十日町市博物館も新たに生まれ変わって6月にオープンした。半年ぶりの開館となる。新しくなった博物館は、雪が積もったら見えなくなるんじゃないかと思うくらい真っ白で、よく見るとそこかしこに火炎型の意匠が施されている。旧建物の時に何度も訪れていて、新しくなったといってもそれほど展示されているものは変わらないけど、照明や壁の色が変わるだけでなんとなく新鮮。
新しい建物では企画展もやりやすくなったとのことで、これからも楽しみです。
5.ウポポイ開館
縄文ではないけれど、7月に開館した北海道、白老のウポポイの開館も大きなトピックだと思う。実際に見学して感じたのは、博物館の展示はもちろん興味深く、アイヌの美しい工芸品の展示は美術館と言いたくなるくらい。立派な箱物があれば、手作りのプログラム、歌と踊りの体験ホールでの公演はエネルギッシュで、伝統と鎮魂と未来を見据えた施設だと思った。これからもっともっと能動的に変化していけばいいな、とも思った。
しかし、ウポポイはさまざまな批判にさらされている。アイヌからはもっともっと歴史を正確に伝えてほしいなど展示の内容や仕方についての真っ当な批判。しかし、問題は一部のどうかしている人たちのいわれのないヘイトだ。「ネトウヨ」という連中自身が内在化している差別意識が、悪意のあるデマに短絡的に踊らされ、ほとんど何も考えずにウポポイを批判している。北海道新聞にも、「ウポポイ批判、根拠なきは認められぬ」と「ネトウヨ」連中に対する批判の社説が掲載された。記事は非常に強い言葉で批判している。けれど、これって正直言って、日本全体の問題なんだと思う。
6.千葉の縄文展がすごかった件
なにしろ今年の縄文の企画展は千葉が充実していた。千葉中央博物館の「千葉の縄文展」に佐倉の縄文、柏の縄文、加曽利貝塚のあれもEこれもE、船橋の縄文早期展、どの展示も「最高!」(未見のものもある)だったけど、特に千葉の縄文展は今まで図録でしか見たことがなかったものや、えっこれも千葉だったんだというものまで、本当に充実していた。今年は千葉が本気を出してきた!
7.栃木の企画展がすごかった件
千葉もすごければ今年は栃木も負けずにすごかった。栃木県博の「土偶とハニワ」展に那珂川流域の縄文文化展、なすの縄文遺跡展、縄文クロスロード・槻沢展、などなど企画展の数も多かったけれど、今年見た土器の数だけで言えば、栃木が一番多かったかもしれない。
実は栃木と千葉だけではなく、今年は北関東の縄文展が充実していた。群馬の縄文展はもう一度見に行きたいくらい面白かったし、埼玉の蓮田の縄文展に、茨城の縄文ピリオド展、本当にたくさんのご当地の土器を堪能した。
8.弥生の展示が各地で盛り上がった
実は弥生の展示も多かったように思える。、西日本だけでなく、群馬や北陸、長野県でも。僕自身は愛知陶磁美術館のYAYOI展にしか行っていないけれど朝日貝塚の展示館がオープンしたのもまたその盛り上がりに一役買っていただろう。
もちろん縄文派で、弥生の全部は好きになれないけど、常に気になる存在であるYAYOIとは、これからも仲良くケンカしていきたい。
9.にわかに石棒イベントが!
今年は石棒のイベントが多かった。と言っても中心は飛騨宮川(石棒クラブ)と長野の佐久市(浅間縄文ミュージアム)。コロナ禍での飛騨宮川の石棒オンラインイベントやSNSでの「#石棒拝見」石棒フォトコンテストを皮切りに、浅間縄文ミュージアムでは実際に石棒展(石棒 縄文のシンボルプレイ)、多種多様な形で石棒イベントが開催された。
実は縄文ZINEでもいくつかのイベントに協力をしていたわけだけど、こういう機会で土器や土偶だけじゃなく石棒にも興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいし、きっと増えたのではと思う。
10.世界遺産の準備が着々と進む。北海道北東北の縄文遺跡群
北海道北東北の縄文遺跡群は2021年に世界遺産に登録される予定です。コロナ禍でスケジュール通りに進むか危ぶまれたユネスコの諮問機関であるイコモスの視察が9月に行われた。認定されるとすれば2021年の夏には決定の報を聞くことになるが、その頃の状況次第ではまったく予断を許さないだろう。
何はともあれ着々と進んでいます。
まとめ
勝手に10選んでしまったのは申し訳ないくらい、他にも多くの重要なニュースがあった。
オープン関連では、はだの歴史博物館のリニューアルオープン。本庄早稲田の博物館のオープン、三鷹のみたかえるという展示室のオープン。展示では岩宿博物館での「群馬の縄文」展や、函館市博物館の「津軽海峡北岸の縄文遺跡」展はエポックな展示だったと思う。
前田遺跡以外にも多くの発掘成果が上がっている。真福寺貝塚のミミズク土偶、土橋遺跡のハート形土偶はニュースにもなっていた。
良いことだけではなく、あまりにも突然の訃報もあった。
大きなこと、小さな出来事が積み重なり一年という時間が過ぎた。来年はどんな一年になるかは誰にも分からないけれど、引き続き、自分なりに縄文時代という時代を楽しめたらと思う。
縄文ZINEの今年のニュースはまた別の記事で!