見出し画像

ヤフオクの偽土偶に引っかからないために。

以前から、SNSではいくつかのアカウントから「問題あるよね」と指摘されていたヤフオクなどのオークションサイトに出品されている「偽土偶」。あらためてここで言うことでは無いかもしれないが、やはり言っておこうと思う。
なぜなら、僕自身、縄文時代のことが好きになり始めた10年くらい前、ヤフオクに出品されていた土偶(偽土偶)を見て、えっ売ってるじゃん!と、入札しようかどうか迷ったことがあるからだ(ホントを言えば好奇心で入札したことあります。…あっという間に落札価格が上がってしまい、諦めたわけですが…)。
今は、誰がこんなの買うんだ、と冷ややかに見ていますが、ただ冷ややかに見ているだけでは、せっかく縄文時代の何かしらに面白味を感じた人たちが、こういった詐欺まがいにひっかかり、払わなくて良い授業料を払って、嫌な気持ちになってしまうのはなんだか申し訳ない、と今回思い直したのです。

最近ではそれほど入札もなさそうですが、以前は結構高値が付くこともあったと思います。

悪質な偽土偶

まず悪質なのは、現代の作品を「出土品」です。と言ってしまっていることです。
「出土品です」という嘘はだいたい「出品委託者からの依頼」という責任逃れと、ノークレームノーリターン、真贋については自己責任との一文で二重に責任を負わない宣言をしています。
またわざわざ一部を欠けさせたり、経年感が出るように土に埋めて汚したり、割った上に繋ぎわせたり、現代の作品に迫真の演技をさせています。
まあ、そんなことをしなくても、縄文好きになりたての人にとっては、「出土品です」と言われたら素直に信じてしまう可能性は割とあると思っています。

スクリーンショット 2021-09-08 20.36.51


以下に上げる偽土偶たちは10年くらい前(多分)からオークションに出品されていて、非常に悪質だと思いますので、画像を加工してここに晒させていただきます。何年か前にウォッチした時はこんな土偶にナン万円の金額が付いていたりして、かなりいい商売になっていたのではないでしょうか。その上、このタイプの土偶を(多分ですが)騙されて購入してしまった人が、ヤフオクに再度出品するという負の連鎖まで作られていそうな感じもあり、さらに良くない。
しかし、誰が作っているのかわかりませんが、製作者のクセが強すぎて、同一人物(現代人)の作品だなと並べてみるとすぐにわかってしまいます。

gスクリーンショット 2021-09-08 20.34.31

gスクリーンショット 2021-09-08 20.36.00

偽物の土偶の見分け方

ヤフオクに出ている土偶はまず偽物と考えて良いでしょう。
簡単に言えば、破片ならまだしもヤフオクに本物の完形の土偶が出てくることはまずありません。そのようなものがあれば、まず偽物だと疑うべきです。そもそも土偶自体の「出土」はそれほど多くなく、その中でも完形のもの自体(ほとんどが欠片)少ないのが土偶です。だから、土偶とは欠片であってもめちゃくちゃ貴重なもので、市場に、それもヤフオクに出てくることなんてまずないわけです。もし市場に流れたとしても、ほとんどの場合はきちんと実物を見れる美術品や骨董品を扱うプロ向けのオークションに流れるか、直接取引なのではないでしょうか。
と言っても「ゴマキの例」もあったわけですから、「もしかしたら」に賭けたい気持ちもわかります。が、まず本物は出てこないことを大前提にしてウォッチしてみてください。

gスクリーンショット 2021-09-08 20.35.03


気をつけなければならないのは、その資料のプロフィールです。最近発掘されたものの場合、それらが自分の所有している土地からの出土だったとしても、埋蔵文化財は出土地の都道府県に帰属することになります。だから、文化財保護法の下では新たに発掘された埋蔵文化財は所有することはできません。なので、もしそんなものが出てきたら、そもそも違法な取引になります。
もし市場に完形の土偶が出てきたら、明治や昭和20年代頃までに発掘された個人蔵のものや誰かのコレクションだったものがほとんどだと考えられます。
だったととしても、その土偶が優品であればあるほど誰も見たことがないものなどほとんど存在しないはずです。当然出品者はその資料の値段を上げるために、そのプロフィールを充実させているはずです。誰かのコレクションであればその目録、文献などなど、本物であればあるほど、野面での、手ぶらでの出品はないはずです。
その上で実際に博物館や考古館に行って本物の土器や土偶をたくさん見ることもお勧めします(もしかしたらより混乱するかもしれないけど)。それら本物を見て、土偶や土器をある程度勉強すると、例えば出品されたものの矛盾点(この時代のこの時期はこういうタイプの土偶は出てこないはず)などが見えてくるかもしれません。

と言っても、以前、2018年(トーハクで縄文展が開催された年)にダイアプレスという出版社から出された『いま甦る縄文』というちょっと質の悪いムック本にはヤフオクでよく見る「偽土偶」があたかも本物のように掲載されていたこともあり、困ってしまうのですが…。いったいなぜ…。

実は縄文時代の土器や土偶の真贋の鑑定は結構難しかったりします。たとえばもし、悪意を持った出品者が、きちんと学んで、時期と地域のデザインを反映して、かつその土地の土やその遺跡の作風なども加味されていて、肌の質感などを発掘品に近い状態にできれば、鑑定はかなり難しくなります。
炭素年代測定など科学的に年代を測定する方法もありますが、土器などであれば内側に炭化物(おこげ)などが付くことが多いので、それらから測定できるのですが、土偶にはおこげがつかないので、この方法も使えません。そもそも個人で炭素年代測定に出すことってできるのだろうか…。

鑑定が難しいからこそ学術的な発掘が重要で、遺跡にきちんと紐づいていない土器や土偶の価値ってたとえ本物だったとしても、すごく付けづらいものなんです。縄文時代の資料の魅力の大部分って縄文時代に作られたモノという情報が占めているわけなので。

自分の作品の魅力で勝負しろよ!

当たり前の話ですが、もし縄文時代をモチーフにした作品だったとして、それを販売することになんの問題もありません。縄文時代の土器や土偶に著作権はありませんので、レプリカを作ることになんの許可も必要ありません。レプリカだって立派な作品です。
たとえ縄文時代にインスピレーションを受けていたとして、それがオリジナルでもレプリカでも、作品に魅力があれば絶対に欲しい人はいるはずです。

問題なのは「出土品である」という嘘だけなのです。ぜひ嘘土偶の製作者の皆さんには自分の作品の魅力で勝負してみてください。そう、もうみんな引っかかりませんしね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?