ないものさがして、ないものねだる。⑧

流行り病が、我が家にもとうとう訪れた。
最初に息子が感染。
看病したわたしが感染。
そして、家族全員の感染。

最も恐れていた出来事が、起きた。

わたしも夫も家族も全員、強制的に立ち止まらされた。
自営業者である我が家は、3週間仕事ができず収入は激減。
外出はできない。横になって休むしかない。
今、できることをするしかない。

「ある」ものを探して、「ある」ものに頼って、「ある」ことに感謝する。
そんな療養期間を過ごした。

ないものを探して、ないものをねだって。
ないものを見つけて、ないものを追いかけて。
そうやって生きてきたんだよね。
ちゃんと「ある」よ。
見てごらん。
感じてごらん。

きっと、それを教えたくて立ち止まる時間をくれたのだと思う。
目には見えない、誰かが。

療養期間を終え、元通りの生活に戻ってもしばらく、倦怠感は続いた。
時間があれば横になり、ぼんやりとインターネットを眺める。
そこで、新しい世界があると知った。

「ある」に気づいたわたしは少しずつ、新しい世界の学びを始めた。
ここでもやっぱり、変わらない。
学んで、実践して、振り返って、改善点を探す。
そしてまた、実践する。

学びは、インプット。
実践は、アウトプット。

新しい学びを十分に蓄積したわたしに、その時は訪れた。
2023年1月のある日、自分の頭の中にとどめていた様々な思いを
ノートに書き始めたのだ。
書けば書くほど、頭は冴えていった。

滝のようにごうごうと音を立て、書きたいことが次から次へと出てくる。
手書きではそのスピードに追いつけなくなり、パソコン書きに変えた。

自分の中には、こんなにも「書きたい思いがある」のか。
出しつくしたと思っても、次に書きたい思いは出てくる。

なーんだ。
ずっと、わたしの中にあったんだね。

そうだよね、あるわけないよね。
だって、「ないない」って言いながら探していたのは、わたしの外側。
矢印の先が外側にあるから、「ない」んだよね。

矢印を自分の内側に向ける、新しい学び。
暗くて黒くて、汚いって思いこんでいた、自分の内側。
見るのは怖かったけれど、いろんなものがそこに「ある」。
ずっとずっと、わたしの中にあり続けていたんだね。

内側は最初、暗かった。
けれど、わたしは汚くはなかった。
汚いと思っていたものを一つずつ取り出して、その思いを感じて、
言葉というかたちを与えたら、とっても尊いものに生まれ変わった。

暗いと思い続けていたわたしの内側は、
少しずつ明るくなってきている。
明るくなると、そこにあるたくさんの思いが見えてくる。
どれもこれも、大切な思い。
みんなキラキラしていて、とってもきれい。

内側が明るくなって、
たくさんの思いが輝きだしたら、
ほんとうの願いもちゃんと見えた。

わたしに見つけてもらえる日を待っていたのは、
ほんとうの願いをぎゅっと抱きしめている、
わたしの奥底にいたほんとうのわたし。

見つからない?
ゆっくり探して、見つめてみよう。
時間はかかるかもしれないけれど…
ちゃんと、あるよ。
見つけてくれるのをずっと、待っているよ。


ないものさがして、ないものねだる。
これから先も、すると思う。

でも、今は「ある」ってわかっているから大丈夫。

「ないものさがしをしてるね。
 しても、いいよ。」
って、自分にやさしい声をかけてあげる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?