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それでも、凪いでいる。

凪ぐ。
「風がやむ(やんで、水面が静かになる)。」
出典/三省堂 新明解国語辞典第八刷 より

「凪」の漢字からイメージするものは人によって様々あるだろう。
わたしの頭に最初に浮かぶのは「技」である。
(最近、映画が公開されました)

凪ぐ。
と言えば水面の様子を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。

わたしが以前、2年間住んだ家の近くには有名な温泉街と湖があった。
一番深いところは、東京タワーがすっぽり入ってしまうほどで、
その深さゆえ冬でも凍ることのない湖であった。

周りを山々に囲まれているため、いつも風が吹いているような湖。
その水面がまるで鏡のようにぴたりと静止している様を、地域の人は
「今日はベタ凪(なぎ)だ」と言っていた。
怖くなるほど美しい風景は、ほどなく吹き始める風によっていとも簡単に
消え失せてしまう。
2年間のうち、ベタ凪の時にだけ見られる美しい水面を実際に目にした機会は、片手で足りるくらいの数だった。

凪ぐ。
心模様を表すときにこの言葉を使えば、
「穏やか」「落ち着いている」
という印象をもつのではないだろうか。

わたしの心は今、凪いでいる。
こんなにも世界は穏やかであたたかいのか。
と思えるようになったのは、2023年2月12日である。

2023年2月12日は、今から4日前。
わたしはその日まで、物心ついてからずっと、
心が凪いだ状態を味わったことがなかった。

わたしの中にある湖は、常に様々な感情によって波立っていた。
濁った水の中では何も見えず、いつももがいているような心境だった。
(自分がその状況を選択していた、と認めることができたのも先日。)
当然、その影響は身体にも表れていた。
息をいくら吸っても入ってこない。どれだけ深く息を吐いたとしても。

しかし、わたしの心は今、凪いでいる。
息を吸うことはとても簡単で、隅々にまで酸素が行き渡る感覚を得られている。
たとえ感情に波が立ったとしても、その瞬間にその感情を味わい、
振り回されることもなくなった。

心に残る葛藤やざわつきといった濁りが少しずつ落ち着き、
透き通ったと感じたその日は2月14日。
すると、かたちのない思いが、こんこんと湧き水のようにあふれてくるのも感じた。
あふれてくる思いを一つずつ、すくい上げる。
すくい上げた思いに、言葉というかたちを与える。
そうして生まれた、昨日の記事。

下の息子と、久しぶりに激しい口論をした本日の午後。
(夫に助けを求めるくらいの激しさだった)

そんなケンカをした後でも…わたしの心は、凪いでいる。

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