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答辞

──────

どうすれば死ねるだろう。
どうすれば終わらせられるだろう。
とばかり考えていた頃もあったと言えるくらい、
どうすれば生きていけるだろう。
どうすれば歩きつづけることができるだろう。
とばかり考えている毎日です。

ぜんぶを曖昧にしていたかった。
だって、傷を傷と認識しただけ、
そこには痛みが生まれてしまったから。
鈍感になればいいんだ。そしたら
なんにも痛くならないや、って。
それが当時の最適解です。

仕方がない、と目を逸らして、
誰のせいにもしなかったのは、
僕のせいだと気づきたくなかったからだ。
僕は独りで生きてみたかった。
誰かが助けてくれるのを願ってしまうのが、
恐ろしくて、許せなかったから。
助けられる気なんてないのに、
それでも手を伸ばすのはやめられないから、
ならせめて、伸ばした手が誰にも届かないように。
独りでは立てないと分かってから、
立つことすらも諦めようとした。
閉ざしてしまいたかった。
口を噤んでしまいたかった。
なにもかもが怖くてたまらない。
痛くてたまらない。

けれど、結局いつも縋って、救いを待ってしまう。
弱い、ごめんなさい。ごめんなさい、
周りの人が幸せなら僕はどうなってもいいと思えるほど、僕は自分を犠牲にもできなくて。
「分かってくれない人」と自分の周りに幾つもの線を引きながら、その線の絡まりように哀しくなって、蚕のようにそこに籠って泣いてしまう。愚かで、勝手で、狡くて、申し訳ない。
誰とも比べないためには、比べる対象を人生に置かないのがいいのか。劣等生にならないためには、此処には自分独りだけしかいないと思い込めばいいのか。欲しいを要らないにするためには?。僕はいつも極端だ。だからいつも、独りでいる時だけしか生きた心地がしない。苦しい。自分以外の存在は苦しい。自分が嫌いになる。嫌いな自分を嫌いになる、

けれど、
こんな人にはなれない。
こんなにやさしくはなれない。
こんな風には生きられない。と
毎日どこかで諦めながら、失望しながら、
そして選択肢をしぼりながら、
僕は僕になっていくのでしょう。
きっと僕の世界は、
最終的にはそれほど広がらなくって、
知っている景色も少なくて、
僕は井の中の蛙と言われてしまうことでしょう。
それでも、なにもかもが怖かったあの頃より、少しだけ、ほんの少し、痛みを伴ってもいいから、誰かと世界を分け合いたい、目を合わせて話をしてみたいと思うようになった。逃げなかった一日が、今よりもたった一日だけでもふえたら、誰かのことを大切にできるかもしれないって。自信は、ないけど。

誰も居ない場所だけじゃなくて、
誰かが居る場所も、見つめることができたら。
適切か、正しいかで判断する前に、
誰かを想い、やさしくできたら。
触れられず、触れさせなかった手が、
風で舞った桜の花弁が頬を掠めるように、
いつかなにかを掠めるかもしれない。
何者にもならなくていい。
僕は僕になってください。
僕の精一杯なんか、たかが知れてるだろうけど。
それでも、生きていくのなら。


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