彼に貸したお金が「高い勉強代」になるまでの話⑯「捨てる神あれば拾う神あり」


気分が沈んだままの2件目の面接。
1件目で落ちた事実も相まって、相手の目を見て話せない面接となってしまった。

初めて関わる、銀座のママという存在に圧倒され、場違いすぎた…と、より縮こまってしまった。


モデルのようなスタイル、声を聞いたら、(かっこいい…)と同性でも思ってしまうほど、中性的な声をしているママだった。

15分間のなかで、希望日時や趣味を話していく、そして、何故夜の店で働こうと思ったのか、を聞かれた。

緊張しすぎて、具体的にどのような言葉を使ったかは覚えてないが、「大失恋して、女としての自信を失った。見た目も可愛くないし、場違いだとは思っているが、プロだと思っている銀座のお姉さん方から、女性らしさを学びたい。」と話した。

ママは謙遜していたが、やはり他のお姉さん方も綺麗で明るい人ばかりだった。


あっという間に面接が終わり、駅のホームで帰りの電車を待つ。

(この場所は無理だ…。やっぱり、近所のところにしようかな…。)

自信が更になくなり、弱気になっていた中、LINE交換をしたママから面接のお礼が来ていた。
こちらから先に送るべきだった、と反省しながら、返信をした。

最悪のコンディションで臨んだ面接だったため、もう落ちた、と決めつけていた。


その後も自宅近隣でまた新たに探すが、怪しい店に引っ掛かりそうになったりもした。

せっかく、自分でやろうと決めたことなのに、また意志がぶれてしまいそうだと思っていたとき、ちょうど2件目の面接から1週間後だった。


ママから採用の連絡がきたのだ。


ママからのメッセージに胸がきゅう…となり、涙が出そうになる。

弱っていたからこそ、照れくさい表現になるが、希望の光そのものだった。


私は、2件目のお店でお世話になることを決めた。


捨てる神あれば、拾う神ありだ。

ここからまた、自信喪失、人間不信からの脱却をしていこうと思えた。



そして、あっという間に月末。
彼からの返済はない。
私は、あらかじめ作成した「私らしさ」皆無の督促文を送る。

すると、即、返済があった。効果てきめんだと思った。
だが、督促文に対して「入金しました」などの報告はない。
ただ既読がついただけだった。
誠意はないのか、と苛立ちもあったが、抑える。


入金確認後、
「〇〇円のお支払を確認しました。
残り〇〇円となります。
来月末もどうぞよろしくお願いいたします。」
と、事務的な内容を返し、私はダブルワーク生活に集中することにした。



ダブルワーク生活は思ったよりもきつかった。
情緒不安定な状態で、お酒を飲み、家に帰ると簡易占いに手を出してしまったり、セラピーを受けていたり、暴食してしまったり、全くてんでダメダメだった。毎朝、頭痛・めまいを繰り返し、昼の機嫌も悪くなる。

お仕事は楽しい。だが、自分のコンディションを整えずして始めた結果、更に鬱っぽくなってしまっていた。
情けない!!と今の私なら、言える。

同時に30歳という節目で、体質の変化も影響していたのか、PMS症状が出始めたり、動悸が起こることが続いたため、ボロボロ健康診断の結果を持って、婦人科・循環器内科と受診した。

検査は大事だ。結果、大きな異状はなかったが、低血圧であることも発覚したため、漢方薬をまとめて処方してもらった。

病院で検査することもこれまで避けてきたことだったので、行って本当に良かったと思う。


だが、土日は疲れからほぼ睡眠となり、友人との予定などは入れず、一人こもり続けていた。せっかく誘われたとしても、心身ともに疲弊しているので、断ることが続いた。
(私、身体ももう限界かも…)なんて、夜職を始めたばかりにも関わらず、またしても情緒が乱高下する。


そんな中、ずっと前に見つけたある占いサイトの公式LINEから15分間無料鑑定の通知が届く。


「占い」といっても、そのサイトは哲学的な内容や人間の心理に触れている箇所が多く、統計学的な要素と、主(以降、H氏)のパンチの効いたブログ内容が特徴的だった。


書いていて思ったが、H氏は「博士」「教授」といった表現が似合うかもしれない。


私は、ちょうど友人との飲み会も断り、心身ともに絶不調、何もする気になれないと思いながらも、無料ならと鑑定依頼をお願いした。


すぐさま、LINE通話での鑑定が始まった。


なんだかポヤポヤした喋り方の男性がその主だったが、初めて喋った感じがしない。

イメージとしては、仲の良い職場のおじさんのようだった。(告白上司とはまた別)


私はH氏に彼とのこれまでを話した。
それだけで15分なんてあっという間に過ぎてしまったが、H氏は「いいよいいよ」と継続して話を聞いてくれた。


一通り話した後、「なんか映画みたいで聞き入っちゃったよ~!」と言われ、その話しやすさから、続けてダブルワークも始めたのだと伝えると、「かわいそうすぎる~!」と笑われた。

当時の私は「可哀想」と思われることに敏感だった。
ギャルのようなゆるいノリのH氏に、情緒乱高下中の私は少しムッとしたのを覚えている。
だが、当時はそういった緩さ、適当な雰囲気というものが自分には必要だったのかもしれない。

H氏はゆるいノリのわりには、否定をしなかった。傾聴のプロだと思った。
そして、私の行動傾向を言語化してくれた。
彼と出会う前からを振り返ると、同じように難しい選択ばかりを繰り返し、時間を注いできたことがわかった。


H氏から「思考をやめて、今に目を向ける。」というシンプルな言葉に気持ちが軽くなった。


今やるべきことは、彼について考えたり、余計な妄想を膨らませることではなく、自分の仕事に目を向けなくてはと思えた。

H氏との通話終了時には「やっぱり友達と飲みに行けばよかった~!」と言えるほど、元気になっていた。


後に、この博士、教授のようなH氏が私の命の恩人となる。


ママとH氏との出会いをきっかけに、
私は徐々に自分を取り戻していけるようになる。


⑰に続きます。

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