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ツンデレな私の伯父が、ツンデレな迷い猫を保護していた

2年前の春のことだ。
祖母の家に遊びに行った私は、ガレージの棚の上に一匹の白猫がいるのを見つけた。鋭い青い目で、痩せた体で、貧相な雰囲気をしていた。
この家では、動物は数十年飼っていないはずだ。
私はすぐさま伯父に伝えた。
「伯父ちゃん!!!!白い猫がいる!!!!」
「ああ〜、なんか住みつかれちゃって」
「いつから?」
「2〜3週間前かなぁ」
結構前やん。

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↑ガチ初見時の猫

私の伯父は動物好きだ。動物関連の仕事に従事していた。
祖母家のガレージの内側に燕が巣を作った時も、「糞がすごい」と憤慨(ここは笑うところ)しながらも巣の下に木の受け皿を作り、一生懸命餌を運んでくる親鳥のためにガレージのシャッターを開けっぱなしにしておくことが多かった。
あまり表情に出すことはないが、伯父はなんだかんだ言って動物には甘かった。でも、多忙から動物を飼うことはなかったし、無責任に全ての動物に手を貸すことはせず、害獣もしっかり駆除し、きっちり線引きをするタイプの人だった。
それがここにきて、猫がいる。てっきり寝床だけを貸してるのかと思った(ねこだけに)。


「2〜3週間て、その間ご飯とかどうしてんだろうねぇ」
「いや、こいつキャットフードしか食わねぇんだよ」
「!? ご飯あげてるってこと?家に入れてるの?」
「上がり込んでくるもんだから、風呂に入れた」


それは、住みつかれたのではなく、飼い始めたのではないか…。猫は風呂を嫌うことが多いが、その子は大人しく洗われたらしい。私たちが初めて白猫と対面した時、すでに伯父は猫砂も用意していた。キャットフードしか食べないところを見ると、一度人の世話を受けた後捨てられたのだろう。少し胸が痛んだ。

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↑電気のスイッチの紐で遊ぶ猫

この猫(メス)がなかなかの性格をしている。

名前は…ないのだ。伯父はドライ過ぎて猫のことを「猫」と呼んでいる。私たち家族は便宜上「ニャン子」と名前をつけた。


ニャン子は、伯父にとても甘える。呼べばすぐ来る。一方で私たち家族が近づこうとすると全力で逃げる。本気の人見知りなのかと思いきや、一定の距離を保ちつつこちらの様子を伺おうとする。でも伯父が気を遣って抱き抱えて私に撫でさせようとしてくれると、本気で嫌がった。私と母からは逃げ回るが、父、兄には擦り寄ることもあるらしい。


「メス猫だから、男の人には気を許すのかもしれないねぇ」
母が少し寂しく、でも微笑ましく言った。


ところがある日、伯父と父母が出かけ、私はニャン子と部屋で二人っきりになった。猫は追い回すと逃げるので、嫌われたくない私は「そっと無視戦法」をとって椅子に座っていた。すると10分も経たないうちにニャン子が私の膝の上に乗っかってきた。小一時間の間、私になでなでされニャン子はうつらうつらとしていた。伯父が帰ってきて扉を開けた瞬間、猫は飛び起きて私の膝を降りて一目散に逃げた。とんでもないツンデレだ。

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↑真っ白ではなく、顔まわりと尻尾に若干茶色が入っている


また時間が経って祖母の家を訪れたら、ニャン子の片耳が桜型になっていた。もう完全にニャン子は伯父の子となっていた。トカゲやら何やらを狩ってきては伯父のもとに持ってくるらしく、「勘弁してくれ」と言っていた。やせっぱちだった体に多少肉がつき、目も丸くなり、柔らかい表情に変わっていた。

伯父は正面きってニャン子にデレデレすることはない。でも、ニャン子には誰よりも懐かれており、二人は良いパートナーになっていた。先にも述べたが、動物に関してはかなりの知識と愛情を持った伯父のもとに潜り込むことができて、ニャン子は幸運な猫だと思う。迷い猫は、自分を受け入れてくれる家を探す嗅覚か何かを持っているのでは、と感じたくらいだ。


私の伯父とニャン子は偶然の出会いが幸運に結びついた。それは本当に良かったことであるが、一方で苦労する猫がこの社会から一匹でも少なくなるように願っている。


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