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ネモフィラの風景
ネモフィラの丘に立って見渡した景色を思い出しながら青いシャツを捨てた。
五月の青い空の色。
息を吐くように嘘をつく男。
シャツを脱ぐようにそれを捨てる。
服を脱ぎ捨てるようにその男を捨てる。
あの花の名前を彼に教えたのは私。
だけど嘘つきなあの男はきっとそれも忘れたよねと言い訳しながら。
買ったばかりのネモフィラ色の青いシャツを見つめて捨てる。
ネモフィラを眺めた日を捨てる。
泣いたあの日を捨てる。
服を脱ぎ捨てるように。
わたしそびれたネモフィラ色のまっさらなシャツを思い出の袖を通さず私は捨てた。
ネモフィラは好きだけどあんたなんか大きらいよとさくらんぼを噛む。
種をぷいっと唇から吹き出して。
一人ベランダで自分で自分を抱きしめてやる。
さくらんぼの種がこっちをみて言った。
「悲しい?」
ううん、と答えてからまたさくらんぼを噛んで酸っぱいわと答えた。
ゆー。
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