『来る』と捨て子の話

※この記事は映画『来る』のネタバレを含みます

Wikipediaの「子殺し」の欄は「間引き」について語られているが、いやに具体的で怖いので引用はしないでおく。興味ある人は読んでね!

さて、こんな話を書こうと思ったのは映画『来る』を見たからである。別に見ようと思ってないよーだとか、もう見た!という人だけこの先に進んでほしい。


ここからネタバレ注意




『来る』には「子を産みたかった女」「生まれたかった子供」「堕胎させたい男」がワンセットで出てきます。

この「子を産みたかった女」が「堕胎させたい男」に対する報復が最高でして、男に産んだ子を川に流させるんですよね。

「私は産みたかった」「この子は生まれたかったのに」「ならあなたが殺しなさい」

報復として完璧です。倫理的には当然アウトですが、女は(男が望まない子を)産みたかったので産んだ上で、男は(女の望まない)堕胎を希望したので殺させる。

なんと鮮やかな手口。望みを歪んだ形で叶える聖杯とはまさにこのことで、見事全員を傷つけることに成功しています。

個人的には、妊娠するには子ができるという前提があっての同意が必要にも関わらず拒否できるというのが納得できない人間なので、その意味でも天才でしたね。「お前が殺したんだ」という自覚は命を殺すのに十分な覚悟だと思います。

この子殺しですが、

古来から行われてきた「間引き」を忌むべき風習、タブーであるとしながら「堕胎」という形で現代に落とし込んできた

のが本当にすごくて、古来から受け継がれてきた因果の系譜を扱うことで、西洋では扱えないアジアンホラーを成立させています。オージャパニーズピーポーですよ。楽しい。

森から悪魔を拾ってくる。感染する呪い は西洋のほうでもあるので、そこが日本である必要があった背景があるのは大事です。主題と一貫していますし本当に上手い。

さて、いつか書こうと思っていたら、公開からも自分が見た時からも随分経ってしまいました。

もう覚えてねえよ...という方もいらっしゃるとは思いますが、この機会にもう一回観ましょう!『来る』いいぞ!

いや、そんな良かったか?と思った人!賛否両論あるよね。私は基本的に良いように書きますし、怖くないホラー好きです。ちゃんとB級かもしれないと思いながら見ようね!

ではまた。



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