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京都遊覧記〜嵯峨野

 今回、訪れた地は嵯峨野。嵯峨野は嵐山の北方に位置し、嵐山と抱き合わせで観光地として売り出されることが多い。嵐山を代表する渡月橋や天龍寺は以前訪れたことがあるので、今回はそこから北の地を目指すこととした。

今回のルートはこんな感じだ。嵯峨嵐山駅をスタート地点として大覚寺を目指す。割と正確に描けていると思う、我ながら。

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1.嵐山

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 まず道なりに進むと、渡月橋が見えてきた。いつもより明らかに観光客が少ない。6月末の写真であるが、コロナが観光地に与えた影響の甚大さを物語る。特に、外国人の姿が一切見られないところが、際立っていた。そんな渡月橋に後ろ髪をひかれながらも、嵯峨嵐山文華館に向かった。いわゆる百人一首ミュージアムというやつで、百人一首に関する展示が多い。

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2階は絵画の展示コーナーとなっており、とても広かった。毎年、かるたの大会があるらしく、一度見に行きたいと思った。そういえば、嵐山を詠んだ百人一首の歌はなかったような気がする。百人一首の編者藤原定家がこの地で百人一首を撰録したというのに、何だか意外なことである。

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2.嵯峨野を巡る

 百人一首ミュージアムを訪れた後、向かったのは竹林の小径だ。

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とても落ち着ける空間で、心が癒される。日中に訪れたため、そこそこ人もいた。朝早くに訪れれば、人もいないとのことなので、是非一度一人の世界を味わってみたい。森見登美彦氏の『美女と竹林』という作品はこの地で書き上げたのだろうか、とも考えた。一度、作品内に登場する清談なるものを経験してみたい。この竹林の小径の途中にあるのが野宮神社だ。野宮神社は『源氏物語』の「賢木」巻の舞台となる地で、光源氏と六条御息所の別れの地として描かれる。是非、自身の目でこの地を訪れてみてほしい(写真撮り忘れたから見せられないだけ、ただのポンコツ)。

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竹林の小径を抜けて向かった先は、常寂光寺である。紅葉の名所として知られているが、訪れている人は少なかった。

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境内は少し高低差があり、本堂の奥には多宝塔が位置する。また、藤原定家が百人一首を撰録していた地と伝わる時雨亭跡が残る。時雨亭跡と比定されている地は嵐山に多く残っており、この地は候補地の1つとなっている。時雨亭がどこかわからないというのは、それもまたロマンである気がする。

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秋に訪れたい紅葉の景色だ。

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苔がまた風情を感じさせる。嵯峨野の地はこのように緑に囲まれた空間が多い。
常寂光寺を後にした私は、少し進んで祇王寺という寺院へ向かった。平清盛に寵愛された祇王が出家した寺として知られている。

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苔や竹林に囲まれた地で、とても落ち着いた気分になれる。庵室の間にある丸窓から見える庭園も風情があり、美しい。『平家物語』に登場する悲運を辿る女性は、このような地で何を思ったのであろうか。

3.歴史と共に歩んだ地〜大覚寺

祇王寺から1kmほど農村地帯を歩くと、大きな寺の前に辿り着いた。大覚寺である。開基は嵯峨天皇で、創建以来皇室に非常に縁の深い寺院となっている。歴史の表舞台に大覚寺が登場するのは、鎌倉時代末期に起こった皇統の争いであろう。後深草天皇から始まる持明院統と亀山天皇から始まる大覚寺統が皇位の座を争った。

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大覚寺は東映のスタジオが近くにあるため、ドラマ・映画の撮影にもよく使われている。時代劇をよく見る人なら、一度は大覚寺の姿をテレビの中で目にしたことがあるのではないだろうか。大覚寺はこのようにお寺の内部も魅力的であるのだが、お寺に隣接している大沢池も古くから有名な地である。百人一首にもある藤原公任の歌、
「滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ」
この歌はかつて大沢池に水が流れていた名古曽滝で詠まれた歌である。滝の流れは止まって長い年月を経ているが、その名声は今も伝わっている、という歌意である。

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これが名古曽滝跡である。かつてはこの滝から水が注いでいた大沢池も、今では蓮の花が多く咲いている。大覚寺の反対側から見ると美しく見える、とお寺の人に教えられたため、行ってみることにした。

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大覚寺側からみた大沢池。

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蓮の花が浮かぶ池と大覚寺の組み合わせがいい。ここで日々を過ごした嵯峨天皇の頃に戻れたような気がした。京都は街の変質を経ながらも、このような伝統的土地は残されている。この歴史を感じさせる風景が過去の人々と現在の我々とを繋ぐよすがなのかもしれない。

4.展望

嵐山・嵯峨野は1日では廻りきれない。古来から貴族が多く訪れる観光地だっただけに、由緒ある寺も多い。化野あたりもいつか訪れてみたい。嵯峨野は、苔や竹林に囲まれたとても心が落ち着く空間であった。


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