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【画廊探訪 No.011】窯に入れる木の魂 ―――田代雄一展に寄せて―――

窯に入れる木の魂 ―――田代雄一展に寄せて―――
 襾漫敏彦
 腹の中に、炎と森の山々をかかえる九州の地から彼は来た。かの地の宮城は、自然の潤いに恵まれながら、半島から大陸へと、石と乾いた土の風土を遠く眺める。
 田代氏の作り出す動物達は、牧歌的であり、童話的でもある。観て、念じて、合成された世界の中に、手にとられ、造り出される。異郷の神は、土塊より人を創造した。田代氏は、自然から木を切り断ち、作品の動物達を創造する。そして、彼等は、自分達の生きる王国の王姫や、騎士の為、歌を唄い始める。
 作品の肌を触るように表面をなぞると、色彩を施された木片の質感は石のようである。木目とは、移ろいゆく時の表現されたテクストである。しかし、表面の質感は、むしろその時を凝固させているようである。あえていえば、意識の中にある色の姿に、木の表面を、施しているとでもいうべきであろうか。
 
 一人の造形家の想念と手による精神の窯の中に木を投げいれて、魂を抽出する。陶芸の心をもつ彫刻であろうか。歴史より切り放ち、時を止めて実体として造られた観念を、誰かが手にした時、西の王国より東の涯にもたらされた物語が、溶けはじめる。


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初期の評論です。

田代雄一さんは九州の作家さんです。このかたのころまでは、木彫に色をつけることは、かなり勇気のいることだったそうです。

初めて色をつけようとしたときは、怖くて手が震えていたそうで、つけたあと、何かをこえれたようにいわれていました。手技の進展にも様々なハードルがあり、それを乗り越えて、こんにちがあるようです。

彼のサイトは動物好きにはたまらないとおもいます。


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