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【画廊探訪 No.102】登る滝の湖水に跳ねて―――「Radical Show 2013」第3期、岩泉慧「創生前夜」作品に寄せて―――

登る滝の湖水に跳ねて
―――「Radical Show 2013」第3期、岩泉慧「創生前夜」作品に寄せて―――
                             襾漫 敏彦

 気の粒子は、微細にして、黒き大地より湧き立ち、白日の天へ向かい登るにつれ形を成し、生けるが如く咆哮をあげる。そして、それは崩れ落ちて、地に降り注ぐ。

 岩泉慧氏は、京都造形芸術大学の俊英として、今回の企画に選出された。彼は、日本画を軸として鍛錬をなしてきたのであろう。和紙や絹本に、墨を中心に、意匠を描出する。更に様々な素材を加え、エフェクト画材を配していく。墨絵をベースにしながらも、鉱石的な硬さを艶の中に潜ませていく。そして、エフェクト画材の粒子のような煌めきは、一種の岩絵具の表面の輝きにも通じよう。

 今回の展示では、襖絵と屏風と、Unknownと題した小品を出品している。それらの中心的意匠は、乾坤、天とそれを臨む龍であり、若き大望をも含んでいよう。
 しかし、昇り上がる龍は、大地から天へと登るのである。最上の価値は、天にのみあるだけではない。地は、天ありてこその地であり、天は地ありてこその天である。昇るのは龍でなく、鯉が昇りて龍に化すのである。エフェクトの輝ける粒子は、鯉の稚魚の如くであり、登る鯉が身にまとう気の粒子のようである。そして、龍の描かれた構図の余白にこそ、いまだ知り得ぬ己の内奥を窺う鏡が潜んでいるように思う。

 立体的な表現の厚みの中に仕込まれた「乾坤」、それは易の始まりである。純陰と純陽から、陰と陽が織り成していく大宇宙の醍醐味は、これからなのであろう。

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岩泉さんの公式サイトです。


https://www.hcam.works/


芸術色彩研究会のサイトです



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