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【画廊探訪 No.034】 ここに僕がいる ――Cat Maker ORION 作品に寄せて―

ここに僕がいる―――Cat Maker ORION 作品展に寄せて―――
                             襾漫敏彦
 こちらを出迎えてくれるのは、伸びあがって、双手をひろげた猫。歓迎の意であろうが、野生の名残に、踏み込めない間合いを感じる。この個展の猫達は、練りこまれた意思を、所作として空間の中で、身にまとっている。

 作り手は、猫達に人である事を求めない。人のように心を保つ隣人として、彼等をつみあげていく。作り手や見る者が期待する「物語性」を拒み、この世にあらわれた時から、誰かに従う事無く、自立して在る。それ故か、作品の前に立つ時、侵しがたい領域に触れるのである。
 
 作品は、石の粘土を基本とした塑像である。作り手は、その配合を組み直し、組み直しして、積み重ねていく。金属を鋳るのでもなく、木や石を彫るのでもない。外面を飾る事で、内面を変容させていく方法でなく、下から上へと、内から外へと、練り重ねていく事で、存在を孵化させていく。幾度も幾度も、表面をさする事で、作品に自ら魂が宿ることを祈っているかのようである。

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