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【画廊探訪 No.132】大地を巡る気脈が、この地に具現化して――曄田依子作品「tagboat Art Fair 2022」に寄せて――

大地を巡る気脈が、この地に具現化して
――「tagboat Art Fair 2022」曄田依子出品作品に寄せて――

襾漫敏彦

 瀬戸内海は、豊後水道を経て、大海に通じる。速吸瀬戸(はやすいのせと)と呼ばれる豊予海峡は、佐多岬の西に開く。そこでは、黒潮のうねりに応じて、北へ南へと潮は流れるが、鳴門程ではないにしろ力強く渦をなすこともあうだろう。

 曄田依子氏は、油絵を学んだが、油を使うが故の輝きから離れていく。日本画の膠の照りすら遠ざけ、水の力で二つの間隙を通り抜ける。コントラストを淡さで描きわける手法は、日本画のそれというよりも、色彩を使った水墨画とでも言うべきかもしれない。

 彼女は獅子から犬へと転じた存在として狛犬のようなものを好んで取り上げるが、それは、どこか曖昧でぼんやりしていて、実体のあるものというより、立ち上る気配として感じられる存在として描かれている。

 

 力強い眼の表現が彼女の作品の特徴である。そこが、図像の統一の場であり、活力の中心である。眼は主観の座である。それ故、和の伝統に近い表現に思えるものの見る者の主観が安住する場に乏しい。西洋絵画や大陸の水墨画に近しいのかもしれない。

 “眼”は、作品の中で中心となって絵の全てを表現している。そう言っても過言ではないだろう。山の頂きを置いて岩肌が描かれていくように“眼”から溢れるように気の象(かたち)があらわになってゆく。立髪に、眉毛に、力強い四肢にと。具現化していく姿を包むように、周辺から手が加えられていく。それは山の裾野に繫茂する緑。造形は、清浄な汚れなき大気におおわれる。広大な森羅万象の中で目覚める。

 江湖を廻る海流は、伊予の地に至り内海へと向かう。海峡の急流を過ぎるとき、思わず東の方を臨む。風早の方に、力強さを内に秘めたる石鎚の頂の陰影を、靄の向こうに感ずるのだろう。


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曄田依子さんのサイトです

tagboat での紹介も添付しておきます

多彩な活動をされているので、自分で調べられると色々な記事がでてきます。

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