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【画廊探訪 No.036】人は、孤独ではないのに ―――白木千華個展「Sence of Wonder」(Art Gallery OPPO)に寄せて―――

人は、孤独ではないのに
―――白木千華個展「Sence of Wonder」(Art Gallery OPPO)に寄せて―――
襾漫敏彦

 春、蓮華が一杯の田んぼで、転げ回って遊んだ子供の頃の記憶がある。昔は、自然が傍らにあった。いや、生きるということは、本来、自然の中でこそなされる筈なのに、それを失って久しい。

 白木千華は、不思議な陶芸家である。彼女は、近くにある草むらや、灌木、古木の根に生えるキノコなど、そこに座って手にするほどの植物を基本にして、狐やうさぎ、山羊や鳥、蛙や魚といった身近に感じることのできる動物を所狭しと配置する。そうして作られる問答は、純粋な置物ではない。器、皿、壺、コップといった日頃の生活で手にして扱うものである。

 彼女は作品に強い色や鮮やかな色彩を使わない。緑が基調であるが、ややくすんだ感じであり、街から出かけて自然に出会い、驚き感動を受けるような輝くような青葉や深い緑ではない。駆けまわる草むらや、転がりまわる花畑、草取りをする植物園の色彩なのである。そして、そこに、ひょいっと顔をのぞかせる動物達、そんな感じなのである。

 彼女の作品の面白さ、それはその装飾が、器やポットといった用具の付属物といった行儀のいいものではなく、植物も動物も、気儘で好きなようにしているところである。動物や植物、そして人の使う日用の品が、自分の分をあてがわれて行儀よくしているのではなく、お互いの領域を平気でおかすところにある。それでいて調和が保たれている。あるがままという一番大切なものが失われていないからだろう。僕等は、私への公の浸食が膨らんだあげく、その一番大切なものをとうに失っていることに気づかされる。

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かわいい造形で陶芸をなされる方です。


関西在住ですが、近々東京、外苑前のモルゲンロートで個展をされます。


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