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松濤美術館+東京大学総合研究博物館 本郷本館

昨日は平日の一人休暇。
松濤美術館の展覧会「津田青楓 図案と、時代と、」と、東京大学総合研究博物館 本郷本館「空間博物学の新展開/UMUT SPATIUM」特別展を見に出た。

暑くはなかったが、電車からは、垂れ込めた雲を支えるような、何式というのか知らない神殿のような柱が見えた。スカイツリーの途中までが見えていたらしい。

雨が少しくらい降っても問題ない日傘を差して出たが、松濤美術館の後から雨がぱらつき始めた。その後はせっせと雨傘として使われ、染み込んだ雨で重くなっていた。

激しい雨に当たらなかったのは幸いだったのだろうと思われた。視界の悪い雨も何度か見かけた。帰宅すると夫にも、日傘で出たなんて呑気だと呆れられた。

松濤美術館では、古い物とはいえ感覚としては古くないデザインを眺めてきた。POPさを感じるデザインもあった。デザインではなく図案と呼ぶようだった。

刺繍や本の装丁、日記など、額装された絵ばかりでもなかった。青楓以外の作品の展示も、主に地下の第2展示室にあった。

青楓あおもみじは最近、友人たちと話題になった言葉。
だが、それで行った訳ではなかった。
紹介されている展覧会のビジュアルを見ながら面白そうだと思っただけで、繋がりに気づいたのは後だった。

一草亭が青楓せいふうと名付けたという話とともに、「青もみぢは段々色をましてゆく」という言葉があった。もっと成長することを予祝するような話だった。

青楓あおもみじの「青」というのは、瑞々しい色合いのことなのか、もっと濃くなっても青楓というのかと、何となく疑問に思っていたので、何となくすっきりした。

エントランスフロアの丸窓から見えた楓は、緑と赤が混じったような、季節外れ感のある色合いだったが。

12月17日(水)の日記は「日本晴れ、雪解け、雨だれの音さわがし」の一文のみ。
そんなシンプルな日記も素敵だと思った。

戦時中に書かれた葉書が、何だか素敵なデザインだった。大変な中だったのだろうと思うのだが。
葉書は横位置で、真ん中に横長の絵が描かれ、文字は上下に縦書きされていたり。
L字の空間に絵が描かれていて、残った場所に文があったり。絵も構成もアートだと思った。
他の展示物を見ていても、画面に大きな空きのある空間が効果的だったのをいくつも見かけた。

「桜林」とタイトルに書かれているのだが、桜色の花ばかりでなくオレンジ・黄・水色・深緑の桜が描かれているものがあった。反転した色が使われながら馴染んでいるようなデザインは、他にもいくつか見かけた。これはこれで落ち着く色の組み合わせなのだろうなと、不思議に思いながら眺めた。

「ひいなかた」という文字を作品名に見かけた。何のことかと一瞬悩んだ。が、雛祭りの起源として聞く「ひいな遊び」と同じ「雛」を連想し、「雛型」「テンプレ」のことかと納得した。

博物館は、先月、休館日に行こうとしていた場所。止めてくれた友人に感謝の気分で楽しんできた。

常設展エリアは「UMUTオープンラボ HALL OF INSPIRATION 太陽系から人類へ」。特別展のスペース以外にも、化石や、骨、年代測定器やら、何だかたくさん並んでいて面白く眺めた。

博物館の研究エリアは、通常バックヤードにあるのだと思うのだが、ガラス越しに研究しているところが見えるようになっていた。博物館のメインは展示物ではないと思われるが、そこを見せているのは珍しいように思う。

懐徳門かいとくもんから入り、すぐに博物館だった。
アプローチの途中にある珊瑚の向かいに、INTERMEDIATHEQUEインターメディアテクで似たテイストの物を見かけたような気がする「伝アインシュタインのエレベーターの昇降装置」があった。

珊瑚の上には苔が生えていた。どちらもキャプションもあり、本物らしいのだが雨ざらしだった。展示物ではなくオブジェなのだろうなと思いながら眺めた。

帰宅して、夫に「IMTで見たような気がするニュートン?の…滑車?を見た」と、まるで正しくない話をしながら、そういえば、IMTも東京大学に縁の深い場所だったなと思った。

後で調べると、IMTは同じ東京大学総合研究博物館と日本郵便との協働運営らしかった。そのエレベーターの昇降装置のカゴはIMTに展示されている。そのレトロなエレベーターは、私も見た記憶がある。

夫が、ここのこと?と以前にテレビで見た話をしていた。東大キャンパス・ミュージアムというタイトルの動画だったらしい。今日、行った場所にそんな名前は見かけなかったな、キャンパスが違ったりするのかな?と思った。が、どうも同じ場所らしく、その動画は面白かったので行ってみたい場所のようだった。

子どももその動画は少し見たらしいのだが、あまり覚えていなそうだった。
子どもには、いつだったか国語の教科書で習った、ウナギのレプトセファルスと卵の標本があったと伝えた。

放射性炭素年代測定室の、ガラス越しに見える計器は稼働中の様子だった。エントランスでは、今は動いていないと聞いたように思うが、赤いランプが点滅していた。

計器のモニター画面も表示されていた。何をしているのかはわからないが、たくさんのガラスへの映り込みに、カオスな気分でしばらく光景を眺めた。

測定室内には屋久杉と書かれていたのだったか、年輪が見える標本があった。
いつだったか科博の地球館へ行ったとき、大きな屋久杉の標本が測定のために不在で、何だか貧相に見える紙が、代わりに貼られていたのを見たことがある。
そんな感じに、どこかから運ばれてきた標本なのだろうなと思いながら眺めた。

展示を見るだけなら、IMTの方が照明なども見やすく整えられているので良いと思うが、メインの研究の様子が感じられるというのは、珍しい博物館だと思った。

目的にしていた特別展「空間博物学の新展開」には、たくさんの建築模型が並んでいた。空間を収集し、標本として展示している光景は何だか楽しかった。

木造の精巧な建築模型が美しかった。現存しない校舎の木造模型がいくつもあった。建築倉庫でも、実際には建築されなかった教会の木造模型は見たことがある。きっと今は作られないだろう貴重な技術と思いながら楽しんだ。

歩き疲れた最後の乗換が慌ただしかった。急いでいる割に、急いでいるのか転けそうになり止まっているのか、何だかひどい歩き方だったが、どうにか予定の電車に乗り、のんびり座って帰宅した。

最寄駅に着いた頃には、雨は上がっていた。