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色鮮やかな世界-PRIVATE WORLD-

今年は我慢の年。憎きウイルスのせいでどこにも行けない...何も楽しいこと出来ないよなぁ...とフラストレーションを溜めている人、きっと世界中にいっぱいいるよね。

旅行に行くのだけでなく、逆に日本に帰国するのも難しい状況の中、ペルーに取り残された日本人男性に関する報道は記憶に新しい。封鎖で足止めされたその地で子供たちにボクシングを教えながら約200日間を過ごし、後にペルー政府から特別許可が下りマチュピチュの遺跡を案内してもらっている。

ボクシングを教えながら滞在、というのがいいなと思う。外国を旅する時、その国を見て周るだけじゃなく、その国に何かを与えることも出来る人ってすごい。

イラストレーターの下田昌克さんもまた、旅をしながらその国の人たちに何かを与えることができる人だと思う。1994年、下田さんはアルバイトで貯めた100万円を持って上海行きの船に乗り、絵を描きながら2年間かけてアジアとヨーロッパの国々を周った。その結果出来たのが、カラフルなコラージュと日記と絵で隅から隅まで楽しめるこの「PRIVATE WORLD」。

日記には見たまま感じたままが所狭しと書かれている。私のお気に入りはインドからネパールに戻る途中に書かれたもの。「空にはたくさんの星があって、その下ではおっこちた星がまよっている様にホタルが飛んでいる」って。あぁもう目を閉じてその情景を想像せずにいられない。

絵にはどれも生命力がみなぎっている。一見ぐちゃぐちゃに線を描き殴っているようでいて、それが次第に形になり、”生”を帯びてくる過程がありありと見える。絵を描く下田さんの周囲に現地の人たちが集まるのも納得だ。下田さんは行く先々で現地の人たちと交流し、一緒に飲んだり食べたりし、行きたいところに行って自由気ままに絵を描き続けた。

「PRIVATE WORLD」のページを捲るごとに、下田さんの目に映った鮮やかな世界のお裾分けを貰っている気分になる。旅先で絵を描き人々を楽しませた下田さんや、ペルーでボクシングを教えた日本人男性のような才能ある人たちが再び自由に旅に行ける日が早く来るといいな。

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