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Nobuyuki’s Book Review No.2 リチャード・スターク『悪党パーカー/犯罪組織』片岡義男訳(ハヤカワ・ミステリNo.1040)

 女の悲鳴に目を覚ましたパーカーはとつぜん弾丸に襲われた。ベッドから転がり落ちた同時にパーカーは、身をひるがえし、隠し持っていた拳銃を投げつけ、間一髪、相手の男を制圧して難を逃れた。男はニューヨークの犯罪組織から送り込まれた殺し屋だった。因縁をつけられて以来、幾度となく命を狙われ、そのたびにくぐり抜けてきたパーカーだったが今度のことで堪忍袋の緒が切れた。激しい怒りに燃えたパーカーは、手始めに各地に散らばるプロの犯罪者仲間たちに、組織への急襲を求める手紙を書いた。日頃から組織に手をだす口実を待ち望んでいた犯罪者たちは、各地で一斉に賭博場など組織の店へ襲いかかり大金を強奪しはじめた。一方でパーカーは、個人的な借りを返すべく組織幹部のある男に肉薄していくのだった。
 リチャード・スタークの悪党パーカーシリーズ三作目。一作目、二作目に引き続きスピーディーな筆致は健在だ。四部構成で、第一部は一作目『人狩り』、二作目『逃亡の顔』のおさらいを含むプロローグ、第二部以降から物語は本格的に動きだす。整形手術で顔を変えたパーカーが、仲間に自分と認めてもらうまでのやり取りなど愉快だ。逆に顔を変えたが為に、堂々と敵地に乗り込んでいき、最後に正体を明かす所など圧巻である。中盤、犯罪者たちが各地で組織の店を急襲していく場面は間延びしている感があるが、短すぎるといった商業的な問題で引き延ばしたのだろうか。とは言いつつ、追う者と追われる者の視点が徐々に近づき、最終的に重なる様は巧みである。訳者、片岡義男の『悪党パーカー』はエージェントから「書け」と命令されて書いたにちがいないという推測も興味深い。シリーズはまだまだ続く。

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