楽曲[ サイレントマジョリティー/coverd by Nijisanji ]雑感

はじめに

 欅坂46さんの楽曲を、主催の本間ひまわりさん中心の7人のメンバーでカバーしたバージョンが公開されたので聴いてみた上で思った事を書いてみようと思います。
 断っておきますが、この曲はカバー版で始めて聴きました。
 比較する上で、本家版のMVを拝見しましたが、一つの歌として聴いたのはカバー版が先である事を明記しておきます。
 また、書かれている内容は完全に個人の考えであり、事実が含まれる可能性は非常に低い事も、併せて書いておきます。
 あまり良い書き方をしていないと思われるかもしれないですが、僕はこういう曲も好きです。
 
 今回のカバーに参加したメンバーは7人。
 主催の本間ひまわりさんと、JK組の3人(静凛さん、月ノ美兎さん、樋口楓さん)。
 それに赤羽葉子さんと鈴原るるさん、夕陽リリさんの7人です。
 不勉強ではありますが、配信をしっかり観たことが無い方もいるので、それぞれの特徴をはっきりとは言い切れません。
 歌を聴く限りでは、それぞれに良い響きの声だと思いました。
 最初は少しまとまりが無い感じを受けたのですが、本家MVもそうでしたし、歌詞の内容的にもそうしているのだと落ち着きました。
 また、個々の声の使い方による表現力や魅力の違いもあるので、適切なバランスだと思います。
 
 歌詞の内容について簡単に触れておくと、「日々を無為に送らずに、艱難辛苦を心して夢を見ろ」というものです。
 歌詞の中では仮想敵を「大人」と表現しており、原曲MVの衣装も学生服モチーフなので、中学生から大学生くらいをターゲットに作られたものと考えた方が良いかもしれません。
 しんどくても独りになってもやりたい事をやれ。
 その考え方自体はカッコ良いなぁ、と思いますが、初視聴ではなんとなく腑に落ちない感覚でした。
 何度か聴いているうちに、何となく納得できる考えが持ち上がったので、それを書いてみようと思います。

所感

 この歌は視聴者への「挑発」だと思いました。
 マイノリティであっても常に己の目標を貫けというこの歌の内容自体は、それほど珍しいものではありません。寧ろありふれている位だと思います。
 ただこの歌の場合、視聴者側の立場を削ろうとしているのが、何となく感じた違和感の原因でした。
 この場合の「立場」とは、自分が立っている価値観であったり、共同体の中における自分の立ち位置に当たると思ってください。
 この歌の場合、かなり強烈にマイノリティ以外をディスっている印象を受けます。
 群れている人間はみんな「大した事ない奴」と歌っている印象を受けるのです。
 その考えに至った時、歌詞の内容や歌唱力云々などより、何となく虚しい気分になりました。
 言い方はかなり極端ですが、独りよがりなマイノリティの定義だと思いましたし、その中で頑張ったとしても、報われることが無さそうだからです。
 歌詞の中で「one of themに成り下がるな」と歌われているのですが、世の中にはその集団の中でトップを目指す人もいるし、集団の中で統率を執るのが上手い人間もいます。
「君は君らしく生きていく自由」にはそういう選択肢もある事を、この歌詞は失念している気がしたのです。
 大衆に影響力のある人間が明らかに選択肢を限定してきたり、潰してきたりする事は非常に危険であるとも考えているので。
 また、自分から積極的に選んでいる訳では無い人がいる事も考えなくてはなりません。
 というより、マイノリティで活動し続ける事に耐えられる事それ自体が、ある種の才能である事も一つの事実だと思うのです。
 
 まず自分と相手の立場を受け入れ、その上でなにを選択していくのか。
 その選択をするのにどのような理由とどのような逡巡があったのか。
 それを受け入れられるくらい懐が深くても良いのではないかと思ったのです。
 それとも、今の学生たちはそんな事も考えないであろうと思って歌を作られているのかと。
 或いは今の学生はそんな事も考えないぞ、という大人側へのメッセージか。
 いずれにせよ、結論としては気持ちの良いものではありませんでした。
 

それでは、


 それをにじさんじトップのメンツで公開した意味とはなんであろうか、というのを考えなければなりません。
 元曲は学生の立場から社会に対しての反骨歌だった訳ですが、JK組をはじめとするにじさんじライバーは、(望んだかどうかは別にして)バーチャルYouTuberの上位に位置する存在です。
 最先端に居続けるトップランナーという方が近いかもしれません。
 そういう立場の人間が、誰宛にどのような意志を持ってこの歌を公開したのか。
 それを考えなければ、にじさんじカバー版を聴く意味がありません。
 
 バーチャルYouTuberはここ2、3年という非常に速いペースで急速に発展を遂げたジャンルです。
 数万人という人数がいるとか、いないとか。
 その中にはそれだけの数の魂(いわゆる中の人)がいて、それぞれに活動している訳です。
 しかしながら、YouTuberという性質上、同じタイミングで同じような内容の動画が並ぶことが多々あります。
 せっかくリアルよりも自由な身体を手に入れて、やる事が皆と同じでは、バーチャルである意味が無いのでは無いか。
 特に最初期から活動している人や、自分の見せ方を考えている人はそう考える事もあるのではないか。
 そういう人達を応援する意味ならば、この歌を公開するのにはとても大きな意義が見出せるのではないか。

 そこまで考えて、個人的に納得ができたので、今日はここにこう書いておきます。
 もしこの記事を読んだ奇特な方 がいましたら、是非観て、聴いて欲しいと思います。
 coverd by Nijisanjiも、欅坂46版もそれぞれYouTubeで見ることが出来ます。
 5分足らずで、なんらかの感慨を得る事はできると思える歌であるのは確かです。
 

終わりに


 そんな訳で、荒削りではありますが聴かせて頂いた感想を書かせてもらいました。
 こんなにまとまりが無いなら書かない方が良いかとも思ったのですが、それでも書きたいと思ったくらい、心が動かされたのも事実です。
 歌であれ絵であれ、表現の終着点の至上目的は、観た側に何かしらの感情の動きを生み出す事だと思っているので、この作品もその意味では僕にとっては大きな作品です。

 付記


 個人的にこの歌と同じようなメッセージ性を感じた歌を書いておきます。
 すぐに思い付いたのはこの辺りでした。
 
・宙船 / TOKIO
 ミーハーなのでTOKIOもドラマ主題歌くらいしか聴いたことが無いのですが、大ブームを巻き起こしたこの曲は今聴いても持ってるエネルギーが強いです。
 特に歌詞のシンプルさと真っ直ぐさ。それに力強さです。
「とにかく前に進む」という事それ自体のカッコよさを見せ付けて、周りを奮起させるタイプの歌だと思います。
 ここから数年後に「本日、未熟者」になったと考えるとそれはそれで感慨深い。
 ちなみに「宙船」も「本日、未熟者」も手掛けたのは中島みゆきさんです。
 そりゃあカッコ良い訳ですよ。

・トリカゴ / XX:me
 TVアニメ「ダーリン・イン・ザ・フランキス」のED主題歌です。
 印象的で力強いストリングスのイントロから、思春期の恨み節のような歌詞、綺麗な歌声と、「サイレントマジョリティ」にも近いアイドルソングの雰囲気を持っています。
 手掛けた方は杉山勝彦さん。その方面で有名な方だそうです(僕が詳しく無いので申し訳ない)。
 アニメ本編よりこの曲の方が印象に残っている方が多いのではないでしょうか。
 歌詞だけ見れば諦めを歌ったようではありますが、個人的には自分の立ち位置をしっかりと見定めたような覚悟の歌という印象が強いです。
 この先どうしたいのかを決める為の足元作りというような。
 これから、自分の未来のために何をするか踏み出す歌だと思ったので、ここに記しておきます。
 
 どの曲もとても素敵なので、機会があれば是非聴いていただければと思います。

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