見出し画像

くも猫ふわふわ日誌 2022-423山開き

4月23日は1日早い (個人的な) 山開きだった。年間を通して通う八代市五家荘地区の正式な山開きは翌日の4月24日 (日曜) なのだけど、用事もあるので、1日早く山に出かけた。天気予報は雨だが、雨は雨で楽しい。もちろん大雨は別。去年の秋の豪雨でいつも楽しみにしている谷が大崩落。トリカブトを期待して林道を辿るに、途中でバンバン、ビーンと音が響いて来た。その谷にコダマする音とは崩落した斜面から大きな岩が落ち、跳ねる音なのだ。林道は足の踏み場もないというが、岩が積み上がり異様な景色。さすがにこれ以上は無理と引き返した。(引き返す途中で足を滑らせ、右肩を痛め、また整形外科に通院するはめになった) そんな谷の林道が半年経つと重機の力で見事復活していた。まるで魔法にかかったように。しかし、今年の山の花の開花は1週間遅く、有名な芍薬の花もまだ固いつぼみだった。途中、霧のような雨が降り始めた。シワシワ、サワサワ‥‥春の優しい雨に煙る谷。すでに里では散り尽くした山桜は、標高の高い五家荘の山では散らずに今、満開だった。

最近、気圧の変化で後頭部が痛むし、気分も落ち込む。気になりだしたら、さらに気になる。僕の脳内の空洞化したドームの頂上から小人がガラスの細い針を落とし続けてキリキリ痛む。そんな時の処方箋が山行なのだ。山の急坂を列をなして登るのは無理だが、そんな道でも自分のペースでゆっくり登ると何とか歩ける。無理なら引き返せばいい。もともと集団での行動は無理なのでこうして賑わう山開きも、1日早い極私的な山開きがちょうどいい。

道のわきでは可憐な「ヒトリシズカ」の群生がある。不思議な形態の花弁だ。どこに花粉があるのか。「ヒトリシズカ」の家族があちこちに満開の花を咲かせている。なんとも可愛らしい家族だが、開花期間は短い。

画像1

途中で、林道の横の谷を見るに小さな滝がある。崩れそうな坂をいったん降り、見上げるに、その滝は高度差はなく横に広く、苔むしている樹々のおくをなだらかに流れ落ちている。地滑りで山肌が崩落し岩盤がむき出しになり滝になったようだ。木をつかみながらよじ登ると、改めて写真に収めたい景色が広がる。ただ足元がゆらゆらするのでロープなどを準備し、きちんと撮影するには、また訪問せねばならない。三脚も必要だ。

視線の奥に初めて見る花が一輪。「延齢草(えんれいそう)」だと、後で山野草の生き字引 Мさんに教えてもらった。葉から茎が伸びずにいきなり花が開く珍しい花だ。

画像2

「延齢草(えんれいそう)」はネットで調べるに花が付くまでに10年かかることから延齢 (長生き) という名がついたとのこと。しかしネットでは、平気で販売されているのは不思議な事だ。漢方薬の原料である意味、毒草の一種。※僕が見たのは「ミヤマエンレイソウ」。

これは縁起が良い。頭の手術でそんなに長生きは出来ないだろうと思い、無理して見つけた「延齢草」を喜ぶべきか、この景色を見るのも残りわずかだと思うと少し寂しいものがある。

道で出会う自然の命に気が付き、何か感じる楽しさに気が付くことが僕にとって楽しい「山歩き」。普通の人の倍の時間をかけて正式な登山口にたどりつき、これからいよいよ山頂へ。( 行く気はない) 雨が激しくなり引き返す。背負ったバックが重くなり足元がぬかるみ、林道がせせらぐ川に変わる。

誰ともすれ違わない山開き。もう少し気温が上がると、雨に濡れるのも、とても楽しくなるのに。ついさっきまで、うるさいくらいにおしゃべりしていた山の小鳥たちも家に帰ったのだな。また来るよ。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?