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くも猫 ふわふわ日記 棚田の田植えに行った

5月に写真を撮りに行った八代市 日光 ( にちこう ) の棚田の田植えの手伝いに行った。撮影時にすれ違ったNさんからラインで参加の誘いの連絡があったのだ。Nさんは広島から移住してきた御年84歳のおじいさん。すれ違いの時の会話はわずか3分程度。どんないきさつでこの地に来られたのか僕には不明で、Nさんも僕の素性は分らない、という関係なのだけど。

集合は朝9時。( ※もちろん本来の田植えは夜明けから日没までだろうけど、今回は田植えのイベントなのだ。) 最初思うに、参加者は数人程度と思っていたが、現地に行くと大賑わい。その数、およそ40人以上。小さな棚田に植えられた苗を大勢の人が囲んでいる。最初はその苗から数株を切り分け、束にしてわらでくくるのだ。そうしてできた苗の束を田植えする予定の田に放り投げ、その束をほどき、縦横に引かれた糸のポイントに田植えチームは苗を植えて行くのだ。全部で大小、7枚程度の田んぼ。一番小さいもので4畳半くらいの大きさ。銭湯の大浴場よりも小さい。あぜ道の幅も狭いし、当然大きな機械は導入は出来ないので、棚田の基本的な作業はすべて人力となる。

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集まったのはほとんど地元の方で、みんな楽しく話しながら田植えの作業が進む。それに地元の写真愛好家が数人。9時に始まり12時過ぎに終わる3時間、笑い声が絶えなかった。僕一人、海から来たよそ者なのだけが。昼はおにぎりに、豚汁、パンに果物。老若男女、田植えの済んだ景色を眺めながらおにぎりを頬張る。

日光は以前、国内の「棚田百選」に選ばれた棚田だが、今はその選にもれた「元棚田」で、石垣に囲まれた田畑には野菜や花が植えられていた。そんな場所に6年ぶりくらいで、田植えが再開されたのだ。

地元の人からすれば、こんなに嬉しいことはなかったのだろう。いくらイベントだとしても、これから、除草、稲刈りの作業が続く。田んぼは「生き返った」のだ。そしてその作業がきっかけで人が集まり、又村は賑わうのだ。

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Nさんは「マレビト」なのかもしれない。どこからか村にふらりと現れて、村に幸いをもたらす山の神「マレビト」。村人は山の神を受け入れ、日光は ふたたび( 大げさに言えば ) 輝いてきた。鏡のような水面に、青い空が映り、心地よい風が吹いてくる。

僕も貧しい海の村から坂を上がってきた「マレビト」なのかもしれないが、うぬぼれたらいけない。「上手い上手い」とおだてられ、田植えマシーン化した体は翌日から棒のように硬直し、激しい筋肉痛。腰にコルセットを巻く日々が続いたのだった。

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