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東中島のユキ子~フシギ以上心霊未満のはなし~【その4 死ぬ前はキレイ】


お盆は亡くなった人たちのことについて思いを馳せる時間。

今回はお盆らしく、ユキ子から聞いた亡くなった人に関する話をします。ユキ子には心霊や幽霊などを見る力はありませんが、目に見えない不思議を感じとれる感性を持っているのです。

死ぬ前はキレイ

ユキ子は言います。死ぬ前の人は、本当にきれいなのよ。全体的に抜けるような透明感を持っていて、フワッとした明るさをもっているのよ。そう感じるのだから仕方が無いじゃない、と。いくつかの死が、ユキ子にその美しさを気づかせたということです。

一つ目の死は、ユキ子の父で私の祖父。癌を患い入院していた父のある日の姿が、なぜかきれいに見えたということです。

二つ目の死は、ユキ子の叔母です。元気で活動的、優しくてお金持ちな叔母さんが、急死した時の話。ユキ子が叔母さんと最後に会ったのは、その死の1週間前でした。こちらにむかって笑顔をむけながらタクシーに乗り込む叔母さんが、輝くように美しく見えました。叔母さんは乗っていたまさにそのタクシーの中で動けなくなり、そのまま意識不明になり逝ってしまったということです。

三つ目の死。それはユキ子の友達の悲しい死です。久々に会った高校時代の友達。会話は覚えていないけれども、その姿が忘れられないといいます。友達は光に透けるかのように溶けて見えた、と。
数日後、友達はその夫によって殺されてしまったのです。新聞にも載るような大きな事件だったということです。

死ぬ前はキレイに見える。

私は、ユキ子は後付けでそう思ってただけじゃないかと思っていました。しかし、そうでは無いことを知りました。ここからは私の話です。

入院していた父を見舞いに行った時のこと。どれだけやつれた顔をしているのだろうと不安に思いながら病室の扉をあけると、父は、華奢で瞳が大きな少年のような姿になっていたのです。肌が白くて透明に輝いているように見えて、それまでの父とはまるで違っていました。とてもきれいに見えたので、嬉しくなりました。一方でユキ子から「死ぬ前はキレイ」という話を聞いていたので不穏な気持ちにもなっていました。まさかとは思っていましたが、そのまさかでした。父は、ほんの10数日後に亡くなったのです。


死相という言葉があります。この言葉からイメージされるのは、一般的には暗く重い表情だと思うのですが、この世には、ユキ子や私が見たような美しく見える死相もあるのだと思います。身近な者に、美しい姿を印象付けてから旅たとうとでもいうのでしょうか。それともこの世界から離れようとしているからきれいに見えるとでもいうのでしょうか。


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