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RTのアルバム「Electric」

リチャード・トンプソン Richard Thompson (RT) のアルバム、良いですよ。1999年に発売された「Mock Tudor」以来の大好きなアルバムです。

その間に、正式なアルバムとしては「The Old Kit Bag」(2003)、「Front Parlour Ballads」(2005)、「Sweet Warrior」(2007)、「Dream Attic」(2010)が出て、それ以外にも自主制作のライブ盤、企画ものコンサート、ヘルツォークの「グリズリーマン」のサントラ、CD数枚のボックスセットが二種類、昔のライブ音源、ライブDVDなどがたくさん発売され、どれも高水準を保っており、失望させられることはなかったけど、あまり新鮮味は感じられず、好きかどうかとたずねらたら、答えに窮してしまいます。

そういえば、あれは良かった。2006年に発売された「1000 Years of Popular Music」で、デブラ・ドブキンのパーカッションと歌、ジュディス・オーウェンの歌とキーボードがバックのDVD。同じコンサートからの音源らしきCDが二枚付属していました。

今度のは、開放感があり、ポップな感じで、聞きやすくて、キャッチーです。歌詞はゆっくり読んでいきます。今月日本盤が発売されて、五十嵐正さんの解説と訳が付いていると思うのだけど、そこまで買う余裕はないです。

RTが在籍していたフェアポート・コンベンション Fairport Convention の2枚目から4枚目「What We Did on Our Holidays」「Unhalfbricking」「Liege and Lief」という傑作が1969年の一年間に発売されているというのが驚きです。若いってスゴい。

フェアポートを脱退したあとの1972年のファーストソロ「Henry the Human Fly」は、まだ歌がうまくないし、他人のバックでサエをみせるエレキギターも控え目だし、その後の青写真のようなラフさもあるけれど、なぜか今でもこれが一番好きです。

リンダ・ピーターズと結婚して、リチャード・アンド・リンダ・トンプソン名義で最初に出したアルバム「I Want to See the Bright Lights Tonight」も傑作でした。民謡っぽいのからヘビーなロックまで多彩で、荒涼としているけれど澄んだ美しさのある「The End of the Rainbow」の最初と最後のギターの音なんか最高でした。まだRTの歌はへたっピーだったけど、フェアポート時代のサンディ・デニー、奥さんだったリンダ、80年代後期のクリスティーン・コリスター、最近のジュディス・オーウェンなど、サポートしたり、してくれたりする女性歌手の選び方が上手な人だなあって、あらためて思います。

リンダとは6枚アルバムを発表して、1982年の「Shoot Out the Lights」で、仕事上のパートナーとしても、実生活でのパートナーとしても終わってしまうのですが、このアルバムは非常に評価の高いアルバムでした。が、最後の「Wall of Death」を除いて、全体的に重苦しくて、私としてはRTのアルバムの中で特に好きというわけではないです。

それ以降も質の高いアルバムを出し続けてきましたが、新鮮味を感じなくなり、パブロックやアシュリー・ハッチングスと浮気したりしてました。ところが浮気相手も90年代までにマンネリ気味になり、そんな1993年に出たのが「Watching the Dark」という編集盤。ベスト盤というより、未発表音源がいっぱい詰まった3枚組でした。1枚70数分収められているのだから、LPに換算すると6枚組。これで、やっぱりRTはすごいなと思い、一生ついていきます!となったのでした。

それから忘れてはならないのがピーター・バラカンさんの存在。1990年代の終わりから2000年代の初めまで、番組でよくかけてもらいました。RTやサンディ・デニーを取りあげてくれるDJってほとんどいなかったし、むこうとしても「フェアポートの2枚目から4枚目があれば、ほかに何もいらない」というリスナーが珍しかったのでしょう。一人でいるのが好きだといっても、やはり誰か後押ししてくれる人がいないと、長続きしません。でも、まあ、私の一番の趣味は映画観賞だし、孤独癖が強いしで、このところ、ご無沙汰しています。

ちなみに、フェアポートの3枚目までのドラマー、マーティン・ランブルはバラカンさんの高校の先輩なので、バラカンさんは初期のフェアポートをじかに体験しているのでしょう。フェアポートはツアーの帰りに交通事故を起こし、ランブルは亡くなってしまいます。4枚目からはデイブ・マタックスに交代しますが、彼もすぐれたドラマーです。

NHK-FMの土曜朝7時すぎから放送しているバラカンさんの「ウィークエンド・サンシャイン」は1999年から10数年続いている長寿番組ですが、4月になると、まだ続くのかどうか心配になります(2年間、聞いていないのに)。自慢じゃないですが(結局、自慢ですが)、1999年の第1週目はバラカンさんが、こんな曲をかけるよという自分の紹介で、第2週目の最初にかかったのは、私がリクエストしたデイブ・エドモンズの「Here Comes the Weekend」でした。「What Was the First Rock 'n' Roll Record?」(最初のロックンロールのレコードは何か)という本を教えてあげて、番組で二週にわたって本で紹介されている全50曲をかけてもらったこともありました。

ところで、RTのアルバムに新鮮な風を吹き込んだバディ・ミラー Buddy Miller って何者なんでしょうか。オハイオ州で1952年に生まれているので、RTよりも3つ年下。1990年ごろRTのバンドに参加していたショーン・コルビンは彼のバンドにいたんですって。ナッシュビルでセッションギタリストやボーカリストを務め、エミルー・ハリスのリードギタリストになったとか。

今度のハーモニーボーカルはジュディス・オーウェンではないです。Siobhan Maher Kennedy という女性で、River City People というリバプールのバンドにいたことのあるイギリスの歌手で、「Immigrant Flower」というアルバムを2002年に発売していて、その中でRTの「I Want to See the Bright Lights Tonight」を歌っています。アリソン・クラウスも一曲参加。

フィドルはスチュアート・ダンカン。ブルーグラスのフィドラー。エミルー・ハリスやショーン・コルビンのバックに参加。彼自身1992年に「Stuart Duncan」というアルバムを出しています。前回は Joel Zifkin、前々回は Sara Watkins がフィドラー。前者が参加したケイト・アンド・アンナ・マクギャリグルのアルバムは持っていましたが、後者がメンバーだった Nickel Creek の「This Side」という可愛いジャケットのアルバムに興味を持ち、買ってみたら、良かったです。

ベースは、このところおなじみのタラス・プロダニュクのほかに、Dennis Crouch という人。ナッシュビルのウェスタン・スウィングのバンド、The Time Jumpers にいた人だそうです。このグループも面白そう。

2013年3月9日

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