令和6年5月18日参議院本会議民法等の一部を改正する法律案(閣法47号)清水貴之議員 賛成討論
日本維新の会の清水貴之です教育無償化を実現する会との統一会派を代表し、民法等の一部を改正する法律案について賛成の立場から討論を行います。
離婚後の共同親権を導入する本民法改正案に対しては、単独親権制度を維持することが望ましいとする立場。そして共同親権も選択肢とすべきとする立場からも、それぞれ不安の声や反対意見が多く寄せられました。そのような様々な意見を受け、衆議院に続き、参議院の法務委員会でも、建設的なそして時には激しい議論が進められてきました。今回の請願は、原則の共同親権までには至らなかった点、共同養育計画の策定の義務化が見送られ実行力に欠ける点などが懸念されるものの、DV被害者の保護について配慮を行いつつ、単独親権しか存在しなかった我が国に、初めて離婚後に共同親権という選択肢を示す一歩前進の法案として評価をしています。しかし、残された課題も多くあります。まず先ほども述べましたが、養育費や親子交流の取り決めを入れ込んだ共同養育計画の策定が義務化されなかった点です。小泉法務大臣は、離婚する父母が、子の養育に関する講座を受講することや、養育に関する事項を取り決めることなどを通じて、子どもの利益を確保、非常に重要と委員会審議で答弁されました。一方、養育計画作成の義務化は、結果的に離婚が困難となり、かえって子の利益に反する結果となる懸念があるため、慎重に検討すべきであるとのこと。離婚前後の父母は様々な葛藤に苛まれるものだと思います。その不安を取り除くための親講座の受講や、両親の離婚に際して、極めて不安定な心理状態となる子どもに対するガイダンスを必須のものとし、取り決め率と履行の割合が大変低い親子交流や養育費のあり方を共同養育計画という形で残すことは、本改正案で明記された父母の責務としての、子の人格の尊重と養育扶養の義務、そして、子の利益のため互いに人格を尊重し、協力し合わなければならないという、非常に重要な規定を担保するために必要なことであると考えます。衆議院での修正協議で附則第17条には、子の監護について必要な事項を定めることの重要性について、啓発活動を実施する旨が規定されましたが、その実施とお皿には、共同養育計画の策定に向けて、政府には全力で取り組んでもらいたいと思います。
DVや虐待は深刻な問題であり、委員会審議でも重ねて議論されました。私が話を聞かせていただいた神戸市でDV被害者を支援するためのシェルターを運営している方からは共同親権の導入によって、被害者がさらに窮地に立たされることになるという悲痛な訴えがなされました。小泉大臣は、改正案はDVや虐待のおそれがある場合は、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないと述べられていますが、DVや虐待は身体的なものだけではなく精神的や経済的なものも含まれ、その証明が非常に困難です。果たして裁判所が適切に判断できるものなのか、一方で、DVや虐待を理由とした単独親権の申し立ては、ときに親権を獲得するための手段として乱用される恐れがあります。いわゆる偽装DVの問題です。小泉大臣もそのような批判があることは承知をしていると、委員会審議の中で述べられています。真にDVや虐待に苦しむ親子保護することはもちろん何よりも優先されるべきですが同時にこの偽装DVによって、本来ならば良好であるはずの親子関係が、長期間断絶されることのないよう、法務省および裁判所には適切に対応していただきたいと思います。国民1人1人が、DVや虐待問題に対する意識を高めることが必要ですし、政府においては、DV被害者支援の現場で活動する団体とも連携し、被害者の生の声に耳を傾けてそのニーズを踏まえた効果的な周知啓発活動を展開することを求めます。
また諸外国から非難が続いているこの連れ去り問題、当然これもDVや虐待から逃れるために、緊急避難的に居場所を変更することは起きるわけで、そういった被害者への支援は大変重要です。しかし例えば2020年にEUでは子どもが片方の親に一方的日本に連れ去られる事例が依然多いことに懸念を表明し、日本政府が子供の保護に関する国際ルールを実行し共同親権に道を開く法改正を求める決議を賛成686、反対1、棄権8で可決されています。小泉大臣からは、父母の一方が何らの理由なく、他方に無断で、子の居所を変更する行為は、個別の事情によっては、本改正案のここに関する父母の人格尊重規定の趣旨に反すると評価される場合があるとの答弁がありました。本改正案が成立した際には、政府として国際的なメッセージを発信することも重要かと考えます。
次に養育費や親子交流の履行に向けての方策が十分ではない点も懸念材料です。養育費について現在実際に受け取っているのは、母子家庭では28.1%、父子家庭では8.7%に過ぎず、取り決めができた家庭も、子がいる離婚家庭の半分にも満たない状況です。同居親が別居親との接触を避けるため養育費を請求しないケースも多くあります。この問題でも、共同養育計画の作成が重要となってきます。今回の改正では、養育費の履行を確保する観点から、法定養育費の創設や、養育費などの債権に一般先取特権を付与することが加えられました。しかし、養育費の履行確保のための家庭裁判所への申し立てなどによる1人親の時間的経済的負担は大変大きいものがあります。参考人質疑で口述された弁護士の熊谷真太郎さんは、このように言われました。養育費の不払いというのは、本来的には、不作為による子どもへの経済的虐待であると。衆議院の付帯決議においては、公的機関による立替払い制度について、国自らによる取り組みのあり方に加えて、民間の支援団体や地方公共団体の支援の取り組みへのあり方について検討を行うことが明記されましたが経済的虐待をなくすためには、不払い者へのペナルティや支払った人へのインセンティブ、また、国による積極的な関与としては、代理強制徴収制度や立替払制度の導入など、検討すべき案は多々あると思いますので、この点も国として積極的に取り組んでもらいたいと思います。親子交流は別居の親と子どもとの繋がりを維持する重要な機会です。令和3年度の厚労省の調査では、親子交流が実施されているのは、母子家庭では30.2%、父子家庭だと48%です。決して高い数字ではありません。日弁連のアンケートでは、裁判所の調停で合意した親子交流が全くできていないという人の割合は44%、半数近くが親子交流の不履行になっています。家裁を通して交流が決定しても、その調停内容や審判に強制力が伴わず罰則もないため、別居親が自分の子どもに会うことが非常に困難な状況が多数発生しています。家裁による履行勧告、間接強制という形式的措置が取られても、実際には面会が必ず金銭要求に置き換わってしまうケースが多々あります。繰り返しになりますが、こうした実態を改善するためにも、共同養育計画は必要だと考えます。最も、DVや虐待に対する懸念から、別居親と会いたくない、もしくは子どもを会わせたくないというケースがあることも、御理解をしますその点への配慮は大変重要です。親子交流について小泉大臣は、法案審議の中で、親の別居離婚を経験した子どもと心理学分野の複数の研究結果においては、DV等がある事案を除いて、親子交流が継続して行われているグループの方が、親子交流が行われた事がない、または親子交流が中断しているグループと比べ、自己肯定感が高く、親子関係が良好であることが指摘されていると述べられました。父母の別居後や離婚後も、適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から大変重要であると考えます。ふさわしい親子交流の実施に向けて政府は引き続き力を注いでいただきたいと思います。
この改正案が成立した場合、法律全体の施行まで2年以内という期間が設けられていますが、新設される理念の条文に関しては、法案成立直後から部分的に施行や運用を開始することが可能なのではないでしょうか?
大臣は、委員会審議において、関係機関や裁判所の準備にどうしても2年は必要だと述べられていますが、子どもの利益を守るためには、できるだけ早期にこの理念を実践に移していくことが重要だと考えます。また我が党の提案として、不測の第19条に、5年を目途としてという見直し規定を入れさせていただきました。しかしこれは5年経たなければ見直せないという事ではなく、子どもの利益の観点から必要だと思われた見直しは、1年目でも2年目でも機動的に行っていくべきだと考えます。
これまで日本では離婚をすれば、子どもにとって親がどちらかになる縁切り文化でしたが、これからは離婚しても親子の縁が切れない縁結び文化となります。日本維新の会と教育無償化を実現する会は、子どもの最善の利益確保のための第一歩となる親権制度の確立を目指し、今後もその目標を実現できるよう活動していくことを申し上げまして、賛成討論といたします。ご清聴ありがとうございました。
サポートは別居や離婚を経験した子どもの支援に活用させていただきます。宜しくお願い致します。