見出し画像

令和4年4月14日 参議院法務委員会 嘉田由紀子さん質疑 “離婚後の単独親権制度が子どもの虐待死と何らかの関連をしているか”

令和4年4月14日参議員法務委員会嘉田由紀子さん質疑を一部文字起こしさせていただきました。

02:14:50~

嘉田由紀子さん

 碧水会の嘉田でございます。本日の裁判所職員定員法一部改正案につきまして質問させていただきたいんですが、一つ前回の取り残しが御座いますので、そこから始めさせていただきます。3月29日に子どもの虐待死の背景について、法務大臣にお伺いしようとした時に、時間が切れてしまいました。少しおさらいをさせていただきますと、近年子どもの虐待死、大体平均50人ほど、親あるいは関係の方に殺されていると、大変悲惨な状況で御座います。そういう中で養育者の世帯の状況を見ますと、実父母が最も多くて15年間で47.4%。次に一人親、4つのパターン、離婚、未婚、死別、別居。そのカテゴリーで27%。この比率がどれほど高いかと言うと、国民生活基本調査で児童の世帯は1,122万世帯、その中で前回一桁間違って報告をしてしまったんですけれども、これは議事録を直させていただきました。一人親世帯は72万となると約6.5%。ですから一人親と言う比率に対して27%、子どもを虐待死させてしまった親と言うのは、かなり社会現象ですから、因果関係は言い難いんですけれども、相関関係としてかなり一人親の方が孤立する、子育ての中で苦しんでいるのじゃないかと言う事を想定出来るわけです。一人親が何故増えるかと言うと、これは民法で離婚後819条、子どもの単独親権と言うところが規定されている訳です。それで前回法務大臣に現行民法の離婚後の単独親権制度が子どもの虐待死と何らかの関連をしていると、お考えかどうか、法務大臣のご認識をお聞かせいただけたら幸いです。

令和4年4月14日参議員議員法務委員会質疑から

古川法務大臣
 前回の委員会で時間が来てしまいまして、途中で終わってしまったわけですけれども、委員の問題意識としてですね、単独親権であるかどうかと言う事が、この悲惨なあるまじき虐待死と言うよう事と、関係性があるのかと言う事で御座いましたと言う風に思っておるんですけれども、明治民法の建付けが御座いまして、それは単独親権であり、それは父権、父親であると言う事の民法の成り立ちからありまして、戦後の民法の中では、それが父権に限ると言う事は無くなったわけでございますけれども、しかし単独で親権と言う事は、そのまま引き継がれた格好になっておると、そういう背景があったと言うご説明も申し上げました。その上でですね、にわかに単独親権であるかないか、それが子の暴力であるとか、虐待とかと言う事に必ずしも繋がっているかと言うと、そのような印象は持たないと言う事を申し上げたと言うふうに思っております。

令和4年4月14日参議員議員法務委員会質疑から

嘉田由紀子さん

 有難うございます。印象は持たないと言う事で御座いますけれども、社会現象として両親が離婚後も経済的・社会的、そして精神的に支えられるような家族生活と、これを完全に切る事が離婚の条件だと言うこの二者択一は、私は大変孤立する子育てを増やしているのではないかと言う事を申し上げておきます。これはあの、因果関係と言われると、私も社会学者ですから、そうは申し上げませんが、相関的な関係があるのではないかと言う事は申し上げておきたいと思います。この事が民法の改正問題と大きく関わっていると言うことを問題提起させていただきます。
 

令和4年4月14日参議員議員法務委員会質疑から

私は離婚後の単独親権制度は子どもの虐待に大きく関係していると考えます。また日本の離婚は協議離婚が大半です(2018年は87.4%)が、これも大きく影響をしていると考えます。
以下は「ステップファミリー  子どもから見た離婚・再婚」からの引用となります。

親権喪失した親と子の関係は大多数が消失
 離婚後に親権を喪失した親と子どもの関係はどうなるのでしょうか。この点に深く関わっているのが、やはり世界的に稀有な日本の「協議離婚」制度です。明治期に民法が成立して以降、日本では離婚の圧倒的多数が協議離婚によるものです。つまり、夫婦が話し合って離婚することに合意できたら離婚届に署名・捺印して市区町村に提出し、受理されることで成立する離婚です。子どもの共同親権者である夫婦の離婚の場合でも、離婚後の(単独)親権者が誰かが記載されていれば離婚届は受理されます。
 協議が調わない場合には、家庭裁判所での調停を経る調停離婚(2018年、9.5%)、それでも合意に至らない場合に裁判を経る裁判離婚(同年、1.0%)などのルートがあります。しかし、裁判所が介入する離婚は少数です。公的機関が一切介入しない、きわめて簡易な協議離婚が大多数を占める点が日本の離婚の大きな特徴なのです。先進国の大多数は、離婚の成立に裁判所が関わる制度になっています。
 明治期に戸籍や民法が制定される前の江戸時代の離婚は、私的な離縁状に基づくもので、子どもをどちらが引き取るかなどを夫婦で協議して離縁状などに書き込んで離婚が成立しました。夫婦の縁が切れれば子どもともう一方の親との縁が切れることも含めて、近代以前の私的な協議による離婚慣行が、現代日本の制度にも綿々と受け継がれてきたことは驚きです。徳川期からのこの伝統が時代遅れではないか、点検しないわけにはいきません。
 日本で圧倒的多数派の協議離婚では、離婚後に親権者と非親権者となる親の二人が、離婚後に父母がどのように子どもの養育や教育の責任を果たすのかについて「協議」しなくても親権者だけを決めれば離婚できてしまいます。その結果として、親権を失った親は子供の監護・教育の責任から完全に離脱できてしまいます。~中略~
 そのような場合、子どもへの責任は親権者である親が一人で担うことになります。婚姻中は50%だった子どもへの責任が100%になり、負担の集中と困難が生じます。厚生労働省「国民生活基礎調査」による2016年の平均年収は、「夫婦と未婚の子のみの世帯」(746.3万円)と比べて「ひとり親と未婚の子のみの世帯」では半分以下(317.3万円)です。経済的な問題だけを見ても、その困難の大きさが想像できます。
 日本では最近まで、離婚する両親には具体的にどのような義務があるかを規定した法律も存在しませんでした。2011年に民法766条の改正が行われ、協議離婚をする両親は面会交流と養育費の分担について、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と初めて法律に明記されました。親権のない親も定期的に子どもと交流し、養育費を支払うことについて父母間で協議をすることが規定されました。
 ただし、この法律の問題は法的強制力がないことです。現行の協議離婚制度では、子どもの利益を優先した協議がされていなくても、またその後協議通りに実行されていなくても、罰則などもなく、法はそれ以上介入しません。離婚届に協議をしたか記入する欄は設けられましたが、記入しなくても受理されます。家族法学者の二宮周平は日本の協議離婚を「無法地帯」と呼んでいます。
 こうした制度状況にある日本では、親権を失った親と子どもの関係が途切れるケースが大半を占めています。厚生労働省が2016年に実施した「全国ひとり親世帯等調査」で親権者となった母親からの回答結果によれば、離婚後に親権を失った父親が子どもとの面会交流、養育費の支払いを継続している割合は、それぞれ30%弱、25%弱にすぎません。大多数の子どもたちは父親からの情緒的・経済的支援のない人生を歩むことになります。
 改正された民法766条施行前の2011年実施の前回調査と比較すると、実施率の増加は、面会交流継続で2%、養育費継続で5%ほどと、微増に止まっています。法改正を受けて、法務省などの政府機関も、離婚後の面会交流と養育費についての協議やその実施を促すための広報(ビデオ、パンフレット、ウェブページ)を展開しています。しかし、その効果は十分とは言えないようです。社会の変化に合わせた法律の改正は、目的を達するための実効性をともなうことが重要です。
 今なお夥しい数の子どもたちが、もう一人の親の支援から切り離された「ひとり家庭」で暮らす現実があります。日本のひとり親世帯が経済的に苦しい状況にあることは既に触れました。内閣府の「平成26年度版 子ども・若者白書」によれば、大人が一人のみ世帯の子どもの貧困率が50,8%ときわめて高くOECD加盟国中で最悪(少ない方から33位)です(因みに、大人が二人以上の世帯では12.7%で24位)。経済的な面だけに限っても、日本の法制度は、深刻な損害を、膨大な数の子どもの人生に与え続けています。

ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚から引用



サポートは別居や離婚を経験した子どもの支援に活用させていただきます。宜しくお願い致します。