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男子3日会わざれば…

男子3日会わざれば刮目してみよ

って慣用句ご存知ですか?

古代中国の魏呉蜀の争いを描いた三国志演義に出てくる故事が元になっている言葉なんですけど
簡単に説明すると

人は短期間で成長する
次に会うときは注意して見なさい

みたいな感じの意味の言葉

今回はそんな慣用句にまつわる話

約半年ぶりに高校時代の友人と遊ぶことになった

そいつはとにかくイカレヤローで
それも人生で数多く出会ってきた人の中でダントツで
頭のネジが何本も飛んでるというか
飛んでったネジの方というか
そもそもネジ穴がついていないというか
とにかくそんなタイプのやつ

彼のぶっ飛びエピソードは語りきれないが

「意味もなく校舎内で生卵を投げ回る」
「昼休みにいきなり火災報知器のボタンを押す」
「廃病院の屋上から奇声をあげながら放尿する」
「夜中の校庭に忍び込んで消化器を撒き散らす」
「始業式なのに黒染めしないで真っ赤な髪で来る」

などなど、ここで書ける範囲のことだけでも
彼のぶっ飛び具合が伝わるはずだ

といっても常にニコニコしていて人当たりも良く
歳の離れた小さい弟の運動会を応援しに行ったり
行動とは裏腹に人の良さとはピカイチなのだ

そんな彼は高校卒業後 基礎屋に就職し今は職人だ

「もう家の前着くから出といて」

そのLINEを見て家から出ると
家の前には務めている会社のものであろう
道具が山積みになったごついトラックが

中に乗り込み事情を聞くと

仕事終わりに急遽別の現場の手直しのために
八王子まで行かなきゃいけなくなった

とのことでせっかくなので同乗させて貰うことに

この歳になったら 遊びたい ってよりは 話したい
になるから場所なんてどこでもいいしね

前を走っている車の真上まで見える目線の高さ
普段自分が乗ってるような一般的な乗用車とは
明らかにパワーが違うエンジンの振動
シートからはタバコの匂いが立ち込め
ティッシュの箱 仕事道具 書類など
そこかしこに物が散らかっている
まさに''職人''って感じの車内

普段働いている美容室と真逆ともいえるこの空間に
不思議な高揚感を覚えた

小1時間ほどトラックを走らせながら
お互いの近況報告や思い出話をしているうちに
気づけば八王子の現場に到着

夜の閑静な住宅街の中にぽつんと
一軒家の基礎であろうコンクリートの型枠が

彼は車のエンジンを止め
「すぐ終わるし待ってていいよ」
と言い残し積荷を下ろすため車外へ

せっかく着いてきたからには、と
友人の仕事ぶりを見るために
自分もトラックを降りる

横を見ると彼はおびただしい数の道具の中から
必要な物だけを慣れた手つきで降ろしていた

前日に降った雨のせいで地面がぬかるんでいて
コンクリートの型枠の中も水浸しだったが
躊躇う様子もなく両手いっぱいに道具を持ち
ずんずんと現場へと足を踏み入れていく彼の背中を
靴が汚れないよう比較的ぬかるみがマシな道を選び
足元を照らしながらおそるおそる彼の背中を追う俺

改めて文章にしてみるとなんとも情けない

そしてそんな俺が現場に足を踏み入れた頃には
彼はテキパキと動き回っていた

それからの彼の仕事ぶりには本当に感銘を受けた

比喩ではない、本当に彼は''変わった''のだ

1駅隣にある高校ですら二日酔いでサボってた彼が
八王子までわざわざトラックを走らせる
それも仕事終わりに急遽言われたにも関わらず

女の子のお尻しか見てなかったあの目で
現場の修正箇所を見つけ出し

On/Ofのみの操作で使える電マを愛用してた彼が
なにやら小難しそうな道具を巧みに使い

校舎内の至る所に生卵を投げていたあの手で
意味もなく非常ベルのボタンを押していたあの手で
コンクリートと水の溶剤をハケを器用に使って塗り
0.0何ミリの傾きを試行錯誤しながら修正していく

そう、0.01mmすら頑なにつけなかったあの彼がだ

気づけば自分も靴の汚れなんて気にならないくらい
悪友の繊細な仕事ぶりに見入ってしまった

その後作業を終えた彼とトラックに乗り込み
近くのラーメン屋でラーメンを食べ
とりとめのない話をしながら帰路に着いた

そうそう、余談だけど彼は今でも断然''生派''だそうだ

「男子3日会わざれば刮目して見よ」

この言葉の通り人はもちろん変わってくけど
根っこの部分はあんま変わんないみたい

まぁこんなことわざもあるくらいだしね

「3つ子の魂100まで」
幼いころの性格は年をとっても変わらないということ




それではまた👋

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