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数学書シリーズ最終巻の最終章でようやく現れたる男、それは…
数学も物理学も、独学といっていい道のりで学んだ身ゆえに、カリキュラムに沿って学んだ方々とは、頭の回りも理解もヘンテコ度が違います。あまり誇らしくもないし、嬉しくもないし、といって卑下する気もわかないし、それもまた我が道です。
量子力学の入門書、それもコンビニに置いてあるようなのではなくて学生向けのちゃんとしたものに、いろいろ手を出してきました。いろいろ唐突に話を切り出してきては「どうしてこんな数式になるかというと…いいからそういうものだと割り切ってくれたまへ」と話が進んでいく割には伏線回収されずに終わるのがパターンなので、またですか師匠と愚痴りたくなること多々でした。
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「あまり細かいことは気にせずある程度慣れてから、もっと専門的な本でより深く時間をかけて勉強すればよいです」「筆者もそのように勉強していました」
![](https://assets.st-note.com/img/1705051243045-k9xFM50xEw.png)
そんなんで納得いくかっ!
ところで十代のとき、以下のシリーズと出会って、全10巻を読み切りました。いえ読み切ったのはもっと後になってからですけどね。
![](https://assets.st-note.com/img/1705051508254-XqAcOBrDYw.png)
この本はどれも最初の章(第一講)は易しくて、次の章からどんどん加速していくので毎巻死ぬる思いでした。
山を登っていて、絶壁を上り切って、もうそろそろ山頂について欲しいと思うとまた同じような絶壁が目の前にあって、それをまた上って、今何合目だろうと思ったところにまた絶壁があって、ひょっとして同じところをぐるぐる回ってるんじゃなかろうかとさえ思ってしまう、あの感覚です。あれを何度も何度も味わいました。
これの最終巻つまり『固有値問題30講』をひいひい言いながらよじ登っていったとき、不思議な感動が終盤でありました。
第29講で、見覚えのある式が出てきたのです。
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PQ-QP=h / 2πⅰ・I
これってハイゼンベルク&ボルン&ヨルダンの三人組が、慣れない行列数学を使ってひねり出した、あの式やおまへんか!
さらに右のページに目を移すと…
![](https://assets.st-note.com/img/1705052517096-mpGrydeE7V.png)
AB-BA=I
こ、これって「ディラックの量子条件」を、さらにシンプルにした式とちがう!?
わかんない方のために説明します。ハイゼンベルク・チームがひねり出した前述の「PQ-QP=h / 2πⅰ・I」式を、後発のディラックが「そんなPとかQとか行列を使わんでも、運動量 p と位置 x を使って…
px-xp=h / 2πⅰ
「…と書けば済むジャン」とスマートに導出して、ハイゼン組をびびらせました。
しかし数学者にいわせれば、これでもまだだっせー式だったようです。もっとエレガントに…
AB-BA=I
にできると。ああちなみにここに出てくるAとBはもはや行列ではありません作用素(operator)といいます。もっと厳密にいうと「非有界作用素」です。「有界」条件ではけっしてこのイコールは成り立たない、「非有界」のときのみ成り立つ、そういう等式です。
この式におけるAとBの候補として、L² の関数空間(ヒルベルト空間と同義)でとある条件を課したものと、微分演算子と同義のものをそれぞれ用意すると、ちゃんと上の等式になってくれます。「なにゆうてんのかわからへん」という方が圧倒多数でしょうが数学の言語でいうとそういう等式です。
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$$
D \widetilde{H} - \widetilde{H} D = I
$$
前衛の物理学者たちが、半分訳がわからないままおのおのの科学哲学に則ってひねり出した等式を、数学者たちは全力で追いかけ、とことん数学言語で囲い込んで、そしてとうとう首輪をかけたのです。この本にはそういう記述はないのですが私は行間を補いながらそんな風に読み取りました。
いったい誰なんだこんな果てしない山登りを成し遂げたのはと思って、最終章に目を移したら、やっぱり…
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つづく、かもしれない
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